会計監査は何の目的で行われる?監査内容や準備すべきことを解説!
2023/10/27
会計監査とは、企業が作成した財務諸表が適切かどうか、会社の内部とは関係のない第三者が公平に監査することですが、そもそも何の目的で行うのでしょうか?また、監査を受ける必要があるのはどのような企業や団体なのでしょう。
この記事では、
・会計監査はどのような目的で誰が何をチェックするのか?
・会計監査を受ける側にとって注意すべきことは何か?
について解説します。会計監査を受ける際、特に監査対応に任命された方は、ぜひご一読ください。
コンテンツ目次
会計監査とは
会計監査の目的
会計監査とは、企業や行政機関が作成した財務諸表の記載が適切かどうかを、会社の内部とは関係のない第三者がチェックすることを意味します。特に上場企業の場合、投資家に対して、現在の経営状況を数値化した「財務情報」を公開することが法令で義務付けられています。しかし、企業で作成した情報が正確かどうかを自ら証明することはできません。企業側の都合によって意図的に数字を操作する可能性も否定できないからです。そこで、数字の正当性を証明するために、独立した第三者に依頼します。
会計監査は誰が行う?
会計監査は、財務諸表のチェックを主たる業務とする「公認会計士」が担当します。公認会計士は財務諸表の監査に加えて、財務諸表が正しいプロセスで作成されているかどうか、社内体制をくまなくチェックする「内部統制監査」も行います。監査結果は、「監査報告書」として企業へ提出され、財務情報の正当性が認められれば、投資家は安心して投資活動を行うことができます。
会計監査で具体的にチェックする内容
会計監査ではどのようなことをチェックされるのでしょうか?具体的な内容を紹介します。
●貸借対照表・損益計算書
企業の財政状態を示す「貸借対照表」や損益計算書に計上されている金額と、総勘定元帳残高(すべての取引を勘定科目ごとに記録した帳簿)が一致しているかどうかをチェックします。
●売掛金・買掛金の残高
取引先からの残高証明書と照合し、売掛金・買掛金の残高が正確かどうかをチェックします。
●伝票の確認
取引記録にもとに伝票が正しいプロセスで発行されているかをチェックします。
●引当金などの確認
貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金の計上に問題がないかどうかをチェックします。
●経理処理の状態の確認
経理担当者の知識がどれほどあるか、取引が正しく帳簿に記録されているかなどをチェックします。
その他にも、金融機関から入手した残高証明書と照らし合わせた、預金や借入金の残高チェックや、勘定科目の内容に不明なものはないかの調査など、企業の会計状況が正当であるかどうかを厳しくチェックします。
監査業務の内容について、より詳しく調べたい方はこちらも合わせてご一読ください。
会計監査はいつからはじまる?
会計監査が義務付けられる企業は、株主総会で投資家に対して、財務報告をしなければなりません。投資家は報告を受けた上で投資を続けるかどうかを判断します。そのため、株主総会までには会計監査を終わらせる必要があります。あらゆる会社との取引状況がチェックされるので、当然のことながら膨大な時間がかかります。従って、株主総会が開催される1年前から会計監査の手続きがはじまります。
もし、株主総会までに財務報告ができない場合は、上場廃止になるケースもあります。また、監査が義務付けられているのに会計監査人を置かないと、取締役などに100万円以下の過料が課されます。このように法に反すると社会的な信用が失われ、業績にも大きなダメージを受けることになります。従って、監査が義務付けられる企業は、早いうちから入念に準備を進めなければなりません。ちなみに、会計監査が義務付けられる企業は、会社法という国の法律によって、以下のように定められています。
<会計監査が義務付けられる企業>
(1)大会社
最終事業年度にかかわる貸借対照表の資本金が5億円以上、または最終事業年度にかかわる貸借対照表の負債の部の合計額が200億円以上である株式会社を指します。(会計法第三百二十八条1項・2項)
(2)監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人より監査が義務付けられており、会計監査人による監査の取り扱いは大会社と同じ取り扱いになります。(会社法第三百二十七条5項)
(3)会計監査人の任意設置を行った会社
会計監査人を置くことを定款に定めた会社を指します。(会社法第三百二十六条2項)
会計監査業務の全体の流れ
予備調査
公認会計士が所属する監査法人へ監査の依頼が来たら、企業がきちんと監査に協力してくれるかどうかを見極めます。これは「予備調査」と言われるもので、監査に対応できる体制が整っているかを調べ、もし対応できる体制ができていないなら、企業はその構築から始めなければなりません。
