会計事務所もテレワークが減っている?テレワーク疲れとは違う原因とは
新型コロナウイルス感染防止という観点から急激にテレワークが導入されました。
多くの方が通勤時間がかからないことや、リラックスできる環境など新たなワークスタイルとして、このテレワークを喜んで受け入れてきました。
しかし2023年には新型コロナウィルスも5類に移行したことにより、コロナ禍以前の日常に近しい状況になってきました。
以前はリモート疲れによるオフィス回帰なんてキーワードもありましたが、最近はあまり耳にしなくなったのではないでしょうか。
現在はコロナ禍の緊張感は薄れ以前と近しい雰囲気に戻ったと思われますが、会計事務所のテレワークの実施状況は現状どうなっているのでしょうか?
本章ではテレワーク導入が難しいとされていた会計事務所でテレワークは現在も普及しているのかを考察し、会計事務所でのテレワークは浸透するのかを解説します。
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コンテンツ目次
現在のテレワーク実施率
現在、テレワークの実施はどの程度進んでいるのでしょうか。
2023年の全体でのテレワーク実施率は14.6%でした。男性が21.5%、女性が8.3%で男性の方が女性よりもテレワーク実施率が高かったという結果が出ています。
2021年から2023年の3年間の経緯を見ますとテレワーク実施率は2021年には全体で14.5%、2022年は14.1%、2023年は14.6%と横ばいという驚きの結果が出ています。
コロナが5類に分類された2023年もテレワークの実施率が大きくさがっておらず、コロナ禍と同水準でテレワークが継続されていることが伺えます。
また、地域別の実施率でみると他地方とは比較にならないほど差が広がり東京都でのテレワーク実施率は29.8%と3人に1人はテレワークを導入しています。
「テレワーク制度はあるが自身は実施していない」という人はどの地方でも1割程度いました。テレワークが誰でも働きやすい環境ではないということの裏付けになるでしょう。
「勤務先がテレワークを導入していない」のは東京では69.8%で一番低く、四国で82.8%、北海道・東北で82.5%と高い数字になりましたが、どの地方も70〜80%の企業はテレワークを導入していないようです。
このことからも、テレワークを導入していない企業が圧倒的に多い事がわかります。
引用:NTTドコモ‐モバイル社会研究所「テレワーク実施率、3年間で横ばい約15%:東京では約3割がテレワーク実施」
会計事務所のテレワーク実施状況とは?
また2020年に行なわれたアックスコンサルティングの調査によると、テレワークについて、「導入した」「これから導入予定」と回答した会計事務所は約56%でした。
これは上記の正社員のテレワーク実施率の全国平均より、非常に高い数字です。
同じ調査でテレワークの課題として、「職員の自宅にパソコンやネット環境がないこと」、「電話や来客への対応」、「セキュリティが万全ではないこと」、「データ共有やペーパーレス化に対応できていないこと」などが挙がりました。
新型コロナウイルスの感染拡大以前には、リモートワークや在宅勤務などの柔軟な働き方を前提としたシステムの変更に取り組んでいなかったことが、テレワーク導入の課題に繋がっていると言えるでしょう。
しかし、近年ではリモートでも対応できる環境を構築するための様々なツールやクラウドサービスが急増し、安心してテレワークで働くことができるようなインフラが構築されています。電子帳簿保存法などデジタル化、ペーパーレス化が進み、現在では多くの書類がPDFなどのデジタルデータで処理できるようになりました。
それでも会計事務所ではテレワークの導入率は高くはありません。
引用:アックスコンサルティング「士業事務所のテレワーク導入率は36%。全国の士業事務所に緊急アンケートを実施」
働きやすい環境だったはずのテレワーク
新型コロナウイルス感染防止という観点から急激に進んでいったテレワークの導入ですが、テレワークの副産物的に進歩を遂げてきたものがあります。
例えば、電子契約などの電子決済やwebミーティングなどがそれにあたります。また、対面営業はよりもWebミーティングのほうが多くなった傾向は現在も変わりません。
ZoomやTeams、Google MeetなどのWebミーティングツールは誰でも触ったことがあると思いますが、これらのWebミーティングツールの利用はビジネスシーンに大きな変革をもたらしました。
営業するために顧客先へ訪問するの移動時間がかからず、距離に関係なくアプローチすることを可能としました。
他にもテレワークの主なメリットとして、新型コロナウイルス感染防止以外には、下記の項目などが挙げられます。
- 通勤時間が無い
- リラックスできる環境で業務に集中できる
- コスト削減
- 人材の確保
こういったことを背景に、特に、エンジニアにとってテレワークは適した労働環境であると言われています。
また他の職種の方でも、テレワーク導入を喜んでいた方も少なくないとされています。
以前は課題だった、郵便物の受取のために出社が必要だったり、電話番をするためにも出社しなくてはならないという事についても、解消してくれるサービスが台頭しています。
それでも、約70%の企業はリモートワークを導入していなく、約10%はリモートワークを利用しない従業員がいるのです。
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オフィス出社型の働き方がベストなのか?
