社労士は未経験でも就職・転職できる?社会保険労務士のニーズも解説
資格を取得することでキャリアアップを狙う人にとって、社労士(社会保険労務士)の資格は非常に人気があります。しかし、社労士は、難関国家資格であり、簡単に取得できるものではありません。
難関を突破して社労士の資格を取得しても、未経験だと就職・転職は難しく希望の仕事に就けないのではないかと心配になる人も多いでしょう。
今回は、業界未経験でも社労士として就職・転職できるのかを解説するとともに、社労士の就職市場や転職市場のニーズにも触れていきます。
働き方改革やテレワーク導入による働き方の多様化など、社労士の需要は増加しているように感じますが実際にはどうなんでしょうか?
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コンテンツ目次
実務未経験でも就職・転職できるの?
前提として、「社労士」を名乗って働くには社労士資格を取得するだけではなく、2年の実務経験を経た上で社労士登録をする必要があります。例外として、2年の実務経験の代わりに「事務指定講習」を修了することでも社労士登録ができますが、基本的には「社労士」とは、実務経験を経た上で社労士登録が済んでいる人のことを指します。
つまり、厳密には「実務未経験の社労士」というのはほとんど存在し得ないということです。
したがって、本記事では「実務未経験でも就職・転職できるの?」というテーマに対して、「 社会保険労務士資格取得者(≠社労士)における就職・転職」を前提として解説していきます。
社労士の資格を就職や転職に活かしたくても、未経験だと資格が有利に働かないのではないかと考える人も少なくありません。確かに、希望する職種や企業によっては、実務経験を重視するケースもあるでしょう。しかし、未経験者でも採用する企業は多数あるため、社労士の資格は就職や転職に活かすことができます。
新卒・社会人それぞれの時期や期間で採用の選考基準も異なるので、それぞれで重視されるポイントもあわせて押さえておきましょう。ここからは、就活するタイミングごとの採用ポイントを踏まえて解説します。
社労士資格取得者が新卒で就職するケース
社労士に限らず、新卒の場合は「若さ」が1つの武器になります。将来開花するポテンシャルがどの程度あるかも重要視されるでしょう。企業側は自社にマッチする人材を探しています。未経験者であっても有資格者であれば、自社にマッチする考えや性質を持っていれば、採用される可能性はあります。また、企業の方針や仕事内容、将来のビジョンなどを理解していることも大切です。
ただし、そもそも社会人に必要な基礎能力やコミュニケーション能力が欠けていれば不採用になることも十分あり得ます。社労士は、クライアントの相談を受けたりサポートを行ったりする必要があるため、相手の話をしっかり聞く姿勢と的確にアドバイスすることが求められます。
また、時には法律を無視する企業を指導するために、立ち向かわざるを得ないこともあるでしょう。そのため、コミュニケーション能力はもちろんのこと、主体性や探究心が高いこと、自ら考えて行動できる力も求められます。こうしたポイントは、履歴書や面接を通じてしっかりと企業側にアピールするようにしましょう。
社労士資格取得者が社会人から転職するケース
新卒採用とは異なり、社会人で社労士に転職する場合は即戦力として求められるケースが多いです。社労士資格を保持していることよりも、資格なしでも実務経験を重視して採用する企業も少なくありません。
とはいえ、社労士資格を持っていたほうが有利に働くケースは多いです。実務経験が乏しい場合は、募集情報の中から未経験者も応募できる求人を探すとよいでしょう。
社労士事務所の求人はやはり東京などの首都圏や大阪などの大都市が中心となります。必然的に未経験OKの求人も同様となりますので求人を探すときには注意しましょう。
ちなみに、社労士資格を取得する方法は、以下のページでご紹介しています。ご興味のある方はぜひご一読ください。
社労士になるには?資格の取り方・勉強法・求人の探し方を解説
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社労士に向いている人の特徴
社労士に憧れて転職をしたとしても、自分に向いていなければ、また別の職種を考えなければなりません。転職した後スキルを発揮するためにも、まずは自分に適性があるか確認してみましょう。ここでは社労士に向いている人の特徴をご紹介します。
数字に強い
