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会計事務所、税理士事務所は働き方改革で変わったのか?

2023/11/01

2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」を契機に、多くの企業や組織で時間外労働の是正などの取組みが盛んになりました。さらに、新型コロナウイルスの感染対策で「テレワーク」「リモート」「オンライン」などの言葉が定着し、ひとつの働き方として成立しています。テレワークや在宅専門の求人サイトを目にするようにもなりました。

多様な働き方を求める声と、それを実現する組織側の風潮が広がる中、会計事務所や税理士事務所での働き方は変わったのでしょうか?

繁忙期は残業でカバーするのが当たり前?


会計事務所・税理士事務所の働き方で思い浮かぶイメージは、繁忙期にはプライベートを犠牲にして残業で乗り越える姿ではないでしょうか。特に小規模の事務所ほど顕著で、常態化している姿だという点は否定される方も少ないと思います。
会計事務所の業務は多くが担当制で、外回りや資料作成など多様で細かな業務が多く、「ワークライフバランス」の「ライフ」の大部分を犠牲にする点は課題となっていました。税理士資格取得を目指して働きながら勉強するスタッフは実務に追われ、試験勉強の時間確保が困難という問題を併発させています。
昔ながらのこのイメージは「働き方改革」で一掃できるのでしょうか。

「働き方改革」実現へのハードル

いくら事務所勤めの個人が、残業が多いから「働き方を変えたい」「働き方改革をしてほしい」と願っても、事務所の方針や体制に左右されます。実際に「働き方改革」が進みにくい事務所の特徴をご紹介します。どれも自分一人ではどうしようもない、環境面の要素が多くあるようです。

【こんな事務所は働き方改革が難しい?!】

・トップの「働き方改革」への理解、実践する姿勢がない
・業務のシステム化への職場全体の抵抗感が強い
・アナログタイプの顧客やシステム化のニーズが少ない業種が顧客のメインになっている
・明らかな人手不足(業務に追われ、改革の余裕がない)

働き方改革を実現する会計事務所・税理士事務所はここが違う!

会計事務所や税理士事務所は残業が多くなりやすい、と述べてきましたが、残業を押さえて「働き方改革」を実現している会計事務所や税理士事務所もあります。そういった職場には、次のような特徴があります。

・「生産性」への意識が高い
一人で担当の全工程を対応するのではなく、(1)事務所内全体の業務量や工数を把握し、(2)かつ顧問先・契約先別でかかる工数(残業時間含む)や時間当たりの単価を認識し、(3)役割分担制・チーム制で対応、(4)業務経験によって担当案件を調整する、など、全体のバランスを取る意識が強い職場は、働き方の改善が進んでいます。

・紙ベース、ハンコ文化からの脱却
上記の生産性や効率の精神が強くあればあるほど、電子申請やITシステムの導入などに取り組みICT化を進めています。公的手続きも電子申請・オンラインできるものが今後どんどん普及されるでしょう。ただし、新型コロナウイルスへの対応策として「テレワーク」の導入に遅れを取った企業の多くが、紙ベースの業務やハンコ文化を理由に挙げています。これらの文化・風潮からいかに脱却できるか、がポイントです。

・顧問先・契約先の業種や理解
先述のようにいくら事務所側が電子化を進めたとしても、顧問先・契約先がそれに対応してもらえないと効果が薄いケースもあります。顧問先の理解や、変化への抵抗感が少ない業種・若い経営者が多いほど取り組みは効果を出しやすいでしょう。

また、ご紹介したこれらのポイントにはシステム整備に強く顧客へのレクチャーも含めて対応できる事務所内の人材や、提携先との連携などの体制整備が欠かせません。

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どんな改善方法があるのか?


それでは具体的な改革方法や施策にはどんなものがあるのでしょうか。ここでは「働き方改革」の施策を、働き方の質・量・形態の3つの視点で見ていきます。

【施策例1 業務の質を変える】

・タスク管理を強化し、意識改善
優先度の高い、期限の近いものをアラート通知するシステムの導入
・スケジュールや時間管理の徹底
案件別の工数管理の可能なスケジュール・勤怠管理のシステム導入
残業宣言を可視化(残業時にプレート表示、グループウェアに公表 など)
・チームでのリアルタイムで円滑な情報共有
外出先でも閲覧可能なグループウェアで業務進捗や資料の共有

生産性への意識が高い職場は効率的に業務をこなす意識も高く、特にチーム体制にした場合に必要なさまざまな情報の共有のためのツール活用が見られ、目的別で選定しているケースが多いようです。

【施策例2 業務量を減らす】

・顧客情報管理の効率化
情報を全体で管理、共有可能なツールの導入(更新の重複作業を低減)
・単純作業をシステムで自動化
手入力作業や電卓での集計作業をAI(RPAなど)やソフトを活用して自動化
・会計ソフトのクラウド化、電子申請・電子帳簿の導入
顧客のニーズに合わせてクラウド会計ソフトの導入や電子申請・電子帳簿を推進することで、紙媒体を低減するなどの効率化

システム化の他に業務負荷を軽くする手段として、仕訳入力のような簡易の作業をパートなどに任せて高度な業務だけを税理士に寄せ、業務を分担してしまう方法があります。
また、クラウド型のソフト導入では準備に時間を要する可能性がありますが、ITリテラシーや業務改善への意欲・ノウハウの不足した顧客に対して導入支援することで、新たなサービスの提供や協同での効率化というメリットもあります。顧客の改善は時間・労力やコストとのバランスを検討する必要はありますが、長期的に見るとメリットが多くなります。

【施策例3 働き方の形態を変える】

・税務に「テレワーク」の導入は可能か
いわゆる「テレワーク(在宅勤務)」は、元来、税理士法上の観点から、税理士や税理士事務所職員には難しいとされてきました。(税理士法第38条[秘密を守る義務]、同54条[税理士の使用人等の秘密を守る主義]、同40条第3項[二か所事務所の設置の問題]など)
ただ、以前からテレワークに関する議論はあり、2020年4月には新型コロナ感染対策とそのための外出自粛の要請から、日本税理士会連合会が緊急対応として「税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)~新型コロナウイルス感染症防止対応版~」を公表しています。今後は税理士法の改正に向けて検討が進む見込みですので、その行方に注目していく必要があります。

業界全体で働き方が変わるのはこれから

実際のところ、会計業界の働き方は変わったのでしょうか。
先に述べたように、「働き方改革」の流れを受けてICT化を進めるなどの施策を実践し、残業が平時は多少の残業が出る程度に改善した事務所や、残業低減の努力をしている事務所が多くあります。その一方で業務負荷を理由に退職するケースはまだまだ多く、業界全体が完全に変わったとまではいかないのが現状のようです。

働き方改革にはトップの方針や職場全体での取り組みが重要なポイントになります。ご自身の勤める事務所の働き方がどうしても変えられそうにないのなら、自分の価値観に近い働き方ができる職場への転職を検討するのもひとつの選択肢でしょう。

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会計求人プラスシ転職エージェントKU
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