会計事務所の収入・年収とは?働き方・経験・資格別で変わる給与事情を詳しく解説
2024/01/25
会計事務所には、税理士の資格保持者はもちろんのこと、科目合格者、簿記資格の取得者、パートやアルバイトの方など、様々な方が働いています。それぞれ経験やスキルによって年収も変わりますが、会計事務所での勤務を検討するなら、目安となる年収は気になるところなのではないでしょうか。
今回は、会計事務所で働く人を年齢別(税理士の場合)、科目合格者別、パートやアルバイト、経験年数、簿記資格(日商簿記1~3級)など、様々な切り口から年収、月収、時給について解説します。
あなたが、どの立場で働きたいのかを考えた上で、気になる会計事務所の年収をチェックしてみましょう。
コンテンツ目次
会計事務所で働く税理士の年収について(年齢別)
会計事務所には、税理士の資格を持つ人、持たない人、税理士の資格取得に向けてチャレンジ中の人、簿記資格を持つ人など、様々な方が勤務しています。ここでは、税理士の資格を持つ方の年齢別年収を紹介します。税理士は国家資格ですので、一般企業に勤めるサラリーマンよりも高い傾向にあります。さらに「経験」を積むことでキャリアアップし、年収が上がるケースもあります。
実務を経験し業務を覚える20代
20代税理士の平均年収は300万円前後と言われています。前半(20~24歳)が248万円くらいで、後半(25~29歳)になると344万円にアップします。前半と後半とで年収が大きく変わるのには理由があります。それは税理士の「科目合格制度」です。
税理士になるには、税理に必要な5つの科目の試験に全て合格しなければならず、20代で全ての科目を合格し、税理士になるのは難易度が高いためです。5科目合格するには数年、中には数十年かかる方もおり、ほとんどの場合、1年目は1~2科目、その後、科目合格数を増やすべく、働きながら勉強と両立している方が多いことが20代前半後半の年収差の理由として挙げられます。
したがって、20代後半の年収アップは、科目合格数が増えたことによる影響が大きいと考えられます。科目合格数による年収の違いについても、この後ご紹介します。
若手でこれからキャリアを積む30代
30代になると、年収は400~500万円程度にアップします。この年代になると、早い方で5科目全てに合格し、正式に税理士として活動する方が現れはじめます。中には、30代の中頃から早々と独立するケースもあります。しかし、ほとんどの方は、30代で税理士としてのキャリアを着々と積みながら年収を上げていきます。
税理士として活躍して実績が出てきた40代
40代では年収がさらに上がり、700~800万円になると言われています。税理士としての実務をひと通り経験し、組織をまとめるマネージャーや役職者になる方も増えてきます。勤務先の規模にもよりますが、大規模な事務所で役職者になれば、年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
また、40代になると、過去のキャリアで培った経験や人脈を活かして独立し、一気に年収を上げるケースもあります。
税理士の年収事情について、更に詳しく知りたい場合は「税理士の年収の現実とは?20代・30代・40代の年齢別や働き方による違いを解説!」の記事をご覧ください。
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会計事務所で働く税理士補助の年収について
税理士補助とは
税理士補助は、税理士が担当する「税務代行」「税務書類の作成」「税務相談」をサポートする仕事です。
税理士補助として働くのは、基本的に税理士の資格を持っていない人で、その中でも(1)将来、税理士を目指して勉強中の人(2)税理士を目指さず、一般のスタッフとして働きたい人とに分かれます。
事務所によっては、税理士補助の職名を「税務アシスタント」あるいは「会計スタッフ」と呼んでいるところもありますが、仕事内容はほぼ同じです。では、税理士補助は、具体的にどのような仕事を担うのでしょうか?