社労士の仕事と計算は切っても切れない関係です。例えば、社労士の仕事には健康保険料や給与計算をした後、帳簿を作成する業務があります。
従業員が多い職場やクライアントを多く抱える社労士であれば、より地道な作業が続きます。お金に関する仕事は、小さなミスも許されないため高い集中力も必要となります。そのため、数字に強く且つ細かい管理やチェックができる人は社労士に向いています。
もし、この点に適性なしと感じているのであれば、そもそも社労士に向いていないのかもしれません。
総務や人事での実務経験がある
社労士の仕事では、雇用保険や社会保険の知識も求められます。また、保険給付に関する計算スキルも大切です。転職前の仕事で、総務や人事の実務経験があれば、培ってきたスキルを発揮しやすくなります。採用の際も、実務経験は大きなポイントとなり、即戦力を求める企業からは優遇されるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
社労士の仕事は、計算や事務処理だけではありません。クライアントからの相談を受けてサポートをすることもあります。
相談に応じ、的確にアドバイスするためにはしっかりと相手の話を聞き、時には相手から話を引き出すコミュニケーション能力が必要です。普段から人と話すことが好きで、わかりやすく解説できるスキルがある人に向いています。
労働問題や雇用問題に対する意識が高い
社労士の仕事では、労働や雇用の問題に関する専門知識も必要です。特に、保険や労務に関する法律は頻繁に改正が行われています。
従業員の権利を守るためには、最新の情報を得ておく必要があります。万が一、古い情報のままアドバイスすれば、大変な問題に発展する可能性もあるでしょう。普段から、労働問題や雇用問題に対し関心をもてる人は向いています。
就職・転職するときに意識したい社労士の現在
社労士として、希望する職場に就くためには、社労士業界の現状を把握しておく必要があります。
特に、AIの技術が進歩しつつある現代において、社労士の仕事にも変化が出てきます。続いては、就職・転職をするにあたって押さえておきたい社労士の現状について解説します。
社労士事務所の求人数について
一般企業の求人と比較して、社労士事務所の募集は少ない傾向にあります。そもそも、社労士事務所の運営は少人数で行うケースが多く、求人の募集をかけても数名程度です。
一方で、社労士の資格は人気が高く、資格を取得する人は増加傾向にあります。必然的に倍率は上がるため、社労士として働くことは狭き門といえます。しかし、少数精鋭体制で事業を行う社労士事務所で欠員が出た場合は、即戦力になる人が重宝されます。どうしても、実務経験が長くスキルがある人の方が有利になりやすいのです。
そのような理由から未経験で社会保険労務士事務所への転職はやめとけという意見もあるようです。
AIで代用できる仕事が増える可能性がある
社労士は、「社会保険労務士法第2条」に定められる独占業務を行えます。社労士の独占業務は1号から3号までに分類されており、それぞれの業務の詳細は以下の通りです。
・1号業務:労働社会保険諸法令(労働および社会保険に関する法令)をベースに、申請書や報告書などを作成し、手続き代行を行う。
・2号業務:労働社会保険諸法令に沿って帳簿書類を作成する。
・3号業務:人事や労務管理に関する相談や労働社会保険諸法令に基づいたアドバイスを行う。ただし、3号業務は独占業務ではなく、社労士以外が担うこともある。
近年、AIの技術が進歩し、行政の手続きも簡素化されつつあります。なかでも1号・2号業務はAIを活用した人事労務管理ソフトも充実しているので、基本的な申請業務は今後減っていくと予想されています。今後、相談やアドバイスなどAIではできない人間ならではのスキルの追求がより重要になっていきます。
社労士そのもののニーズは高まっている
AIの進歩や行政手続きの簡素化によって社労士の仕事量の減少が予想される一方で、コンサルティング業務のニーズは高まっています。
例えば、以前の新型コロナウイルス感染症に対応するための助成金や雇用調整助成金などは誰もが初めての経験であり、複雑な申請が必要となったことからも、社労士のスキルに頼りたいと考える人が急増し一気に需要が高まった時期でもありました。。
こうした新たな問題に対する丁寧なサポートは、AIよりも社労士が得意とする分野です。その他、公的機関の調査員や人事・総務部などでも社労士のスキルは重宝されるため、社労士事務所にこだわらなければ、活躍の場は十分にあるといえるでしょう.
