働きやすいホワイトな税理士事務所の見極め方とは
2023/11/01
税理士業界は「残業が多い」と言われることがあります。では業界全体が世にいうブラック企業なのでしょうか?決してそのようなことはありませんのでご安心ください。確かに残業が多く発生する時期もありますが、しかし一年中多忙というわけではありません。年間を通してで繁忙期と閑散期があり、そのサイクルを繰り返しています。閑散期ではまとまった休みをとることを推奨している事務所もあります。繁忙期であっても従業員に配慮した対応をしている事務所も数多くありますので紹介します。
コンテンツ目次
税理士業界の職場環境は悪い?
税理士業界は、「残業が多い職場」と言われることがあります。たしかに、「残業が多い」と聞くと、あまり良い印象は受けませんよね。残業時間の多さは、税理士事務所の規模の大小に関わらず、「ある時期」に限って言えば、残業が多い職場というイメージを与えてしまうでしょう。
だからと言って、「残業時間が長いのは職場環境が悪いから…」と判断するとしたら、それは早合点です。というのも、税理士事務所には年間を通じて、仕事量が特に増える「繁忙期」と、そうでない「閑散期」のサイクルがあるからです。残業が多いというのは、この繁忙期における仕事量の多さがクローズアップされているからと言えるでしょう。では、税理士事務所の繁忙期とは、いつの時期なのでしょうか?また、どのような理由によって忙しくなるでしょうか?
税理士事務所の年間スケジュールについて
税理士事務所における年間スケジュールは、大よそ次の通りになります。税理士事務所では、一年で特に忙しくなる時期があります。この時期になると仕事量が急に増えるため、人員を適正に確保しておかないと「人手不足」に陥ってしまいます。事務所側としても、繁忙期に備えて業務に早く慣れてもらいたいと、求人数も増える傾向にあります。
月 | 繁忙期・閑散期 | 主な仕事内容 |
1月 | 繁忙期(年末年始) | ・年末調整申告書のチェック ・年税額の計算 ・源泉徴収票の作成 など |
2月 | 繁忙期(個人確定申告) | ・個人事業主の確定申告書の作成 ・税務署への提出 など |
3月 | ||
4月 | 繁忙期(法人決算) | ・法人税や消費税などの確定申告書の作成 ・税務署への提出 など |
5月 | ||
6月 | ||
7月 | 閑散期 | ・巡回調査(顧客企業に出向いて経理帳簿のチェック) ・月次決算(顧客企業の経営者に正確な業務などを月ベースで決算報告) |
8月 | ||
9月 | ||
10月 | ||
11月 | ||
12月 | 繁忙期(年末年始) | ・年末調整申告書のチェック ・年税額の計算 ・源泉徴収票の作成 など |
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税理士事務所の繁忙期
2月~3月
この時期は、「個人事業主の確定申告期」にあたります。個人事業主は、毎年2月16日~3月15日までの間に確定申告書を作成し、税務署へ提出しなければなりません。税理士事務所では、この確定申告書の作成および、税務署への提出を代行して処理しています。通常の業務と同時進行しながら行うため、この時期は特に忙しくなります。
4月〜6月
この時期は、企業にとって「決算期」になります。法人企業をクライアントに持つと、決算月の末日の翌日から2カ月以内に法人税や消費税などの確定申告書を作成し、税務署へ提出しなければなりません。特に5月が多忙を極めます。
12月~1月
この時期は、「年末調整期」にあたります。従業員が一年間に給料から差し引かれる所得税は、本来支払うべき税額と異なる場合があるため、正しい税額に合わせる必要があります。税理士事務所では、この年末調整をクライアントから請け負うケースもあるため、業務を実施する12月と1月も、特に慌ただしくなります。
残業が増える時期はだいだい決まっている
税理士業界は、社会の運営に必要な「税」を取り扱う業界ですので、確定申告、法人税、年末調整など、毎年処理しなければならない「時期」が決まっています。従って、税理士事務所の大小に限らず、どこも繁忙期(つまり残業が増える時期)はだいたい決まっています。
