50代でも税理士の転職は成功するのか?年収アップは?会計事務所の求人に年齢は関係ない!
会計業界は高齢化が進んでいると言われており、小規模の会計事務所・税理士事務所では70代、80代の代表税理士が現場で業務をしているという話も珍しいことではありません。
昨今、中小企業における事業承継が課題となっていますが、それは会計事務所・税理士事務所も同様です。後継者がおらず、代表税理士が仕事を辞めるタイミングで廃業、または他事務所に吸収となるケースも増えてきています。
以前は35歳転職限界説のような話もありましたが、現在では40代であっても転職できることが一般的になっています。ましてや、会計業界であれば30代、40代で税理士資格を取得し、これから活躍すると言った方も多い業界なので、50代であっても転職は容易なのかと思われがちです。
では、実際の会計業界での転職市場で50代の税理士の需要はあるのか、また年収アップを想定した転職は可能なのかを解説します。
コンテンツ目次
会計業界において税理士の高齢化が進む背景とは?
日本税理士会連合会は10年ごとに税理士実態調査を行っています。最新の調査である2015年の調査では、税理士として登録している方の年齢層は以下の通りとなっています。
年齢 | 割合 |
---|---|
20代 | 0.6% |
30代 | 10.3% |
40代 | 17.1% |
50代 | 17.8% |
60代 | 30.1% |
70代 | 13.3% |
80代 | 10.4% |
無記入 | 0.5% |
図表1: 税理士登録をしている税理士の年齢層
この調査は、2015年のものですが基本的な傾向は2021年となっても大きく変わりありません。この調査からわかるように、税理士業界において、最も多い年齢層は平均年齢60歳代となり、次点で、50歳代が続いています。つまり、会計業界においては、税理士の高齢化が進んでいることがわかります。
逆に言えば、20代、30代の新たに税理士登録をした若手税理士が非常に少ないという状況であることがわかります。
このことから、税理士の高齢化がかなり進んでいることがわかるはずです。それでは、なぜ税理士の高齢化は進んでいるのでしょうか。その主な理由は、税理士試験と関係があります。そこで以下では、税理士試験合格者の年齢傾向について明らかにしていきます。
この会計業界の高齢化、税理士の高齢化が進むと、多くの歪が生まれてきます。
会計事務所の後継者不足
その1つが、会計事務所の後継者不足です。税理士事務所の多くは税理士は所長1人だけで全体で5名以下の事務所が大半を占めます。所長税理士が高齢になっている場合、所長がやめることを決めたときは事務所を閉じるときなのです。
後継者が育っていない会計事務所ではクライアントを手放せないという理由もあるため、廃業するわけにもいかず、所長税理士ができる限り継続していくことが必要となってしまっている状況です。
今後このような状況が続くことが予想されますが、永遠とこの状況は続きませんので、どこかのタイミングでは後継者不足により閉業する税理士事務所が増加することが予想されています。
税理士法人が増加している理由
税理士法人が増えているのは、このような状況にならないように個人事務所が統合することで継続性をもたせたり、個人事務所の業務量はどうしても限られてしまうため、展開を大きくしようとすると税理士法人を設立するという選択になるのです。
しかし、上記からも分かる通り、若手の税理士は増えず高齢化が進んでいる状況ですから、現在の会計業界は慢性的な人材不足となってしまっています。
税理士試験合格者の年齢傾向とは
次の図表2は、税理士試験合格者の学歴と年齢を示したものです。
図表2: 税理士試験合格者の学歴と年齢
出所: 国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果」
この図表2からわかるとおり、令和5年度の税理士試験において5科目合格を達成した年齢層で最も多い年齢層は、41歳以上が圧倒的多数となっています。しかも、実に60%程度が30歳以上で5科目合格を達成しており、25歳台での5科目到達社数はかなり少ないことが示されています。つまり、税理士として登録できる5科目到達者のほとんどが30歳以上であるということです。したがって、税理士として登録できる多くの人は30歳以上であり、20歳台は珍しいということがいえるでしょう。
税理士試験は3000時間とも4000時間とも言われる勉強時間を必要とする超難関国家資格ですから20代前半で取得することは容易ではありません。
しかし、近年は下がり続けていた20代の税理士試験受験者数が、上昇に転じていることから、税理士への関心が広がってきていることが伺えます。これは税理士業界全体でも明るいニュースだと言えるのではないでしょうか。
経験値の高い50代税理士のニーズはあるのか?