このようにさまざまなメリットがあるテレワークですが、
企業にととっても従業員にとってもデメリットとしては、以下の点などが挙げられます。
- 勤怠管理が複雑化する
- セキュリティリスクが高まる
- 自己管理は簡単ではない
- 部下のマネジメントや評価がしにくい
2021年7月に行われた日本生産性本部による調査では、日本で最もテレワークが実施されていたとされる2020年5月ころより、最近はテレワーク実施率は減ってきている、という結果が出ています。
同調査で、新型コロナ終息後もテレワークを行ないたいとしている人も一時期より減っているという結果が出ています。
実際に、コロナが5類に移行したあと、通勤電車が混んでいると感じた人も多いのではないでしょうか。
皮肉なことですが、コロナ禍の中でリモートワークを可能にしたツールを作っていたハイテク企業が、完全なフルリモートワークという働き方に納得しているとは言い難いことがブログやインタビューから見て取れます。
ZoomのCEOでさえ、「Zoom疲れを経験している」と、ウォールストリートジャーナル主催のイベントで語ったとされています。
また、アマゾン社はブロク記事で、オフィス中心の働き方をアマゾン社の当たり前に戻すことを計画している、と記載しましたし、実際にコロナ禍が収束したあと、オフィス中心の働き方に戻っています。
オフィスで一緒に働くことで、想像力や協力が加速すると共に、お互いの学びにつながると信じている、と発信したようです。
なぜフルリモートがワークがなくなりつつあるのか?
テレワーク実施率が減少している主な理由の1つのとして、「テレワーク疲れ」がありました。
目新しくプラスの影響の方が大きく感じられたテレワークも、日常化することで、さまざまなデメリットを感じるようになったのだと考えられます。
テレワーク疲れとして、メンタル面だと、食欲が低下する、過食してしまう、眠りにくいなどの症状を感じる人が多いとされています。
身体面だと、眼精疲労、肩こり、腰痛などに悩まされる人が増えていると言われています。
テレワーク疲れが起こる原因とは
ここでテレワーク疲れが起こる原因について、説明しておきます。
テレワーク疲れは、主に下記のことなどが原因で起こっていると考えられます。
- 仕事に集中しすぎる
- 体調が優れない(肩こり・目の疲れなど)
- 精神的に辛い
- 家庭環境が仕事向きではない
- 気持ちの切り替えが難しい
- コミュニケーションが不足している
これらの対策として、例えば、気持ちの切り替えが難しいという問題については、通勤がなくなったことにより空いた時間をすべて睡眠にあてるのではなく、出勤時と同じ時間に起きるようにすることが考えられます。
また自宅で仕事するからと言ってパジャマのまま仕事をしたりせずに、身だしなみを整えることで、仕事に対するスイッチを切り替えることができます。
1日に1回は外に出たり、散歩などの軽い運動をしたりして、意識的に体を動かすことも対策になります。
さらに仕事とプライベートのための物理的区間を区別して、物理的な距離をつくることが大切です。
仕事が終わったらパソコンを目につかない場所に片付けてしまうこともハッキリとした気持ちの切り替えに繋がります。
仕事とプライベートの時間が曖昧になりやすいので、仕事と時間的な距離を空けることも重要です。
仕事をしない時間をハッキリと意識して持つようにしましょう。
コミュニケーションが不足しているという問題については、コミュニケーションツールを活用しましょう。
Webミーティングツールなどにおいて、業務に関するやりとりとは別に、雑談や相談のための部屋を設けてオンラインで話しやすい環境を整えると良いでしょう。
オフィス出社が増えている原因はコロナ疲れではない
コロナ禍の最中には、リモートワークにる閉塞感などから出社したい、すわなち気分を変えたい、誰かと話したいという気持ちなどからコロナ疲れによるオフィス回帰という説もありました。
しかし、現在、オフィス回帰またはオフィス出社型に戻ってきている原因は、生産性の低下がもっと大きな原因ではないかと思います。
テレワークですと、上司や先輩の目が届かないことから、出社時よりも生産性が落ちてしまう人も多く、自己管理するべきシーンが増えてしまいます。
また、企業側も生産性を管理するような仕組みや環境までを準備できていない場合も多く、社員が働いている生産性は成果で評価することになってしまいます。
双方の理由から、オフィス回帰が進んでいることが考えられます。
今後、どのような方向に向かっていくのか?
