個人事業主や法人において税理士の必要性とその理由とは
個人事業主やフリーランス、中小企業など法人の中には税理士の必要性を感じていない場合もありますし、実際、税理士を使わずに自社で会計業務をすべて行っている会社も多くいます。
それでも、税理士は企業や事業主にとってメリットがある存在といえるでしょう。税理士の役割は単に「会計を代行してくれる」ことだけではなく、健全な企業経営をサポートしてくれる点にあるというのが大きな理由でしょう。
これまで税理士の必要性を考えてこなかった事業主も、今後さらに事業を拡大していくうえで税理士の大切さに気づかされる場面が必ず出てきます。
この記事では、税理士として働きたい人を対象に、事業主や法人における税理士の必要性を解説していきます。
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コンテンツ目次
法人や個人事業主が税理士をつけないデメリット
会計業務だけであれば、知識が豊富な人間なら問題なく行えます。しかし、「税理士」という国家資格を有しているからこそ果たせる役目は少なくないため、事業主にとっては税理士をつけないデメリットを感じる機会も多い感じるはずです。
たとえば「帳簿の不備が出やすい」点です。正しく帳簿類を管理しようとすると税理士の手が必要だと感じる人も多いはずです。
会計処理(経理処理)は「辻褄さえ合っていればいい」作業ではなく、経営規模が大きくなればなるほど細かい整合性が問われます。税理士によって整った帳簿をつけていないと、税務調査が入った場合に対応できず、追徴課税される場合も出てきます。最悪、脱税の疑いをかけられて企業の評判が落ちかねないでしょう。
「税金の払いすぎ、消費税の届け出忘れのリスク」も税理士をつけないデメリットのひとつです。税金の申告漏れも重大なミスですが、払わなくていい税金まで払うのも企業の大きな損失につながります。
無自覚的に余計な税金を申告しているケースも多く、税理士をつけるだけで企業の支出が抑えられることは珍しくないのです。また、「社員の知識不足」も税理士の必要性を高める要因です。
税理士は専門の勉強、キャリアを重ねて税制を知り尽くしたエキスパートです。一般職員より知識が豊富なのは当然であり、税務処理の正確性が期待できるでしょう。
参考:【東京スタートアップ会計事務所】税理士とはどんな仕事・業務で頼むメリットは何か?
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税理士をつけたほうが良いかは事業規模による
すべての事業主が税理士を雇うべきだとは断言できません。たとえば、多くの個人事業主が税理士はつけなくても十分に会計処理を行えます。理由としてはまず、簡単に購入できる会計ソフトの質が発達しており、素人の知識でも経理処理や会計作業に対応できるようになってきたからです。
もしも会計ソフトでは不安な作業が出てきたとしても、税理士には「スポット相談」のシステムがあります。本格的に依頼をせず無料相談の機会などを利用して、手軽に税金対策を行う事業主は珍しくありません。また、そもそも所得税の絶対的な額が小さい個人事業主もたくさんいるので、節税を重要視していないパターンも目立ちます。
一方で、法人の事業主ともなれば税理士の需要が高まっていきます。事業規模が大きくなるにつれて、決算処理は複雑になっていくからです。さまざまな部署、支店の売上を統合する必要がありますし、顧客ごとに支払い方法なども異なっているので会計上のミスが起こりやすくなっています。
また、会計に時間をかけているだけの余裕もなくなります。安価な会計ソフトでは対応できないほど、難しい計算を求められる場面も増えるでしょう。特に、決算時期ともなれば1年中の売上額と格闘しなければいけなくなるため、専門家レベルの能力が必須です。
参考:【東京スタートアップ会計事務所】税理士とはどんな仕事・業務で頼むメリットは何か?
