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零細企業の定義とは

零細企業と中小企業に違いはあるのか?会計事務所で働くなら知らないと損!

2023/10/27

 零細企業、中小企業というような企業規模を表す言葉を目にすることも多いですが、具体的に何が違うのか説明できない人も多いのではないでしょうか。

そもそも零細企業とは中小企業の中でも、特に小さい規模の企業のことを指していますが何が違うのかご存知ですか?

実は中小企業については、中小企業庁で明確に定義がされていますが、大企業、零細企業については明確な定義がありません。しかし、皆さん言葉として、メディアなどでは頻繁に目にしているのではないでしょうか。

 会計業界で働きたいと考えている方は知っておいたほうがいいのですが、会計事務所のほとんどは中小零細企業にあてはまります。零細企業であっても優良な企業は数多くあり、メリットもたくさんあります。会計業界で働こうと考えているのであれば零細企業について知っておくことは必須だと言えるでしょう。

 では、零細企業は小規模だから課題も多くて、年収も上げることは難しいのではと考えてしまいがちですが、実際にはどうなんでしょうか。この記事では零細企業がどのような規模の企業をさしているのか、他にどのような規模の企業があるのかなど、零細企業にスポットをあてて詳しく解説します。

零細企業とは

 零細企業とは、中小企業のうち、とくに小規模な企業のことを言います。

真っ先に思い浮かぶのは社員数名の零細企業の町工場で頑張ってる企業だが、特別な技術をもっており、実はその工場でしか製造することが困難な仕事をしているといったようなニュースなどを目にしたことがあるのではないでしょうか。
そういった職人のような仕事をしている小規模企業や、街のパン屋さんや八百屋さんなどの自営で法人化しているような小規模な企業を零細企業とイメージすることが多いと思います。

ただし、零細企業について明確な定義があるわけではありません。

零細企業という言葉は、あくまでも以下で説明する大企業・中小企業と比較した場合に、相対的に、資本力(資本金の額)が小さく、従業員の数も少ない企業という程度の意味しかありません。

以下では、零細企業と比較して、大企業・中小企業では何が違うのかを明らかにしていきましょう。

企業規模の分類

企業規模別の解説

 企業の規模を分類する考え方には様々なものがあります。たとえば、資本金額に注目して分類するケースもあれば、従業員数に注目して分類するケースなど様々です。資本金額と従業員数の両方を組み合わせて企業を分類しているケースもあります。

 一般に、企業を分類する際に、企業の規模として何を考えるかによって、その定義は異なります。売上高が大きい企業を企業規模の大きい企業と考えることもできますし、取引先の多い企業を大きい企業と考えることもできるかもしれません。

 このように、企業規模によって企業を分類するのは大変難しく、通常、補助金や助成金を支給するなどの際に、法律の対象となる企業を企業規模で明確にしなければならないときにのみ、企業規模を一定の要件を使って定義することが多いです。

 以下では、法律との関係で企業を分類すると、大企業・中小企業・零細企業がどのように定義されるのかについて解説していきましょう。

大企業

 会社法では、資本金の額と負債の額に注目して、以下の要件に合致する企業を大企業(大会社)として分類しています。

イ.最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
ロ.最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること

 会社法は、会社の設立や運営のルールについて規定した法律です。大企業(大会社)については、大会社は資本や負債が多額であることから、投資家保護や債権者保護の観点から計算書類の適正や情報開示に関して規制する必要があります。そのため、一定の要件を会社法として定めることによって、この要件に該当する企業については法律の規制対象となることが明確に定められているのです。このように、法律との関係で必要である場合にのみ、大企業(大会社)の定義は意味を持ちます。

 会社法は、このように大企業(大会社)を定義していますが、公認会計士法第24条の2において定められている「大会社等」と、この定義は異なっています。また、税法上の「大規模法人」(資本金1億円超)ともこの定義は異なっています。

 繰り返すように、企業規模の分類は、法律との関係で必要がある場合にのみ定義されているものです。したがって、公認会計士法においては公認会計士法が定める要件を満たしたものを「大企業等」、税法においては、税法が定める要件を満たしたものを「大規模法人」と呼んでいるのです。