<税理士補助の主な仕事例>
- 領収書のチェック
- 伝票の入力および勘定元帳の作成(会計・税務ソフトを使用)
- 税務上の関連書類のファイリング
- 勤怠管理および給与計算(総務・人事の業務を代行する場合)
- 帳簿の整合性チェック
- 会計および税務上のアドバイス(税務相談にならない範疇)
税理士補助の年収について
税理士補助の収入は、一般企業の事務職と同じくらいになります。未経験なら、月収20~25万円くらいで、経験のある方なら、月収25~30万円程度になります。さらに、税理士試験の「科目合格者」であれば、プラスアルファの待遇が期待されます。
また、税理士補助の仕事内容や年収について、更に詳しく知りたい場合は「会計事務所の税理士補助とは?年収と仕事内容、転職事情を徹底解説!」の記事をご覧ください。
会計事務所で働くパート・バイトの収入ついて
パートやアルバイト勤務での時給は、1,000~1,500円くらいになります。パートやアルバイトが行う業務には、(1)税理士補助(2)税理事務所の総務的な仕事の2通りに分かれます。
税理士補助の業務には、クライアントから預かった資料を基に帳簿を付ける作業で、会計ソフトを使った入力作業などがあります。その他に事務所の総務的な仕事としては、外部からの電話対応、来客対応、備品発注、清掃業務などを行います。
会計事務所で働く派遣社員の年収ついて
会計事務所には、派遣社員としての働き方もあります。パートやアルバイトとの違いは、雇用契約を結ぶ相手が違う点です。パートやアルバイトは勤務先の事務所が雇用主であるのに対し、派遣で契約を結ぶ相手は派遣会社になります。
派遣で働くメリットとしては、時給単価が、パートやアルバイトよりも高時給であることが多い反面、雇用期間が決まっているデメリットもあります。
派遣社員の主な仕事には、事務所内で経理の書類ファイリング、電話対応、事務作業などがあり、クライアントに訪問して直接やり取りすることはあまりありません。派遣社員の時給は、会計事務所の規模によって異なりますが、1,000~2,000円くらいになります。
経験年数別の年収について
会計事務所では、スタッフ採用基準の一つとして「経験の有無」があります。その背景には「税務」という専門的な分野のため、できれば経験があり、即戦力として活躍して欲しいという採用側の考えがあります。したがって、「経験年数」も年収に影響する傾向があります。しかし、勤務する事務所の規模、担当案件の規模、地域などによっても変わってくるため、一概には言えませんが、大よその目安として次のようになります。
<経験別の年収の違い>
- 未経験~1年未満の場合…280~350万円
- 1年以上~3年未満の場合…320~400万円
- 3年以上~5年未満の場合…350~450万円
- 5年以上~10年未満の場合…400~500万円
- 10年以上の場合…450万円以上
科目合格数別の年収について
税理士試験の特徴の一つに「科目合格制度」があります。税理士になるには、税理士になるために必要な「科目」ごとの試験をひとつひとつ合格し、最終的に5科目をクリアしなければなりません。
1回の受験で全ての科目をクリアするのは至難の業で、ほとんどの方は、数年をかけて会計事務所で働きながら、1科目ずつ合格を目指して勉強し、試験に挑んでいます。会計事務所では、正式な税理士ではなくても、科目合格数の多い人材を高く評価する傾向があるため、科目合格数によっても年収が変わってきます。
- 1科目合格…370万円
- 2科目合格…375万円
- 3科目合格…384万円
- 4科目合格…445万円
- 5科目合格(税理士未登録)…514万円
- 税理士登録者…647万円
また、税理士試験お科目合格と年収の関係について、更に詳しく知りたい場合は「年収と税理士試験での科目合格数は関連あるのか?」の記事をご覧ください。
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簿記資格別の年収について
会計事務所では、税理士資格の有無によって年収が変わりますが、もう一つ「簿記資格の有無」によっても変わってきます。簿記資格には、日商簿記、全商簿記、全経簿記の3種類があります。その中でも社会人を対象とした「日商簿記」の評価が高く、簿記レベルも高い順から1級、2級、3級とに分かれています。それぞれの簿記レベルでの年収はいくら位なのでしょうか?
