先行き不安?コロナ禍で公認会計士のキャリア形成は進められるか?
2023/11/01
新型コロナウイルス感染症が広がり続ける中で、マスコミは企業の業績悪化やリストラを伝えています。そういった状況において、監査法人にリーマンショック時の衝撃が再来するのではと危機感を感じる公認会計士が少なくなかったようです。
クライアント企業の業績悪化が監査法人の業務の受注や売上に与える影響は大きいため、コロナショックがうたわれた際には、リストラの懸念も噂されました。
イギリスでワクチン接種が始まっていますが、今後の景気はまだまだ読みにくいところです。こうした安定の感じにくい中、公認会計士としてはどのような考えでキャリアプランを進めていけば良いのでしょうか。
今回は、コロナ禍における公認会計士のキャリア形成について説明します。是非、ご参考にしてください。
コンテンツ目次
1.リーマンショック時代には大手監査法人でも公認会計士のリストラがあった
公認会計士試験合格者の採用に関しては、リーマンショックの翌年にあたる2009年は買い手市場、その後の2010・2011年は完全な買い手市場でした。その結果として、2009年の論文式試験の合格者が就職困難に陥っています。
買い手市場となった理由としては、公認会計士試験に見直しが入り、難易度が下げられて合格者が急増したタイミングで、大手監査法人が合格者の採用人数を絞ったことです。そのため、2009年は公認会計士試験合格者の3分の2しか大手監査法人の枠がありませんでした。
翌2010年については、大手監査法人の公認会計士試験合格者の採用枠は更に狭まり、合格者の3分の1程度しか大手監査法人に入れないという厳しい状況に陥りました。
そして、2009年~2011年が買い手市場だっただけはではなく、公認会計士試験合格者の主な就職先であったBIG4監査法人は、リーマンショック時代にリストラも敢行しています。今回はコロナショックと呼ばれるほどの衝撃となってしまったため、同様に人手を抱えきれないのではないかと懸念が現れたと思われます。(現在のところ杞憂に終わっているようです)
2.士業は他業種に比べて基本的に不況に強いと言われている
税務や会計監査業務については倒産・解散・上場廃止などが無い限り、一定の業務は残ります。そのため事務所・法人の仕事が完全になくなるという事態に陥るケースは想定しにくいです。ただし、クライアント企業の業績によって監査法人の業務の受注・報酬には増減が発生します。
新型コロナウイルス感染症の影響はリーマンショックより長く続く可能性が懸念されているため、その事務所・法人が主に受注している業務の種類によっては、大きな影響を受けると考えられます。例えば、好景気の時期にはIPOなどが活発になります。一方、経済が悪化すると経営再建のためのデューデリジェンス需要が増加します。
そのため、新型コロナウイルス感染症による不況の影響を受けやすい事務所・法人と影響の小さい事務所・法人があります。
一方、試験の受験希望者の観点から考えると、通信教育の資格講座などは巣ごもり需要時に応募が増えたと言われており、大手予備校では1.4倍になったという話も聞こえてきます。
空き時間での資格取得が注目される中、特に法律や会計基準に関わる仕事は、安定性が高いと考える人は少なくありません。そのため、今後業界を志望する人が増えて採用枠の競争が激しくなる可能性が考えられます。
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3.コロナ禍における会計業界の求人は低下傾向
コロナ禍において、会計業界の新規求人数は全体で2割程度落ちました。そういった意味では、会計業界の求人数の落ち込みは他の業界と大きくは変りません。
2020年10月の一般職業紹介状況(職業別労働市場関係指標)によれば、新規求人が2割減り、求職者数は2割増え、有効求人倍率は0.55へ低下したと報告されています。就職件数も年度を通して全体的に低下していますが、例年からの減少として会計業界が特段悪いという状況ではありません。
そんな中でも未経験採用は募集枠が特に狭まっており、競争率が上がったり早期に締め切られたりしているという状況です。
理由としては、外出自粛要請によるテレワークになった場合に多人数の教育が難しくなること、未経験者は採算が取れるようになるまでに期間がかかることなどが挙げられます。
また、コロナ禍における経済悪化の影響がどれほど続くか読めない点も採用に慎重な姿勢となる大きな理由です。
一方で、経験者採用については人手不足解消を期待する事務所・法人があるため、需要はまだまだ高いです。ただし、即戦力としての期待が強いため、業務未経験の分野を希望する場合は、採用ハードルが例年より高めになっています。
4.公認会計士は様々な分野へ転職していくものと考えられている
元々、大手監査法人・中小監査法人・コンサルティングファームでは、業務内容や風土・体質が大きく異なり、ある程度の経験を積んだ公認会計士が他の分野へ転職をするというケースは少なくありませんでした。
例年はやりたい仕事のために経験者が転職していくという流れでしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、世間一般に習って退職せずに悪条件の業務でも耐えるという公認会計士が多く、会計業界でも経験者の人材募集が進んでいない状況です。
会計監査は元々大手企業や、大手企業ではないけれど法律で会計監査を求められている法人など、ある程度クライアントの幅が定まっている業務です。
一方、税務は国内の大半数を占める中小企業や個人事業主などを対象にするケースも少なくないため、クライアントの幅が非常に広く、業種や規模といった面で様々な経験を積むことができます。
特に昨今では、公認会計士が税理士登録をするケースが増えており、注目を集めています。税理士登録をすれば、税理士と公認会計士の両方の独占業務を行うことができ、会計事務所からの需要が高い人材になることができます。
将来独立開業を考えている場合は、その前に税務のさまざまな実務経験を積んでおきたいところです。
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5.コロナ禍でもキャリアアップのための転職なら進めておきたい
会計業界の転職は不況から回復すれば売り手市場に戻るとも言われていますが、今回のコロナショックについてはリーマンショックより長引くと予想されています。
また、会計業界の転職市場は景気の回復から多少動きが遅れることになりやすいため、売り手市場に戻ってから改めて転職の準備を始めると、キャリア形成に遅れが出ることが予想されます。
不本意な転職を是とするわけではないですが、ここで良いチャンスがあるにも関わらず踏みとどまった場合と、早めにキャリアアップのために動いた場合では、差が大きくついてしまう可能性があります。
将来のキャリアプランのためには停滞を避けるべきですので、コロナ禍だからといって最初から転職という選択肢を消してしまうのは勿体ないと思われます。こんな時期ではありますが、特に経験者採用についてはニーズがはきちんと存在していますので、キャリアアップのために転職が必要と判断されたのであれば、十二分に検討してみるようにしてはいかがでしょうか。
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投稿者情報
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その一環として、会計業界でお役に立つ情報をお届けするために10年以上記事を書いています。是非、会計業界で働く人が楽しく、知識を得られるような情報をお伝えできればと思います。
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