
税理士の独立開業は厳しい?業界事情や開業に失敗する原因、成功のポイントをご紹介
税理士の独立開業は、特定の法人や事務所に属する所属税理士に比べると自由度が高く、収入を上げやすいという点がメリットです。その一方で「税理士の独立開業は厳しい」「失敗しやすい」という意見を目にすることもあります。
メリットにばかり目を向けていると、いざ独立したときに後悔する可能性があるため、現状を踏まえて慎重に検討することが大切です。
本記事では、税理士の独立開業が厳しいといわれる背景や、開業に失敗する原因、独立開業を成功させるためのポイントなどを解説します。開業税理士を目指している方はぜひ参考にしてください。
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コンテンツ目次
税理士の独立開業の厳しい現状
「税理士の独立開業が難しい、厳しい」といわれる背景には、大きく分けて以下でご紹介する4つの要素があります。
競争の激化
2021年6月時点の日本の企業は、全体の99.7%が中小企業で占められています。その中小企業数は2014年時点では380.9万社でしたが、2016年には357.8万社、2021年には336.5万社と、右肩下がりです(※1)。
一方、税理士の登録者数は年々増加傾向にあり、2015年度には7万5,643人だったのが、2023年度では8万1,280人にも上っています(※2)。
税理士の数と顧客となる企業数が正反対の推移になっていることからも分かるように、近年は税理士の顧客獲得競争が激化しており、新規参入者がシェアを獲得するのは容易ではないでしょう。
※1 参考:中小企業庁.「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します」,(参照2025-03-25).
※2 参考:国税庁.「税理士制度」,(参照2025-03-25).
会計ソフトやツールの台頭
税理士の業務は、税理士だけが行える独占業務(税務書類の作成・税務代理・租税相談)と、これらの遂行に必要な領収書の整理や記帳代行、試算表の作成といった附随業務がメインです。
特に附随業務にはそれなりの手間と時間がかかるため、これまでは企業が税理士に一任するのが一般的でした。
しかし、近年では帳簿類をスキャンするだけでデータの取り込み・仕訳を行えたり、財務に関するデータを集計管理できたりする会計ソフト・ツールが広く普及し、専門家ではない方でも簡単に税務処理を行えるようになってきています。
中にはAIを搭載しており、決算書や申告書の自動作成ができるソフトもあり、煩雑だった税務処理の効率化が進んでいます。
こうした会計ソフト・ツールの普及が進んだ結果、記帳代行や申告書の作成代行を税理士に依頼する企業は少なくなるかもしれません。
顧問料の低下
税理士の主な収入源は、顧問契約を締結した顧客から支払われる顧問料です。
近年は先述した会計ソフト・ツールの台頭によって「税理士に頼むより会計ソフトを使って自社で対応した方が安い」と考える企業も存在するため、シェア獲得のために顧問料の値下げに踏み切る税理士が増えてきました。
特に新規参入したばかりの開業税理士は顧客が少ないケースが多く、薄利多売で経営していくことも難しいでしょう。
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厳しいだけじゃない?開業税理士の未来
税理士が独立開業して成功を収めるのは簡単なことではありませんが、必ずしも不可能なわけではありません。むしろ、税理士業界ならではの事情を踏まえると、独立開業することでさまざまなメリットを得られる可能性があります。
ここからは、税理士が独立開業する場合に期待できるメリットや未来について説明します。
市場規模の拡大
税理士事務所の売上金額は、2016年には約1兆744億円でしたが、2021年には約1兆3,771億円まで拡大しており、市場が成長していると考えられます(※1)(※2)。
税理士の主な顧客となる中小企業は減少傾向にありますが、税務業務が将来にわたってなくなることはないため、今後も成長の余地があるといえるでしょう。
※1 参考:e-Stat.「経済センサス‐活動調査 平成28年経済センサス‐活動調査 事業所に関する集計 産業別集計 サービス関連産業Bに関する集計」,(参照2025-03-25).
※2 参考:e-Stat.「経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 事業所に関する集計 産業別集計 サービス関連産業に関する集計」,(参照2025-03-25).
若手税理士の活躍への期待
税理士には定年が存在しないため、心身が健康であればいつまでも働き続けられる職業とされています。そういった特徴もあり、税理士は他の業種に比べて年齢層が非常に高く、60歳代以上が全体の半数以上を占めています。一方、30代以下の若手税理士は全体の1割程度です
現在活躍しているベテラン勢が一線を退いた場合、現在は飽和状態にある税理士の人手が不足する可能性もゼロではありません。
以上の点から、今後の税理士業界では若手税理士のニーズが高まる可能性があります。
※参考:日本税理士会連合会.「データで見る税理士のリアル。」 ,(参照2025-03-25).
税理士は高年収
独立開業した税理士の年収は事業規模などによって大きく異なるため、一概にいくらと断言することはできません。
厚生労働省が公開している「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の法人や事業所に属する公認会計士および税理士の年収は約856万円(決まって支給する現金給与額+年間賞与その他特別給与額)です(※1)。
同調査における一般労働者の賃金は約330万円であることから、税理士の年収は平均よりかなり高い傾向にあります(※2)。開業税理士として成功した場合は、所属税理士よりも年収がかなり高くなる可能性もあります。開業税理士の現状は厳しいと説明しましたが、経営が軌道に乗れば高収入も夢ではなく、非常にやりがいの職業といえるでしょう。
ただし、開業した全ての税理士が成功を収められるわけではありません。
先述した通り、税理士業界は競争の激化や会計ソフトの台頭などにより、経営を軌道に乗せるまでのハードルが高くなっています。無策のまま開業しても失敗する可能性が高いため、安易に「独立開業=高収入」と考えず、慎重に検討・準備を行うことが大切です。
※1 参考:e-Stat.「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 ,(参照2025-03-25).