日商簿記1級
日商簿記レベルでも最も高いのが1級です。合格率も10%未満と狭き門ですが、合格すると就職や転職で高い評価が得られます。
1級者の勤務先には、上場企業やその子会社の経理職などがあります。大規模な企業での就職になりますので、年収も2級、3級と比べても高く、国税庁が行った給与調査によると、大企業(資本金10億円以上)で経理職として働いた場合、年収が590万円というデータがあります。
日商簿記2級
日商簿記の2級は、1級の次に高いランクの資格。年収は実務経験の多さによっても変わり、未経験者なら250~350万円ほど、1年以上の経験者なら300~480万円と言われています。1級と比べると年収の面では下がりますが、簿記の基本とも言える3級よりも、経理に関する幅広い知識が身に付いているため、採用する側にとっても「即戦力」として期待されるので、中小企業の経理部、会計事務所、保険会社、銀行などのほか、製造メーカーの経理部への就職も可能です。
日商簿記3級
日商簿記3級は、経理業務の初歩的なレベルにあたります。合格率も50%弱と比較的通りやすく、過去の問題集をしっかり勉強すれば合格する可能性は高いと言えます。3級の主な就職先には、中小企業の経理補助や、大企業の経理補助(派遣社員)などがあります。主に中小企業がメインとなりますが、大企業に派遣社員としてスタートし、経理の実務経験を通じて2級取得にチャレンジし、正社員としてキャリアップを狙う方法もあります。簿記3級の年収としては、正社員として、3年くらいの実務経験があると想定して、300万円~400万円くらいになります。
また、日商簿記1級・2級を取得すると年収が上がるかについて、更に詳しく知りたい場合は「日商簿記1級・2級はすごい資格なのか?年収は取得すると上がるのか解説!」の記事をご覧ください。
会計事務所で給与を上げる方法
資格を取得する
現在、税理士を目指している方なら税理士を目指しましょう。5科目全てに合格するまで、時間がかかるかもしれませんが、科目合格数が増えることで、業務に貢献できる人材として高く評価してもらえる様になりますし、年収にも反映される可能性があります。
また、晴れて税理士として合格すれば、業務経験を積むことで、年収も上がっていきます。「自分には税理士チャレンジはちょっと無理かも…」という方でも、もう一つ「簿記資格」という武器があります。
できれば、社会人対象の日商簿記3級からスタートし、即戦力として期待される2級は目指しましょう。簿記資格を取って年収を上げる方法については、こちらも合わせてご覧ください。
また、就職・転職に役立つ簿記資格について、更に詳しく知りたい場合は「今更聞けない!転職・就職に役立つ簿記資格を知ろう!」の記事をご覧ください。
経験年数を高める
会計事務所で求められるのは「経験」です。会計事務所での働き方は、税理士として、科目合格者として、簿記資格を保有者として、一般のスタッフとして等、様々ありますが、まずは、会計事務所の業務をひと通り経験して覚えることをひとつの目標として働きましょう。
経験年数が上がり、対応できる業務の範囲が広がれば、それぞれの立場なりの収入アップが見込めます。しかしながら、事務所にも規模がありますので、その規模で見込めるキャリアや年収アップにも限りがあるかもしれません。
もし、さらに年収アップを望むなら、これまでのキャリアを活かした「転職」があります。この時にこれまで培った経験年数が役に立ちます。
まとめ
会計事務所には正社員だけではなく、さまざまな働き方の人が勤めています。取得している資格や、これまでの経験や実績によっても給与(年収)は大きく変わることはご理解いただけたかと思います。
現在の給与(年収)に満足されていないという方も、どうすれば給与が上がるのかはご理解いただけたでしょう。今の自分に不足している部分を明確にして、補完することをお勧めします。
もし、ご自身のスキルや資格、経験が正しく評価されていないと感じたなら、転職活動をしてみるといいでしょう。
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