中小企業

 大企業と同じように、中小企業の定義も法律との関係によって定められています。たとえば、中小企業法では、中小企業の要件を次の表のように定めています。

中小企業者の定義

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

 なお、中小企業基本法上においては「中小企業の定義」を定めているわけではなく、あくまでも「中小企業者の範囲」を定めている点には留意が必要です。

 中小企業の(範囲)の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なることがあります。

 たとえば、上記の定義上は中小企業に該当する場合でも、多くの補助金制度・助成金制度において、大企業と密接な関係を有する企業は「みなし大企業」とされて制度対象から外れます。ほかにも、法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲は、資本1億円以下の企業が対象となっているなど、ここでも分類方法が法律によって異なっていることがわかります。

 あくまでも、中小企業政策における政策対象の範囲として上記のような定義があるだけで、それ以外の文脈で中小企業が議論されるときには、上記の定義と一致しないケースも当然あることは覚えておくと良いでしょう。

中小企業という言葉の定義はあくまでも便宜的なもので、一義的に決められるものではないのです。

零細企業(小規模企業)

 零細企業とは、中小企業基本法では「小規模企業」として定義されています。ここでも、中小企業基本法との関係で零細企業(小規模企業)が定義されていることに注意しましょう。小規模企業の(範囲)の定義は以下のように定められています。

小規模企業者の定義

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 従業員20人以下
商業・サービス業 従業員 5人以下

 
 大企業や中小企業と同様に、零細企業の定義も法律との関係で変化します。たとえば、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)、中小企業信用保険法、小規模企業共済法の3法においては、政令により宿泊業及び娯楽業を営む従業員20人以下の事業者を小規模企業として定義しています。なお、中小企業基本法においては「小規模企業」ではなく「小規模企業者」と規定されている点には留意してください。

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上場企業と非上場企業の違い

 ここで上場企業と非上場企業の違いについても触れておきましょう。上場とは、証券取引所で有価証券の売買を可能にすることを言います。具体的には、各証券取引所が定めている上場審査基準を満たした会社が発行する証券が、取引所での流通を許されることです。つまり、証券取引所において、有価証券を売買することができるようになっているということです。このように、上場企業とは、証券取引所において有価証券の売買が可能となっている企業のことを言います。

2022年04月現在、3,825社の会社が上場を果たしています。一方、非上場企業とは、上場していない企業ですから、証券取引所で有価証券が売買可能でない会社のことを言います。

零細企業とベンチャー企業の違い

 零細企業とベンチャー企業は非常に似通った言葉ですが、零細企業は、大企業、中小企業と比較して相対的に企業規模が小さい企業として分類するときに使用される言葉であるのに対して、ベンチャー企業とは、企業のライフサイクル(導入期→成長期→成熟期→衰退期)を用いて企業を分類するときに使用される言葉で、事業を開始したばかりの企業のことを意味します。つまり、零細企業とは企業規模に注目した場合の分類の仕方であり、ベンチャー企業とは、企業のライフサイクルに注目した場合の分類の仕方なのです。

零細企業に就職・転職するメリット

 零細企業に就職・転職する最大のメリットは、企業規模が小さいことから、事業活動の全体像が見えるということです。企業規模が大きくなるほど、会社は組織化され分業が進んでいきます。大企業では、営業部・企画部・経理部など部署・部門が分かれていますが、これは仕事の分業が進んでいった結果です。

企業規模が大きいことから、分業しなければ仕事の量が多すぎて手が回らなくなってしまいます。分業が進んでいる分、他の部署・部門でどのような仕事をしているかがわかりません。一方で、零細企業であれば、分業が進んでいないことから、部署・部門が分かれていないケースがほとんどです。したがって、零細企業の方が、仕事の全体像を把握しやすく、事業活動全体が見えるのです。

零細企業に就職・転職すれば、事業活動全体を見通しながら仕事を行っていくことになるので、良い意味で、多くの仕事を一度に経験できるというメリットがあります。

零細企業に就職・転職するデメリット

 零細企業に就職・転職する最大のデメリットは、企業規模が小さいことから、資本力が弱く、会社が無くなる(倒産する)可能性と常に隣り合わせにあるということです。会社がなくなってしまえば、職を失うことになります。資本力が弱いということは、会社として十分な投資ができないということです。

会社は収益性を向上させるために投資を行いますが、物的資本に対して投資することはもちろん、人的資本に対しても投資をしなければなりません。つまり、従業員に対しても投資をする必要があるのです。具体的には、研修や教育の機会を提供して従業員の成長を促す必要があります。しかし、零細企業ではそのような投資をするだけの十分な資本力がないため、そうした機会に恵まれない可能性が高くなります。

零細企業が向いている人とは?