また、社労士の年収や給与アップについて、更に詳しく知りたい場合は「社労士って高年収なの?働き方による違いや給与アップのポイントとは」の記事をご覧ください。
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社会保険労務士を活かせる就職・転職先
前章でも触れた通り、社労士のスキルは社会保険労務士事務所に限ったことではありません。実は、さまざまな職種で活かせる可能性があります。より社労士のスキルを発揮するためには、自分の希望に見合った職種を見つけることが大切です。
社労士事務所以外であっても、業務を多角的に対応している企業もありますし、事業会社(一般企業)であっても資格手当がついたりと特徴があります。
続いては、社労士の資格を活かせる就職・転職先について、細かく解説します。
社会保険労務士事務所・社会保険労務士法人
社労士の資格を持った人が就職・転職する先として多いのが、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人です。事務所や法人の規模によって業務内容が異なりますが、1号から3号までの業務が一般的で、中でも給与計算をメインとしているところが多いです。その他、創業支援をサポートしたりコンサルティング業務をしたりと業務は幅広くあります。
どの業務もクライアントにとって重要な部分に触れる内容のため、責任感や細かな気配りが求められるでしょう。
厚生労働省が発表した令和4年賃金構造基本統計調査では、10人以上の従業員を抱える社会保険労務士事務所に勤務する社労士の平均給与額は50.7万円、平均年間賞与は171.3万円となり、平均年収は780万となります。同規模の企業で働く一般事務従事者の平均年収が458万円であることと比べると、高収入ということがわかります。
人事・労務コンサルティング会社
社労士の中には、人事や労務のコンサルタントに重点を置いて仕事をしている人も多くいます。経営者は、従業員を雇用するにあたってさまざまな法令を守らなければなりません。
しかし、労働や社会保険に関する法律は非常に難しいうえに、頻繁に法改正が行われるため、気がつかないうちに法律に違反していたというケースもあるのです。人事・労務コンサルタントは、法令に関するリスクを避けるために、経営者に対して難しい労働社会保険諸法令をわかりやすく説明し、企業のコンプライアンスをサポートする仕事です。
人事・労務コンサルティング会社の平均年収が740万円であることから、高収入が得られることがわかります。
一般企業の人事・総務部
全ての企業において、人事や労務に関する業務は必要な業務のひとつです。一般的に、民間企業には人事部や総務部があるため、社労士は重宝される資格ということがわかります。
人事部では、業務を円滑に行うための人員配置や人材採用に加えて、社会保険手続き、給与計算などの業務も行います。一方、総務部では、組織に関わる事務全般を行い、人事部を設けない企業では、人事の役割を担うこともあるでしょう。
令和4年賃金構造基本統計調査によると、10人以上の規模がある企業に勤める庶務や人事事務員の平均年収は458万円でした。
公的機関の調査員
非常勤の公務員として、国勢調査や労働力調査、家計調査といった統計調査に従事するのが公的機関の調査員です。例えば、労働局が行う労働保険調査では、労働保険の手続きや助成金申請、雇用契約が適正に行われているかを調査します。報酬は、日当1~2万円程度が一般的で、毎日仕事があるとは限らないため、副業で行う人が多いでしょう。
会計事務所
税金関係を担当する税理士に対し、社会保険を担当する社労士。一見業務が明確に分かれているようにも感じますが、年末調整や給与計算など双方の業務は密接関係にあるのです。社労士の資格を保有していないとできない独占業務も多いため、会計事務所としても業務の幅を広げられるというメリットがあります。
社労士として働きながら、税務や会計についての知識を得ることができるので、将来的に独立を考える人にとって経歴に他社との差別化を図る大きな強みとなります。会計事務所に勤める社労士の年収は400万円~800万円と比較的幅が広くなっていることがわかります。
他士業事務所