税理士事務所を運営しながら従業員へ給料を支払っていく以上は、多くのクライアントを獲得して仕事を継続していかなければなりません。複数のクライアントを持っている場合、繁忙期も重なるため、「残業をゼロ」にできる可能性は低いと言わざるを得ません。
残業時間の抑制に取り組む事務所もある
残業が多い時期がある程度決まっている以上、業界全体で残業を減らすのは難しいでしょう。しかし、だからと言って、全ての税理士事務所が残業の多い業界事情を当たり前とし、何の対策も取っていないというわけではありません。事務所によっては、長時間労働を改善し、残業時間の抑制に取り組むところもあります。その一例が「一年単位の変形労働時間制」です。
一年間単位の変形労働時間制とは、一年を通じて総労働時間を計算して、祝日が多い月、年末年始、お盆休暇のある時期、閑散期の労働時間を減らして、その分を他の月に振り分けて多くする制度です。この制度を活用することで、閑散期に休日を増やしたり、終業時間を早くしたりするなど、無駄な労働時間を減らすことができます。他にも、従業員に配慮した、働きやすい環境づくりへの取り組み例として、次のようなものがあります。
・就業規則、給与規定が整備され公開している
・税理士試験勉強をしている人への配慮がある
・福利厚生が充実している
・固定超過勤務手当を超過した分もしっかり支給してくれる
・税理士会の年会費だけでなく、登録費用も事務所で負担してくれる
業務にはチームで接している事務所
または、繁忙期であっても残業が少ない税理士事務所の特徴として、チーム体制が敷かれている場合が多いようです。
税理士の有資格者が複数名在籍していて、その人数に応じて入力作業や仕訳を補助するアシスタント職が設置されており、クライアントに対しても複数名のチームで対応する形式の事務所もあります。
その場合は担当する業務が明確になっていて、業務量に適した人数が割り振られているようです。そういった税理士事務所は、各人に対して適切な業務量が設定されているため、残業も少ないということになるのです。
業務改善や業務効率化への取り組みが活発な事務所
昨今、ITの活用による業務改善、例えばRPAを利用した入力業務の自動化や、AIを使った仕分け業務の自動化、更には領収書などの帳票類の電子化及びOCRによる自動取り込みなど、クラウド会計ソフトの利用により銀行口座やクレジットカードの情報の自動取り込みなど、既に多くの会計事務所が導入し活用しています。こういった事務所はできる限り手作業を減らし、ミスが発生しない状況を作り出すことで大幅な効率化を実現し、残業を抑制するとともに、収益の最大かを図っているのです。
常に業務の効率化や業務改善に力を入れている事務所は、成長するスピードも早く、新規事業に着手する余裕もありますので、多くの経験やスキルアップをすることができるでしょう。
このように、会計事務所自身が改善することに対して前向きに動いているのであれば、将来的には残業時間も軽減するでしょうし、勤めていても得られるものは多いと思います。
労働環境が悪い事務所があるのも事実
一方で、労働環境がなかなか改善されない事務所もあります。全体でどの程度の割合なのかまでは分かりませんが、その傾向としては次のような特徴があります。もし、現在お勤めの税理士事務所が下記のような事項に複数該当するようでしたら、改善に向けて対策が打たれているのかを確認されたほうがいいでしょう。改善される見込みが無いようでしたら転職することも含めて考えてみたほうが良いでしょう。既に税理士事務所への就職や転職を検討中なら、勤務先選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
事業会社やIT企業でも「ブラック企業」という言葉が流行しましたが、会計事務所で下記のような事項に該当するようなら業務が適切に割り振られておらず、所員に対し過度な負担が発生しているということになります。そういった事務所は長期的な視点で戦略が練られていませんので、経営が安定しない、所員がまとめて退所してしまうなどのトラブルがつきまとうかもしれません。
<労働環境が悪い事務所を避けるためのチェック項目>
- 月給や年収が平均よりも下回っている(未経験者でも平均年収は300万程度)
- 所長税理士の年齢が高い(将来的に廃業する可能性もある)
- 職員の平均年齢がかたよっている(事務所内でキャリアアップできる環境が整っていない可能性がある)