零細企業に向いている人

 零細企業が向いている人とは、近い将来、起業を考えている人であると言えるでしょう。零細企業に勤めていれば、会社全体の事業活動が見え、会社経営とはどのようなものかを理解することができます。起業する予定の業界と勤めている業界が同じであれば、企業に勤めていた経験やノウハウを自分が起業する際に活かすことができるでしょう。

零細企業に就職・転職するときに注意するべきこと

 零細企業に就職・転職するとき、特に注意すべきは労働条件です。零細企業は資本力が少ないこともあり、人に投資ができないこともあることはすでに説明したとおりです。結果として、従業員にとって十分な福利厚生制度が整備されていないことも多くなります。賞与やボーナスなども、大きな資本力を持つ大企業と比べると十分とは言えない可能性が高いです。自分だけが担当する業務があったり、複数の業務を1人で担当したりするケースも少なくないことから、十分な休みが取れない可能性もあるなど、注意が必要です。

零細企業の年収の実態とは?

 零細企業だからといって、必ず年収が低くなるとは限りません。平均年収はおよそ400万円前後であると考えられます。ただし、零細企業は経営者が報酬を決めているケースが多く、業績が良い場合に、賞与というかたちで事業活動の成果が直接的に還元される可能性もあります。零細企業であっても、順調に事業規模が拡大していけば、大きな報酬を手にできる可能性もあります。

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会計事務所のほとんどは中小零細企業

 会計事務所のほとんどは中小・零細企業に該当します。日本における4大監査法人であるEY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたといった会計事務所(会計監査法人)は、複数の会計事務所が合併などを繰り返すことで大きな成長を遂げました。しかし、それ以外の中小零細企業は、合併されずそのまま事業を展開しています。

監査法人が主に上場企業に対する監査業務を引き受けているのに対して、中小・零細企業としての会計事務所は地方の有力企業や中小企業、零細企業の会計業務の支援や税申告の支援サービスなどによって売上を獲得しています。

まとめ

 ここまでの説明で、零細企業とはどのような企業規模なのかご理解いただけたかと思います。

以前、ドラマで一世風靡した「下町ロケット」や「半沢直樹」、「陸王」のように中小企業、零細企業にフォーカスがあたって、ハラハラする展開で成長していくといったドラマが流行した時期がありましたよね。
小さいものが努力して大きいものを倒すといった展開はスカッとしますし、日本人が好む流れなのでしょうか。

中小零細企業が秀でた技術やノウハウなどで頑張っている姿は勇気をもらえるような気持ちになります。
かといって、零細企業が良いのか、大企業が良くないのかといった結論にするのは早計だと言えるでしょう。

中小企業は明確な定義がされていますが、大企業、零細企業には明確な定義がありません。そのため、資本が小さく、従業員数も少なく、極めて小さい規模で営業している企業として理解しておけば間違いではないと言えるものの、厳密な正解であるとは言えません。なぜなら、零細企業には明確な定義が無いからです。

 会計事務所に就職、転職を考えている人は特に企業規模を把握しておくことが大切です。

会計事務所の大半は零細企業として位置づけられる規模ですので、零細企業で働くメリット、デメリットも理解したうえで就職・転職活動をすすめましょう。
また、中小零細規模の会計事務所の大きな悩みとして、経営者(代表税理士)の高齢化があります。士業には定年がありませんので、引き継いでくれる人がいない場合は経営者が引退とともに事務所も閉じなくてはならないといったことになってしまいます。

こうした課題にも触れることができるといった面でも零細企業で働くことは、多くの経験を得られる可能性があります。就職・転職を考える際に、企業規模で決めることは避けたほうが良いでしょう。大企業、中小企業、零細企業といった企業の規模を問わず、自分が働きやすくて、貴方の働き方に最適な企業を探すことが何より大切です。

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