今後、テレワークの導入が安定していくと、生産性を図るためにも従業員が個々に担当する業務の内容を明確にせざるを得ないといえ、評価基準も仕事に対する姿勢や在社時間ではなく、結果や成果で判断することになるでしょう。
そうすると、平行して進んでいくのは「JOB型」雇用です。
年功序列、終身雇用が終焉を迎えつつあると言われている昨今、世界に習い、成果主義であるJOB型雇用が中心となっていくのではないでしょうか。
テレワークがますます普及すれば、「日本型の労働スタイル」は完全に終わったと言える日が来るかもしれません。
オフィス型が戻ってきているという話をお伝えしましたが、実際にはテレワークは働き方の1つとして定着していると言えます。
確かに、職種によってはフルリモートはなくなりつつありますが、特定の業種や職種ではフルリモートのほうがメリットが大きかったり、どのような職種であっても週1、2回のリモートワークとオフィスワークのハイブリッドワークが一般的になっています。
このことからも、リモートワークはなくなることは考えにくく、オフィスワークを中心としてリモートワークなどの働き方の多様化モ取り入れる方向にシフトしていくことが予想されます。
テレワークという選択は正しかったのか
テレワークは新型コロナの蔓延前はなかなか導入されず、大手企業のごく一部で実施されていた働き方の1つに過ぎませんでした。
導入がなかなか進まなかった理由は明らかで、日本型の労働スタイルに適していないからです。
しかし、新型コロナの影響で状況は一変し、テレワークの導入が急速に進みました。
会計事務所でも税理士法の課題から、テレワークの導入は進まないと言われていましたが、税理士法の解釈が変わり、一般企業と同様にテレワークを導入した事務所も多かったです。
導入が急速に進んだ背景には、企業にも従業員にも明確なメリットが見えていたことです。
ただし導入がどんどんと進んでいっている間はテレワークの良いところを中心に見ていたものの、新型コロナウイルスが終息せずにいまだに猛威を奮っている状況下において、決して短くない2年間でした。
この2年間で多くの企業は最近になってテレワークのさまざまな課題や問題が浮き彫りになってきたと言えます。
また、日本型の労働スタイルが当たり前のものとして継続している中小企業や一部の地方企業では、やはりテレワークは導入されていないという結果が出ています。
今後日本もJOB型雇用にシフトしていくことは確実であると言える状況であるものの、中小企業や地方企業でもそれを受け入れられるだけの環境が準備できるでしょうか。
日本型の労働スタイルが染み付いている従業員の考え方を大きく変えることはできるでしょうか。
メリットの決して少なくないテレワークという働き方が開いたものは、従業員同士のディスタンスだけではなく、日本の働き方を根本から変えるパンドラの箱だったのかもしれません。
パンドラの箱が開いた今、オフィス回帰という状況に戻ってきていますが、コロナ禍以前に戻ることはないでしょう。
オフィス勤務中心とした中で、リモートワークを上手に取り入れて生産性も下げない工夫をすることが求めれているのです。
現在でも、転職を考えている求職者にとって、リモートワークを導入しているのは大きな魅力として感じているからです。実際にリモートワークを希望する人も多いのです。
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