FASS検定とは?概要や取り組むメリットなどについて解説
2023/10/30
経理や財務に関わる業務に携わる方であれば、経済の動向や会社の財務状況を把握しておくことが大切です。
その上で欠かせないのが経理関連の知識や日商簿記などの会計関連の資格であり、経理・財務関連の知識を測るバロメーターとなっています。
特に、2005年に登場した経理・財務スキル検定(FASS)は、比較的新しい資格でありながら企業からの評価が高い検定試験です。経理・財務に関する実務知識を客観的な角度で評価するのに優れていて、信頼性の高い検定として各企業から注目されています。
本記事では、これからFASS検定を取得してスキルアップをしたいと考えている方に向けて、FASS検定の概要や資格のメリット・デメリット、ランクごとの内容などについて解説します。
また、FASS検定を受ける流れや最高ランクのレベルAを獲得するための勉強法、さらにFASS検定に合格する以外の方法でできるキャリアアップや年収アップについてもご紹介します。
コンテンツ目次
FASS検定とは
FASS検定は、経済産業省の委託を受けた日本CFO協会が開発し、2005年度から実施している検定試験です。「経理・財務サービス・スキルスタンダード普及促進モデル事業」の一環で、経理や財務部門の実務面において必要なスキルがどの程度あるかを測ります。
経理の資格といえば日商簿記が浸透していますが、日商簿記は帳簿会計に特化しているのが特徴です。一方、FASS検定では資産・決算・税務・資金の4分野から出題され、より実務に則した内容となっています。
FASS検定は、上期(5/1〜7/31)と下期(11/1〜1/31)の年2回開催されており、試験期間中であればいつでも受験できるCBT方式が採用されています。ただし、同一受験期間内においては一度しか受験ができず、万が一違反した場合は結果がよくても無効となるので注意が必要です。
受験は各都道府県に設けられた試験センターにてパソコンを使用して行います。また、会社や団体単位で申し込むと、インターネット上で試験を受けることも可能です。
2022年9月末の段階で73,990人が受験しており、経理や財務のスペシャリストとしてのスキルを測定できる信頼性の高い資格として、転職や就職、キャリアアップにも有効です。
FASS検定を活かせる業種
前述のとおり、FASS検定は、経理や財務に必要な知識・スキルに特化した資格です。簿記とは異なり総合的な実務レベルを測れるため、経理や財務のスペシャリストとして活躍している人に向いています。
FASS検定はスコア制で評価されるのが特徴です。ハイスコアを獲得すれば、経理や財務分野における業務全般を理解しているとみなされ、上場企業や大企業の課長職以上として評価される可能性があります。近年は、中小企業でもFASS検定に注目し始めており、この先導入する企業が増えるでしょう。
また、FASS検定では事業全体の流れを把握できるため、経理や財務に限らず営業職や管理職でも重宝される資格です。
FASS検定の概要
FASS検定で高スコアを獲得すると、経理や財務、営業、管理職など幅広く活用できます。今後、ますます注目される可能性があるため、これから受験を考えている人も多いでしょう。スムーズに試験を受けるためには、概要をしっかりと把握することが大切です。続いては、FASS検定の概要について詳しく解説します。
FASS検定の評価方法
FASS検定は受験後に合否が出されるのではなく、スコア制でスキルの度合いが評価されます。そのため、自分がどの程度のスキルを身につけているのかを判断する際にも役立つ資格です。将来的に経営者もしくは幹部を目指す受験者が、実力を測るのに見合った内容になっています。評価はA〜Eの5段階に分かれており、評価区分は以下のとおりです。
レベル | スコア | 評価 |
---|---|---|
A | 689点〜 | 経理や財務の分野に関して、正確に業務内容を理解しており、自信を持って業務を遂行できるレベル。 |
B | 641〜688点 | 経理や財務の分野に関して、業務内容をほぼ理解しており、問題なく業務を遂行できるレベル。分野により、知識やスキルに個人差があるが、業務の妨げにはならない。 |
C | 561〜640点 | 経理や財務の分野について、日常業務に関する必要なスキルがあり、通常の業務であれば問題なく遂行できるレベル。ただし、未経験の分野に関しては、対応力に差が見られる。 |
D | 441〜560点 | 経理や財務について、分野ごとに正確性に差が見られるが、サポートを受けながらであれば最低限の業務をこなせるレベル。 |