そもそも税理士として登録できるようになる年齢は30歳以上であるのが普通であることがここまでの説明から理解いただけたと思います。したがって、一人前の税理士といて独り立ちできるのはもっと年齢が上がってからであることがわかります。
税理士の高齢化が進んでいる理由はここにあります。すなわち、そもそも試験制度上、税理士として登録できるようになるのが遅いのです。税理士試験は、積み上げ方式なので、何年掛けても5科目合格すれば税理士になれます。
しかも、一人前の税理士として活躍できるまでに経験を積むとなると、合格後、数年の期間を要しますから、さらに税理士の年齢は高齢化することになります。
そのため、経験値の高い50代税理士は、即戦力として活躍できる人材として、会計業界においては重宝されるでしょう。むしろ、若い税理士を雇用するよりも、経験面で優れている50代の税理士を雇用した方が、会社にとってはプラスに働くケースも少なくありません。
会計業界では資格や年齢よりも実務経験があればOKという業界であることは間違いありません。
税理士の転職も若い人が好まれるのか?
ここまで説明してきたように、税理士は高齢化がかなり進んでいますし、経験値の高い50代の税理士の方が若い税理士よりも即戦力で活躍できる分、会計業界では重宝される傾向にあります。
ただし、若いから不利になるというわけでもありません。むしろ、会計業界において求められているのは、一人でも十分に税理士業務を遂行できるだけの「実績・経験」「スキル」「コミュニケーション力(人柄)」などの実務に関する能力なのです。だから、仮に若い税理士で50代の税理士よりもこれらの事項について優れている能力があれば、それは転職の際に大きなアドバンテージになると言えるでしょう。
税理士の転職に年齢は関係ない
こうしたことから、税理士の転職に年齢は関係ないと言えます。たしかに、現在の状況下においては、税理士の中でも40代は若手の部類に入るでしょう。若い人材が非常に求められていますが、それに反して若い世代の受験者数は年々低下傾向にあることから、若い人材の税理士はそれほど多いわけではありません。
また、税理士の高齢化が進んでいる一方で、税理士の顧問先・関与先などは代替わりなどで若い経営者が増えています。つまり、需要に対して供給が全く追いついていないという現実があるのです。
したがって、税理士として転職するうえで重要になるのは、結局のところ年齢ではなく、「実績・経験」「スキル」「コミュニケーション力(人柄)」といった実務に関する能力なのです。ある意味で、税理士は、実務経験があるのとないのでは、転職に際して雲泥の差があると言えるでしょう。
税理士は、年齢ではなく、実務に関する能力が高ければ高いほど高く評価されることになります。
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転職で年収アップは可能なのか?