- 男女比率がかたよっている(女性スタッフが少ない場合、産休・産後の職場復帰が難しい可能性がある)
- 未経験者の採用に消極的である(職員研修が受けられない可能性がある)
- 税理士有資格者、科目合格者の割合が少ない(所長税理士しか有資格者がいない等の場合、仕事が激務の可能性がある)
- 一人当たりの担当クライアント数が多い(一人あたり30件超だと業務負担も大きい)
税理士事務所の採用サイトもチェックしてみる
就職や転職を考えているなら、希望先の税理士事務所のホームページの「採用サイト」もチェックしてみましょう。採用サイトは、企業サイトとは別にある、「採用に特化したサイト」です。応募者に対する代表者からのメッセージや、スタッフの働く様子、働いてみてのスタッフの感想、事務所の概要など、企業研究するにあたっての有力な情報が得られます。採用サイトをチェックするなら、「コンセプト」を確認しましょう。
そもそも採用サイトは、採用する側と求職者とのミスマッチを防ぐためにあります。どんな人材を求めているのか、どんな職場環境なのか、今後どのような展望を描いているかなど、求職者へのメッセージがしっかり発信されているなら、後は自分がマッチできるかどうかの問題です。入社後、「思っていたイメージと何か違う…」ということがないように、採用サイトのコンセプトをしっかり確認しましょう。
採用サイトのある税理士事務所というのは、求職者のことを考えてくれているということがわかります。なぜなら、採用のために専用サイトを制作し、求職者に自社の情報を正しく伝えようと努力されているからです。多くの情報を提供してもらえれば、入社してからおもっていた事務所とは違っていたというようなミスマッチが起こりにくいからです。そのため、サイト制作に費用をかけて採用サイトを用意している税理士事務所は中規模以上の事務所が多いのです。
一人で探すのに不安感を持っている方へ
しかし、「サイトを見ただけで、本当に自分にマッチした事務所かどうかを判断するのは心もとない…」を思う方もいるかもしれません。そのようなとき、心強い味方になってくれるのが、無料で利用できる転職エージェントです。なぜなら、事務所の実情をよく知っている「転職アドバイザー」がいるので、あなたの経験やキャリア、働きたい条件を伝えれば、その条件にマッチした求人を紹介してくれます。また、職場環境や待遇の話など、面接担当者に直接会わなければ聞けないことも、転職アドバイザーが代理で教えてくれるので、入社後の不安感もなくなります。早く就職・転職先を見つけたい人にとっては便利なサービスです。
また、今の貴方の経験やスキルがどれだけの価値があるのか確認したい場合にも転職エージェントに相談することをおすすめ致します。今の貴方の市場価値を的確に分析してくれるからです。もし、ご自身で思っているよりも市場価値が高いようであれば、年収アップも見込めますので、転職することも考えてみてはいかがでしょうか。
最後に会計事務所における「ホワイト企業」とはどのような定義なのかを考えてみたほうが良いと思います。
残業が少ないイコールホワイト企業だという考えは早計かと思います。なぜなら残業が少なかったとしても働く環境が悪く、所内の人間関係もギスギスしているようであれば、それはホワイト企業とは言えないのではないでしょうか。
ホワイト税理士事務所というのは、一般的に所員への待遇や福利厚生が充実していて、働きやすい環境にある企業のことをです。残業が少ないということも働きやすい環境の一部なのです。
では、働きやすい環境とは、人によって捉え方も違う部分があるかもしれませんが、会計事務所の多くは、繁忙期と閑散期を繰り返して1年が過ぎていくということは前述でお伝えしたとおりです。
その時期がはっきりと分かれているのですから、メリハリのある働き方ができると言えなくもないです。閑散期にはまとめた休みを取り、趣味などの好きなことに没頭し、ONとOFFをはっきりとしたいという方も一定数いらっしゃるようです。
そういった人からみれば、現状の会計事務所は働きやすいホワイト企業だと言えるのではないでしょうか。
大切なのは、自身の働き方や、職場環境が合っているかどうかということなのです。
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