E | 〜440点 | 経理や財務について、一部分しか理解できていないため、今後の努力が期待されるレベル。 |
FASS検定の出題範囲
FASS検定では、経理や財務に必要な知識やスキルを問われます。出題範囲は、資産・決算・税務・資金の4分野で、四肢択一式で出題されるのが特徴です。各分野の出題範囲について押さえておきましょう。
分野 | 内容 |
---|---|
資産 | 売掛債権管理・買掛債務管理・在庫管理・固定資産管理・ソフトウェア管理 |
決算 | 月次業績管理・単体決算業務・連結決算業務・外部開示業務 |
税務 | 税効果計算業務・消費税申告業務・法人税申告業務・連結納税申告業務・税務調査対応 |
資金 | 現金出納管理・手形管理・有価証券管理・債務保証管理・貸付金管理・借入金管理・社債管理・デリバティブ取引管理・外貨建取引管理・資金管理 |
FASS試験の申込方法と費用
FASS検定は、二期制受験を導入しており、上期と下期に試験が実施されます。それぞれの試験実施期間は以下のとおりです。
- 上期:5/1〜7/31
- 下期:11/1〜1/31
FASS検定の申し込みはインターネットのみで受け付けており、上期・下期それぞれの予約受付期間は以下のとおりです。
- 上期:2/1〜7/28
- 下期:8/1〜1/28
いずれも、申込日から3日目以降より受験の予約が可能となります。試験は、全国に設けられたテストセンターにて行われ、すべてコンピューターによる受験です。受験料は、一般と日本CFO協会法人会員とで異なります。それぞれの受験料は以下のとおりです。
- 一般:11,000円
- 日本CFO協会法人会員:8,800円
日本CFO協会法人会員の場合は、団体割引が設けられているため、事前に確認しておくと良いでしょう。また、受験料にはオプション科目が含まれています。オプション科目とは、出題範囲である4分野に解答した後に、任意で解答できる科目です。オプション科目を受験しない場合でも、料金は変わりません。
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FASS検定のメリットとデメリット
FASS検定は、経理や財務分野において効果を発揮する資格ですが、メリットばかりではありません。効果的にFASS検定を仕事に活かすためには、デメリットを押さえておくことも大切です。続いては、FASS検定のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
FASS検定のメリット
FASS検定でハイスコアを獲得すると、経理や財務に関して網羅的かつ正確な知識があることの証明となります。日商簿記を取得している人が多い中で、FASS検定は目を引く資格であり、転職や就職において大いに役立つでしょう。企業によっては、社員に対してFASS検定の受験を推奨しているケースもあるため、事前に受験しておくとスキルアップやキャリアアップのために役立ちます。
また、FASS検定のスコアは、企業における役職や年収にも影響しているといわれています。ハイスコアを持っている人ほど、昇進できる可能性が高く、年収アップにも繋がるでしょう。
一方で、長らく経理や財務業務を担当してきたけれど、FASS検定によって苦手分野が判明することも少なくありません。逆手に取れば、足りなかった知識を補填する際に役立ち、より業務に貢献できるようになります。
FASS検定のデメリット
近年、注目を集めているFASS検定ですが、広く認知されている日商簿記と比べると、まだ知られていない点がデメリットといえます。FASS検定は、経理や財務業務関連の職種であればある程度の知名度がありますが、その他の職種に転職する際はあまり役立たない可能性が高いでしょう。
また、すでに日商簿記を持っている場合は、それほど必要性を感じない人も少なくありません。
しかし、FASS検定は日商簿記よりも実務に沿った内容です。企業側から見れば、より業務に対して高いポテンシャルを発揮する人材を求める傾向にあります。そのため、今後FASS検定を導入する企業は増えると予想され、今からでもFASS検定を受験しておくと、将来的に役立つことも考えられるでしょう。
FASS検定を取得するための勉強方法
FASS検定でハイスコアを獲得するためには、出題傾向を把握したうえで学習を深めることが大切です。続いては、FASS検定取得に向けた勉強方法について詳しく解説します。
公式の学習ガイドを使って勉強する