それでは、税理士の転職で年収アップは可能なのでしょうか?結論から言えば、たとえ50代の税理士だろうが、40代の税理士であろうが、転職によって年収をアップすることは可能です。なぜなら、会計業界においては、実務経験に大きく比重が偏っているからです。
どんなに高度な税務知識を身に着けていても、それを実際に実務の現場において活かせなければ意味がありません。したがって、転職で年収をアップするためには、自身の高度な知識を実務経験に落とし込めるかどうかにかかっているのです。年齢は関係ありません。
また、会計事務所は常に即戦力として活躍してくれる税理士を求めています。また、どのようなスキル、経験を求めているかは会計業界専門の転職サイトを利用すれば、大凡の概要は記載されていますし、より深く知りたいということであれば会計業界専門の転職エージェントを活用されることをお勧めいたします。
重要なのは、年齢ではなくこれまで培ってきた経験や実績なのです。あなたが誇れるほどの経験を積んでいるのであれば年収アップしての転職はそう難しいことではないでしょう。
また、税理士の年収について年齢別や働き方別に、更に詳しく知りたい場合は「税理士の年収の実態とは?20代・30代・40代の年齢別や働き方別に解説!」にて解説しています。
50代税理士が転職する際のポイントとは
50代の税理士が転職する際には、自分がこれまでどのような業務経験があるのかを明確にすることです。
記帳業務などについては、若い税理士でも行うことができますから、これまでの経験でどれだけ難しい、あるいは業界特有の税務処理が求められるような経験を積んできたをアピールすることができると、転職の際には有利に働くでしょう。逆に言えば、50代の税理士であっても、実務経験があまりないということになると、転職は難しくなる可能性が高いです。
これに加えて、記帳業務のような仕事内容はAI、あるいはITによって代替される可能性の高い作業だと言われています。そのような業務内容いくら経験してもどんなにアピールしても、転職の際に有利になることはありません。
むしろ、いくらAI化、IT活用をして業務効率化を図ったとしても、置き換えられない業務をアピールできるだけの能力があることが大切です。たとえば、経営コンサルティングやアドバイザリー業務については、その経験がものを言いますから、50歳代の税理士でそのような経験を重ねている場合には、積極的にアピールすると転職も有利に働く可能性が高いです。
また、求人サイトから50代税理士という条件をクリアしている求人を探すのも1つの方法であはありますが、会計業界に絞って転職活動をされる場合には会計業界専門の転職サイトを利用すると効率的に進められるでしょう。
大手総合転職サイトですと、会計業界の求人に絞って検索すると求人数があまり多くないことに気が付きます。また、スキル条件や資格など業界専門転職サイトのほうが業界特有の項目や、条件検索もできますので、無駄なく求人を探すことができるでしょう。
それでもご自身のご経歴を上手く活かして転職活動できるか悩んでいらっしゃるのであれば、会計業界専門の転職エージェントを活用されることもいいでしょう。
会計業界に特化した転職エージェントは、会計業界の転職市場にも精通していますし、常に会計事務所の情報を収集し、実際に税理士や公認会計士とも
税理士が活躍できる求人をご紹介!
会計事務所の転職は年齢よりも重要なものがある!
本記事の結論として、一般的な事業会社と違い、会計業界において、税理士の転職には「年齢に関係なく転職は可能」であるということです。
雇用しようと考えている会計事務所、税理士法人が重要視しているのは年齢よりも、「実績・経験」「スキル」「コミュニケーション力(人柄)」などの実務に関する能力を見ています。
そのため、年齢が高くなるにつれ、即戦力としての知識や経験を求められるでしょう。
一般企業では30代ともなると、中堅と見られる場合が多いですが、会計業界、税理士は30代であってもまだまだ若手として扱われる業界です。前述でもお伝えしたとおり、税理士登録する年齢層が高くなっているため、30代であっても税理士としての実務経験は浅い場合が多いのです。
近年の会計業界は業務が大幅に増えていて、人手不足が深刻化しているという話をよく耳にします。いくらAI化、IT活用をして業務効率化を図ったとしても、置き換えられない業務も多く、経験豊富な人材は常に採用ニーズが高いのです。
逆に言えば、20代で税理士となった方であっても経験を積んでいれば、同様に評価される業界でもあります。年齢を重ねたことにより、経験や実績も積み重なれているだろうと思われますので、年齢が高いほうが求められている能力も高くなる傾向となります。
また、税理士資格を40代後半で取得し実務経験を積み50歳で税理士登録をしたが、経験は非常に浅いという場合には、やはり相応の評価をされてしまいますので、注意が必要です。特に、税理士の資格は取得したが会計事務所での実務経験は無いという人は、会計業界では未経験者として扱われるのが一般的です。
その場合は即戦力を求めているような事務所からは敬遠されてしまいがちです。しかし、超難関の税理士試験を突破したというこれまでの知識力や、長年勉強をしてきた姿勢などは評価されますので、条件にあった求人を見つける事が重要となります。
会計業界、税理士の転職は、なによりも実力で決まるとうことを忘れないでください。年功序列などでは決まることはありません、これまでの貴方の経験、実績が評価れることを理解しておくことが大切なのです。
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