司法書士試験を徹底解説!試験までの流れや勉強のポイントとは?
2023/10/30
弁護士や税理士と並ぶ8士業の1つに、司法書士があります。司法書士になるためには、司法書士試験を突破しなくてはなりません。超難関といわれる司法試験は弁護士や裁判官になる人が目指す試験ですが、司法書士試験も司法試験に次ぐ難易度の試験です。今回は、司法書士試験の内容や受験までの流れについて解説します。
コンテンツ目次
司法書士試験の概要
司法書士試験は、司法書士に欠かせない法律に関する知識や応用スキルが問われる試験です。年齢や学歴、国籍などを問わず、希望すれば誰でも受験できます。非常に難しい試験ですが、何度でも挑戦できる点が特徴といえます。その特徴から、数年かけて挑戦する人も多いです。試験は筆記と口述の2種類行われます。口述試験を受けられるのは、筆記試験を合格した人のみです。筆記試験の勉強に欠かせない過去問は、法務省公式ホームページからダウンロードできます。
筆記試験
司法書士試験の筆記試験は、基本的に毎年7月の第1日曜日もしくは第2日曜日に実施されます。280点満点中208.5点以上取れれば合格です。前回の試験で筆記試験に合格していれば、次年度以降は筆記試験が免除となります。
主要となるのが、「民法」「商法(会社法)」「不動産登記法」「商業登記法」といった4科目です。そのほか、業務に必要な「民事訴訟法」「民事執行法」「民事保全法」「供託法」「司法書士法」「憲法」「刑法」の7科目が出題内容となっています。択一式の問題に加えて、記述式の問題も出題されます。それぞれの科目の特徴は以下の通りです。
・民法
司法書士試験において、最も出題数が多い科目が民法です。民法は午前の部に出題されますが、全35問のうち20問が民法から出題されます。配点も高いため、逃せない科目の1つです。民法は生活に関する法律であり、司法書士試験では物権や担保物権の分野が多く出題される傾向にあります。
商法(会社法)
午前の部で民法に次いで出題数が多いのが、商法(会社法)です。営利目的の会社や個人に関する決まりがまとめられた法律であり、司法書士にとって身近な商業登記がベースとなっています。法務や総務で働いたことがあればイメージしやすいですが、学生やこうした業務に就いたことがない人にとっては難易度が高い科目といえます。
・不動産登記法
司法書士といえば、不動産登記法といっても過言ではないほど頻繁に登場する法律です。土地や建物に関する権利や法律を不動産登記簿に記録するにあたってのルールがまとめられています。普段の生活では関わることが少ない法律のため、イメージしづらい人も多いでしょう。しかし、司法書士試験全体の中で2番目に出題数が多いため、必ず押さえておく必要があるといえます。
・商業登記法
商法や会社法に関する、「登記に関わる決まり」を定めた法律が商業登記法です。会社法と関係する法律といえるでしょう。不動産登記法と同様、司法書士において欠かせない法律です。
・マイナー科目
上記の主要4科目以外の科目を「マイナー科目」といいます。「民事訴訟法」「民事執行法」「民事保全法」「供託法」「司法書士法」「憲法」「刑法」がマイナー科目にあたります。ただ、マイナー科目だからといって、勉強を疎かにしてよいわけではありません。合格点に達するためには、マイナー科目も勉強する必要があります。
口述試験
司法書士試験の筆記試験に合格すると、口述試験の受験が可能です。口述試験は面接形式で実施され、司法書士として欠かせない知識が問われます。特に、「不動産登記法」「商業登記法」「司法書士法」に関する問題が出題されることが多く、質問に対して論理的に回答する必要があります。ただ、筆記試験に合格した人であれば、しっかりとした知識が身に付いていることが予想されるため、そこまで身構える必要はないでしょう。この司法書士の魅力や仕事内容は、以下のページでも詳しく解説しています。
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司法書士試験の受験までの流れ
続いては、司法書士試験の出願から最終的な合格発表までの流れを解説します。例年の流れを基準に月ごとにまとめていきますが、年度によってはスケジュールが変わる可能性もあります。司法書士試験を受験する場合は、事前に公式ホームページを確認するようにしてください。
4~5月
例年、4月初旬から5月中旬まで受験案内や願書が配布されます。受験を希望する人は願書を取得し、4月末から5月中旬までの間に設定された出願期間に願書を提出するようにしましょう。法務局や地方法務局で願書を取得できます。どうしても窓口に出向くのが難しい場合は、郵送で請求すると良いでしょう。
願書の提出先は、受験地として記載した筆記試験を実施する法務局、または地方法務局の総務課です。口述試験のみの場合は、口述受験地として記載した法務局の窓口に提出しましょう。受験地は自分の住所がある土地以外に設定することも可能です。願書提出時には受験手数料が8,000円必要になります。また、収入印紙を貼り忘れないようにしましょう。
7月
筆記試験が開催されるのは、7月の第1日曜日もしくは第2日曜です。午前と午後の2部制になっており、午前の部は午前9時30分~午前11時30分の2時間実施されます。午前の部に出題される科目は、「民法」「商法(会社法)」「憲法」「刑法」などの、いわゆる実体法と呼ばれる科目です。全て択一式で出題されます。
一方、午後の部は午後1時から午後4時までの3時間実施されます。午後の部では、手続法と呼ばれる「不動産登記法」「商業登記法」「供託法」「民事訴訟法」「民事執行法」「民事保全法」「司法書士法」などが出題されます。このうち、「不動産登記法」と「商業登記法」に関しては、記述式問題も出題されるのが特徴です。
10月