法人や個人事業主が税理士をつける必要性
「ミスを防げる」「自社に不足した会計能力をカバーできる」などは、税理士をつけるメリットの一部です。
そのほかにも、法人や個人事業主が税理士に仕事を依頼するには、さまざまな背景があります。もっとも重要なのは「税金対策ができる」点でしょう。会計業務だけなら、ソフトの力を借りてノウハウに慣れればなんとかまかなえます。しかし、税金を控除する方法に関しては、付け焼刃の知識だとリスクをともないます。
間違った節税対策を実行に移してしまうと、「脱税」に相当してしまうからです。税務のプロである税理士の指導のもと、正しい税制対策を行いたいと考える企業は珍しくありません。
また、税理士がサポートしてくれていると、税務調査が入っても安心です。税法上の特例を活用できるため、調査機関から会計を深く追求されても問題なく説明できます。
「資産調達がしやすい」のも大きなメリットでしょう。
金融機関から資金を融資してもらうには、利益の可視化と健全な経営状況の証明が必須です。税理士というプロフェッショナルの目が入ることで、金融機関に提出する資料の信頼性は上がります。そして、事業主自らが会計業務にわずらわされないためにも、税理士は重要です。税理士がいれば事業主は経営に集中して、膨大な書類作成や手続きを税理士に依頼できます。
大切なのは、税理士業務をどこまで依頼するのかを包括的に考え、税理士と顧問契約を結ぶのか、確定申告や決算書作成などの業務をスポットで依頼するのかを検討することです。
税理士にかかる費用の目安
税理士に依頼をする際に、基本的に皆さんが思い浮かべるのは会計事務所(税理士事務所や税理士法人)との顧問契約でしょう。
しかし、継続して業務を依頼する他にもスポットで対応してくれる業務も多くあるのです。
また、特徴として法人は決算書の作成など、税理士に依頼しないとできないことがあったりと、個人と法人によっても業務内容も変わります。
税理士にかかる費用は、主に3つに分けられます
- 顧問料
- 各種作業料金
- オプション費用
(1)顧問料
クライアント企業が税理士と決められた期間内で契約を結び、税務代理、税務書類の作成、税務相談などのサービスの提供を受けますが、その期間内に毎月支払う料金のことを指します。
(2)各種作業料金
確定申告(2~3月)、年末調整(12月)など、決算処理など特定の時期にスポット(単発)で依頼する際に支払う料金のことで、顧問料には含まれないケースが多いようです。
(3)オプション費用
上記以外の帳簿の記入、記帳代行、消費税の申告代行、給与計算など企業の要望に応じて発生する業務に支払われる料金です。
会計事務所や税理士法人も対応できる業務の幅を広げている事務所も増えており、依頼できる業務についても多岐にわたりますので、事前にどこまで依頼できるのか確認しておきましょう。
税理士として独立開業した際、値段の設定で悩まれる方も多いようですが、上記3つ項目に分けると値段も決めやすくなるでしょう。
値段の目安に関しては、下記記事をご参考ください。
税理士の報酬の費用相場やその費用根拠について、更に詳しく知りたい場合は「どうやって決まるの?税理士の報酬相場と根拠について」の記事をご覧ください。
税理士は税務処理だけじゃない!経営サポートやコンサルも
事業主にとって、「役員報酬」は悩ましい問題です。まず、役員報酬は明確な基準がないために額をどうするかで迷います。次に、役員報酬は「経費」に計上できますが、タイミングを誤ると認められなくなってしまいます。株主総会などで役員報酬を協議できるならすんなり決められる企業もありますが、多くの事業主は慎重になってしまうポイントでしょう。
実績を積んでいる税理士がいると、こうした難しい問題を相談できるので経営上の心配が減っていきます。そのほか、決算対策も事業主が抱える大きな課題です。税理士のアドバイスに従い、1年を通して対策を続けていれば会社の純利益を守れます。
税理士のネットワークも事業主にとってプラスに働きます。士業である税理士は職業の特性上、法律関係のコネクションが豊富です。そのため、弁護士や司法書士、社会保険労務士などを事業主に紹介することができます。法律事務所は事務所毎の能力が外からでは分かりづらく、選定に苦労している事業主はたくさんいますし、社会保険の各種手続きなどに悩んでいたりするケースも多く、各種士業との円滑なコミュニケーションは事業主にとっても事業を進める上で重要なポイントだと言えます。
信頼できる税理士から紹介してもらえると、事業主は安心できるでしょう。そのほか、社員の個人的な悩みも、企業が契約している税理士が解決できるケースもありえます。企業と社員の歩みを守るためにも、税理士は大活躍できる職業です。その需要は将来的にも下がることはないでしょう。
多くの場合は法人設立時に顧問税理士と契約するのか検討されているかと思いますが、起業時には多くの士業の手を借りることになりますので、上記のように税務だけではなくそのほかを含め包括的に検討されるといいでしょう。
税理士資格は目指す価値がある仕事と言えるのか?