FASS検定の基本的な勉強方法として、FASS検定を主催する日本CFO協会発行の「経理・財務スキル検定公式学習ガイド」の利用が挙げられます。実際、FASS検定で出題される内容は、その半分以上が学習ガイドから出題される傾向にあり、しっかりと押さえておきたいテキストといえます。申し込みの際に購入できるため、受験者は手に入れておくと安心でしょう。
学習ガイドでは問題と選択肢、回答と解説が見開きで掲載されており、一目で学べるのが魅力です。すでに、経理や財務業務を担っている人やある程度の知識を有している人であれば、学習ガイドを活用するだけでも効果的に学習できます。学習ガイドは毎年発行されるため、勉強する際は最新のものを手に入れるようにしましょう。
問題集を活用する
経理や財務未経験者や公式の学習ガイドだけでは不安を感じる場合は、市販のテキストや問題集を活用するのも1つの方法です。FASS検定関連のテキストは各社からリリースされていますが、そのほとんどが公式の学習ガイドに沿った内容になっています。そのため、学習ガイドと兼用して使えば、より深く知識を得られるでしょう。また、市販の問題集は応用問題が多く掲載されているため、ハイスコアを狙っている人にもおすすめです。
ただし、基礎が不安定な状態で市販のテキストや問題集に取り組むと、効率的に勉強ができません。まずは、公式の学習ガイドを利用して、基礎をしっかりと固めてから応用問題に取り組むようにしましょう。
eラーニング教材を活用する
FASS検定を主催する日本CFO協会では、「CFOスクール」というeラーニングを提供しています。CFOスクールでは場所や時間を選ばず、無期限で経理や財務分野の学習をすることが可能です。1コース1,650円から受けられるため、目的に合うコースを選びましょう。
人気講師による分かりやすい解説で、疑問点があれば何度でも確認することが可能です。1テーマ10〜15分程度の短時間で終了するため、通勤中や自宅でのちょっとした時間に活用しやすいでしょう。苦手な分野を集中して勉強したい場合や、より深く勉強したい人におすすめです。
FASS検定と日商簿記試験の違い
前述のとおり、経理や財務に関連する資格として有名なのは、日商簿記試験でしょう。日商簿記は、その名のとおり簿記スキルが問われる検定です。しかし、経理や財務では簿記以外のスキルも関わってきます。FASS検定は、こうした経理や財務に必要な知識をトータル的に網羅した検定です。そのため、日商簿記の試験範囲ではない、税務や資金などの分野も学ぶ必要があります。
また、認定方式もFASS検定と日商簿記の異なるポイントです。日商簿記は、級別認定を採用しており、受験者は自分のスキルと照合したうえで、見合った階級を受験します。受験した結果の判定は、合否で行われるのが特徴です。一方、FASS検定はスコアを獲得する方式で、獲得したスコアによってレベルに振り分けられます。スコアごとに現状のスキルや知識を判定する仕組みであり、合否判定は行いません。
経理に役立つ資格について、更に詳しく知りたい場合は「経理に役立つ10の資格!転職・キャリア・年収アップのための資格を厳選」をご覧ください。
また、会計事務所の就職・転職に役立つ資格について、更に詳しく知りたい場合は「会計事務所への就職・転職に有利になる役立つ資格とは?」をご覧ください。
FASS検定を転職へうまく活かす方法
転職時にFASS検定を効果的に活用するのであれば、やはり日商簿記もあわせて取得しておくことをおすすめします。日商簿記は単純に知名度が高いだけでなく、経理や財務において大切なスキルです。簿記ができなければ、経理や財務業務はままならないでしょう。とはいえ、経理や財務業務は、簿記のスキルだけあってもまかなえません。FASS検定によってトータル的な知識を得ておくと、実務に大変役立ちます。
また、FASS検定は、日商簿記と比べて保持者が少ないのが現状です。そのため、転職時に、FASS検定でハイスコアを獲得しておくと、ライバルに差を付けられます。特に、大企業ではFASS検定の知名度も上がっているため、日商簿記とあわせて取得しうまく活用すると良いでしょう。
FASS検定は、経理や財務に関する全般的な知識やスキルを測る検定です。ハイスコアを獲得すると、実務をスムーズにこなすうえで十分なレベルがあることが証明されます。そのため、転職や就職時に有利に働く他、キャリアアップを図るうえでも非常に役立つでしょう。
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- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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