筆記試験の合格発表は、例年9月下旬から10月上旬頃に行われます。法務省のホームページにおいて合格者の受験番号が発表されるとともに、受験地の法務局でも掲示されます。発表時間はどちらも午後4時です。
筆記試験に合格すると、10月中旬頃に法務局から口述試験の受験票が送付されてきます。口述試験は全国に8ヶ所ある法務局から指定され、10月中旬~下旬頃に開催されるのが通例です。
11月
10月下旬~11月上旬には、いよいよ最終的な合格者が発表されます。筆記試験と同様、筆記試験を行った法務局で合格者の受験番号が掲示されるほか、法務省のホームページにも掲載されます。最終的な合格発表が行われる時間も午後4時です。
司法書士試験の難易度
司法書士試験を受けるにあたって、やはり気になるのが難易度でしょう。難易度を把握しておくことで、試験勉強の流れもイメージしやすくなります。2021年度の司法書士試験では、受験者数1万1,925人に対して合格者が613人と発表されています。(※1)合格率約5%と例年に比べて少し高い結果でした。これまでの試験を見てみると、合格率は3~4%前後となっています。この数値からも難易度が高いことが分かるでしょう。
実際、超難関とされている税理士試験でも合格率は約20%程度であり、司法書士試験は税理士試験よりも難しいともいわれています。この背景として、司法書士試験が相対評価を導入していることが挙げられるでしょう。
相対評価とは、基準点を満たした人全てが合格するわけではなく、基準点をクリアした人の中から相対評価で合格点が設定される方法のことです。つまり、合格を勝ち取るためには、できるだけ上位に食い込む必要があるということです。
司法書士試験を突破するためには、最低でも約3,000時間の勉強が必要といわれています。試験勉強に専念できる場合、1日8時間の勉強を365日繰り返せば3,000時間になりますが、この日程はあまり現実的ではないといえます。中には、働きながら勉強をする人もいるでしょう。多くの人が数年かけて司法書士試験の勉強をしています。下記のページでは、司法書士試験と税理士試験の難易度についてまとめています。司法書士を目指している人は、ぜひ一度目を通して見てください。
司法書士試験の勉強をするときのポイント
司法書士試験に合格するには、膨大な勉強時間が必要です。効率良く勉強していくためにも、事前にポイントを押さえておくことをおすすめします。特に働きながら司法書士試験の勉強をする人にとっては、押さえておくべきことだといえるでしょう。続いては、司法書士試験の勉強をする上で押さえておきたいポイントについて解説します。
六法全書を引くようにする
司法書士試験で出題されるのは、法律に関わる内容がほとんどです。日常的に六法全書を引くと、単に条文を丸暗記するだけではなく、意味や理論を把握できるようになるでしょう。また、ひたすら六法全書を読むのも勉強法の1つです。
過去問をしっかり解く
司法書士試験を目指すにあたって、テキストだけではなく過去問を活用することが大切です。過去問を完璧に解けるようにしておくと、本番の試験での正解率を上げることができます。過去問は、インターネット上でダウンロード可能です。ただし、過去問だけを解き続けるのは効率の良い勉強法とはいえないでしょう。テキストと合わせてバランス良く勉強することが大切です。
時間配分を意識する
過去問を解いてみて、時間が足りないと感じる人も多いです。時間配分をしっかりとしていなければ、司法書士試験に合格するのは難しいでしょう。特に午後の部は、記述式問題があるため、択一式問題をスムーズに解くことが大切になります。
予備校が主催する模試に挑戦する
予備校は定期的に司法書士試験の模試を主催しています。出題内容は司法書士試験の予想問題です。模試に挑戦することで、試験の雰囲気に慣れることができるでしょう。落ち着いて本番の試験に臨むことができます。
司法書士試験の勉強におすすめの教材を紹介
司法書士試験の勉強をする上では、教材選びが大切です。自分に合った教材を使うと、より効率良く勉強できるでしょう。司法書士試験に関する教材はさまざまなものがあります。続いては、司法書士試験の勉強におすすめしたい教材を紹介します。
東京リーガルマインド「根本正次のリアル実況中継 司法書士 合格ゾーンテキスト1 民法I」
司法書士試験に独学で挑む人に向けたテキストです。資格取得を目指す人が通うLEC(東京リーガルマインド)の講師である根本正次さんの著書であり、まるで講義を受けているかのように読み進められます。
早稲田経営出版「司法書士 山本浩司のautoma system」
司法書士である山本浩司さんの著書で、独自の「山本記憶法」に基づいた内容となっています。法律の条文だけを覚えるのではなく、実社会における実情を踏まえながら学習していくのが特徴です。また、講義形式で展開していく流れになっており、読みやすい点も魅力の1つといえるでしょう。
早稲田経営出版「司法書士 スタンダード合格テキスト」
それぞれの科目ごとに分かれており、全11シリーズで構成されているテキストです。法律改定に合わせてしっかりとテキストも進化させているため、安心して利用できます。基礎的な内容に加えて、判例や条例も豊富なのが特徴です。また、出題頻度が掲載されているため、効率良く勉強できるテキストといえます。
ゼロからスタート!「海野禎子の司法書士1冊目の教科書」
これから司法書士を目指すという人におすすめしたいテキストです。入門テキストであり、一度も法律の勉強をしたことがない人に向いている内容となっています。LECの講師を務めている海野禎子さんの著書であり、司法書士試験に欠かせない主要4科目を分かりやすく学べるのが特徴です。
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