これから税理士を目指そうか検討している人にとっては、税理士の仕事が求められている理由についてご理解いただけたかと思います。
近年、働き方改革や副業の解禁により会社員から独立し、フリーランスや個人事業主として働く人が急増しています。それに伴い会社員として働いていた時には会社が対応してくれていた確定申告や決算書の作成など税務処理の業務量は以前とは比較にならないほど増えているのです。
コロナ禍により助成金や補助金申請などのサポート業務も急増していることや、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法律の改正も業務増加の要因でしょう。
そのため、実務経験を積んでいる経験者は会計業界(税理士事務所、税理士法人、一般企業の経理)でも採用することが非常に難しく、深刻な経験者の人手不足になってしまっています。
経験者層の雇用はあきらめて、ポテンシャルを期待して未経験者層を積極的に採用し、研修・教育制度を充実させて、社員を育てていくことを前提に新卒や第二新卒、未経験者の採用(正社員・パート)に力を入れている事務所も増えています。
特に税理士の人手不足は解消される見込みは見えていませんので、需要が高く将来性のある仕事だと言えるでしょう。
そんな中、税理士の高齢化も大きな課題の1つとなっています。小規模な会計事務所は後継者が見つかっておらず、代表税理士が引退するタイミングで廃業となってしまうことが増えています。そこで、事業承継を考えてM&Aコンサルタントを仲介して事業引き継ぎ先を考えている事務所が増えています。会計事務所の規模が大きくなる傾向なのは、このような理由によるものだと言えます。そのため、業務は増えているのに関わらず会計事務所は少なくなる傾向となっているのです。
税理士事務所や税理士法人の在り方が変わってきている変革期だと言えるかもしれません。いずれにせよ、税理士の将来性は高く、若手の税理士資格保有者のニーズは高まるものと思われます。
実際に令和5年(2023年)の税理士試験では近年の減少傾向から一転して受験者数も増加しており、ニーズの高まりを反映した形となっています。
また、多くの会計事務所(税理士事務所や税理士法人)は業務範囲を拡大しており、税務処理やコンサルティングだけではなく、労務管理、DX支援など多岐に渡り企業の経営をサポートしてくれる「頼れる存在」になってきています。
税理士資格取得を目指し、実務経験も積むために就職、転職を考える場合は、税理士事務所や税理士法人の業務範囲、仕事内容の詳細を確認して、入社した後にやりたい仕事ではなかったというミスマッチが起こらないようにすることが重大な注意点です。
顧問税理士がついていることは総合的メリットも大きい
事業規模によっては顧問税理士をつける必要はありませんが、決算対策や税金対策、資金調査の面で税理士がいると有利になるのは事実です。また、税理士がいると社員が会計業務に追われることもなくなり、それぞれの担当業務に集中できます。税理士には税制以外のさまざまな相談ができるのも大きなメリットです。
最近では経営コンサルティングについても対応できるような多角的に事業を展開している会計事務所も増えていますので、包括的に相談することも可能になってきています。
事業主や法人にとって税のスペシャリストである税理士は必要だといえるでしょう。ただし、税理士事務所や税理士法人にはそれぞれ得意・不得意があり、法人税・所得税・相続税・資産税といった全ての税金に詳しいとは限りません(事務所の規模や体制によって差があります。)。
税理士を目指すなら会計事務所へ転職するのも有効な手段です
税理士を目指し、実務経験積みたいから税理士事務所や税理士法人などの会計事務所を転職先として選ばれるときは慎重に情報収集を行ってから決めるのが重要なポイントです。
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投稿者情報
- 現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しているかたわら、会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。
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