監査計画の立案
監査への協力体制ができている場合、予備調査の結果に基づいて監査計画を立てます。大企業であるほど、外部との取引も多く、取引実績の全てをチェックするのが難しいため、重点的に見るべき項目を絞り込んで監査します。重点的に監査するところを「リスク」と呼び、リスクに焦点を当てることで、より効率的な監査計画が立てられます。
監査手続きの開始
監査計画に基づいてより具体的な監査の手続きを行います。監査はチェックする内容も膨大なため、一人ではなく複数人のチームで行われることもあります。大規模な企業の場合は、数百人にも及ぶこともあります。勘定科目ごとに担当者が割り振られ、監査が開始されます。その内容一つ一つが「監査証拠」として集められ、監査意見を述べるための判断材料として使われます。
監査意見の形成
監査証拠を集めたら、その情報を元に「監査意見」を形成します。監査した内容が企業会計の基準に準拠しているかどうか、不適切な部分はなかったかを判断し、最終的に提出する「監査報告書」にどのような意見を記載するかを考えます。
審査
監査の現場チームから出た結論は、現場を担当していない第三者の公認会計士が確認します。公認会計士も人間ですので、チェック漏れなどのヒューマンエラーが発生する可能性もあります。そこで、全く関わりのない公認会計士がチェックすることで人的ミスを防止します。これを「審査」と呼んでいます。上場企業を監査する場合は、日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度に基づき、必ず第三者による「審査」を実施することを義務付けています。
監査報告書の提出
全ての監査手続きに基づき、十分な監査証拠が得られたと判断したら、「監査報告書」で意見の表明を行います。企業の財務情報が適切であると認められれば、「無限定訂正意見(全ての重要な点において適正に表示している)」として表明され、一部問題はあるものの、おおよそ適正であると判断された場合は、「限定付適正意見(一部不適切ではあるが虚偽の表示ではない)」と表明されます。監査報告書に意見を表明できるほどの監査証拠が得られない場合は、監査報告書で意見を表明しないケースもあります。
会計監査を受ける企業側が知っておくべきこと
次に、会計監査を受ける上で知っておくべきことについて紹介します。
会計監査で準備すべき書類
会計監査を始めるにあたって、公認会計士よりヒアリングが行われることがあります。ヒアリングでは会計に関わる資料の提出も求められますので、資料の準備とヒアリングに対応する社員の手配を行いましょう。ヒアリングで準備すべき資料には、次のようなものがあります。
・総勘定元帳データ
・請求書
・領収書
・小口伝票
・各種契約書(賃貸契約書/ローン契約書など)
・銀行ステートメント
・棚卸表(在庫を抱える場合)
・固定資産台帳(固定資産がある場合)
ちなみに、会計監査を受ける際には、簿記知識も持っていると役に立つでしょう。簿記に関するこちらの記事も合わせてご一読ください。
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会計監査を受ける際の注意点
・会計監査に必要な書類を準備し内容を理解する
上記で紹介した準備物に不足があった場合、追加で監査作業が発生する場合があります。当然、支払う監査料も増えますので、書類に不備がないようにしっかり準備しましょう。また、ヒアリングでは書類の記載内容について質問されることがあります。質問に対して即答できるほど熟知しているかどうかが見られます。どんな質問が来てもスムーズに回答できるように、書類の内容は徹底的に理解しておきましょう。
・公認会計士が何をチェックしたいのかも把握する
財務諸表の記載に問題がないかを見るのが会計監査です。財務諸表の全体を確認しますが、特に細かいチェックが入りそうなところは事前に把握しておきましょう。特に以下の項目は要チェックです。
<会計監査で細かいチェックが入りそうな項目>
・貸借対照表、損益計算書の内容
・売掛金、買掛金の残高
・現金、預金、借入金の残高
・経理処理状態(担当経理者の経理知識)
・内部統制の整備状況
・伝票の承認ルート
・勘定科目
・引当金
・固定資産の計上、除却処理について
・実地棚卸について(在庫管理のプロセスや帳簿上の在庫数と実際の在庫数が合っているか)など
今回は会計監査の内容と準備すべきことについて紹介しました。特に監査を受ける企業にとっては、投資家に対して自社の財務状況を報告しなければなりません。会計監査で公平に検証してもらうことで、企業の社会的な信用も保たれます。会計監査の際には、事前準備をしっかり整えて受けましょう。
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