税理士や弁護士事務所も、社労士の転職先として人気があります。社労士の仕事に、別の専門分野を担う士業が組み合わさると、業務範囲が広がるといったメリットがあるためです。
他士業事務所で働くためには、豊富な実務経験が必要であり、未経験者では難しいでしょう。しかし、社労士を必要とする他士業事務所は規模も大きく、待遇がよい傾向にあります。令和4年賃金構造基本統計調査において、公認会計士や税理士の平均年収が746万円程度となっているため、社労士も同等の給与が予想されます。
また、税理士の年収事情など、更に詳しく知りたい場合は「税理士の平均年収の現実とは?税理士の給料を20代、30代、40代、50代以降の年齢別や働き方別に解説!」の記事をご覧ください。
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就職・転職を成功させるポイント
社労士の資格を活かした就職・転職を成功させるためには、しっかりとポイントを押さえることが大切です。早く転職したいからといって、焦って転職先を選んで入社してしまうと、ミスマッチから長続きしない可能性もあるでしょう。
最後に、社労士の就職・転職におけるポイントを解説します。
自身の経験やキャリアを活かせる転職先を選ぶ
社労士の就職・転職が失敗する原因として最も大きな理由として、入社してから自分の希望や性質と合わない職場だったと気がつくミスマッチが挙げられます。マッチする職場に出会うためには、自分の希望やキャリア、実績などを採用担当者に明確に伝えなければなりません。
新卒で就職する場合は、学生時代の経験や自身の長所がポイントです。特に未経験者を採用する際には、志望動機や就職後の展望も重視されます。一方、中途から転職する際は、前職・現職の業務経験や実績を伝えましょう。これまでの仕事が社労士の仕事にどう活かせるのかを分析したうえで転職先を選ぶとスムーズです。
業務適正があることをアピールする
社労士の仕事では、コミュニケーションスキルの高い人が重宝されます。また、計算能力やコツコツと責任ある仕事をするスキルも必要です。これまでの仕事で、社労士の業務に活かせるスキルを磨いてきた場合、面接でも有利に働くでしょう。その他、労働問題や雇用問題に関する意識の高さもポイントです。こうした業務適性をしっかりとアピールすることで、就職・転職がさらにスムーズに進みやすくなります。
こだわりすぎない
社労士の就職先として人気の高い社会保険労務士事務所は、もともと求人数が少ない傾向にあります。これに反して、社労士の数は増加しているため、求人倍率は高いです。そのため、社会保険労務士事務所のみに就職・転職先を絞ると、なかなか内定がもらえず就活に失敗する可能性があるでしょう。
社労士の仕事は、一般企業の人事・総務部から他士業事務所、人事・労務コンサルティング業までさまざまです。あまり業種にこだわりすぎず、視野を広く持つと、より自分に見合った企業が見つかりやすくなります。
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社労士の就職・転職は社労士事務所だけではない
社労士は、業界未経験者でも十分に就職・転職のチャンスがあります。しかし、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人は、求人数自体が少ない傾向にあり、倍率が高めです。
業界未経験だとしても、社労士法人以外の業界へ再就職するつもりで飛び込んでみるのも、業務の幅が広がり将来の選択肢が増えることになるでしょう。
社労士の資格を活かすのであれば、志望先をこだわりすぎず、一般企業の人事・労務スタッフやコンサルティング業も候補に入れてみましょう。
広い視野を持って業種探しをすると、社労士のスキルを活かしながら、自分らしく働ける企業に出会いやすくなります。
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投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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