※2 参考:e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 賃金の推移」P1,(参照2025-03-25).
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税理士が独立開業で失敗する原因
税理士が独立開業で失敗する原因は複数あります。よくある失敗例を基に、事前に対策を講じておけば、独立開業のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
ここからは、税理士が独立開業に失敗する原因を7つご紹介します。
営業力、集客力の不足
かつて大きな税理士事務所で働いていた人でも、独立後は自分で新しい顧問先を見つけなければなりません。大手税理士事務所に所属している税理士の仕事は、既存の顧客対応がメインです。そのため、新規顧客を獲得するための営業経験がないまま独立開業をする税理士もいます。
先述した通り、税理士業界は競争が激化しているため、営業スキルのないまま独立開業しても新規顧客を開拓できず、経営が立ち行かなくなるケースが多いようです。
顧問料の設定ミス
顧問料を低く設定して顧客を獲得するのは、有効な集客方法の一つです。しかし、顧問料をあまりにも低く設定してしまうと一社当たりの収益が減ってしまい、経営難に陥ってしまう可能性があります。
収益を増やすには、顧問料を下げた分を補うくらいの仕事をこなさなければなりません。キャパシティを超えた依頼を引き受けるとサービスの質が落ちてしまい、顧客離れなどを招くリスクがあります。
開業予定地の市場調査不足
現代ではインターネットの普及やオンライン化が進んでいますが、税理士業界では依然として近隣の税理士事務所に業務を依頼することが多いです。
独立開業において事務所の立地選定は非常に重要であり、適切な市場調査を怠るとうまく顧客を確保できず、集客に悩まされる原因となります。
特に、周辺にターゲットとなる顧客層がどのくらいいるのか、競合他社はどれだけ存在するのかなどのリサーチが不十分だと失敗する可能性が高くなります。
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業務上のミスによる損害賠償トラブル
税理士とクライアントは法的には委任契約で結ばれており、ミスをした場合、委任契約に基づいて損害賠償責任が発生する可能性があります。
損害賠償のためには、税理士職業賠償責任保険がありますが、無申告加算税や延滞税などは保険の対象外であることが多いです。
保険だけに頼っていると、いざというときに補償を受けられず、多額の賠償金によって破産や倒産に追い込まれる可能性もゼロではありません。
運転資金の不足
税理士として独立開業するには、事務所の敷金や前家賃、事務機器や事務用品の代金、広告宣伝費、税理士会入会費など、多くの資金が必要です。
さらに開業後は、家賃やスタッフの人件費、水道光熱費、通信費などの固定費に加え、消耗品費や交通費などの経費を毎月支払わなければなりません。
一方で、独立開業してすぐに十分な収益を得られるとは限らず、当初は資金繰りに苦労することも考えられます。
このような事態を想定せず、開業資金のみの準備が整った段階で独立してしまうと運転資金が不足して経営難に陥る可能性があるのです。
人間関係によるトラブル
事務所内の人間関係が悪化することで、事務所が内部から壊れていくケースもあります。特に個人事務所や小規模事務所では、大規模事務所と比べて待遇面で不満が生まれやすいといわれています。
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務の進行に悪影響を及ぼすだけでなく、時には業務の妨げになることもあるようです。
そのため、人間関係には常に注意を払う必要があります。
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独立開業を成功させるための2つのポイント
税理士の独立開業を成功させるために、押さえておきたいポイントを2つご紹介します。
ターゲットとする顧客を明確にする
マーケティング戦略を成功させるために、どの層に焦点を当てるかを明確にしましょう。
税理士に求められることは、ターゲット層によって大きく変動します。そのためターゲットごとに適したアプローチ方法を考えなければなりません。
例えば、以下のようにアプローチ方法を変更することが大切です。
●事業立ち上げを考えている企業をターゲットにするなら、融資や補助金、助成金に関する知識が豊富な点をアピールする
●個人事業主をターゲットに設定するなら、スポット契約にも対応できることをアプローチする
どの層をターゲットにするかは、自身の強みや経営方針などに基づいて選定することが大切です。
効果的なマーケティング戦略を立てる
独立開業した税理士の集客方法は複数ありますが、競争が激化している今、前職で担当していた顧客の引き継ぎや既存顧客からの紹介のみを頼りにしていては十分な顧客を集め切れないかもしれません。
特に現代、新規顧客を獲得するにはホームページやブログ、SNSなどの活用は不可欠とされているため、開業前に下準備を整えておきましょう。
ホームページやブログは無料でも開設できますが、インターネットの検索結果で上位に表示されるためにはさまざまな工夫が必要です。プロの力を借りることも検討することも検討に入れましょう。
また、どの媒体を利用する場合でも重要なのは、継続して更新することです。小まめにコンテンツの更新や情報の発信を行っていれば、検索結果でも上位に表示される可能性が高まります。
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税理士が独立に失敗したときの対処法
税理士の独立開業は簡単なことではないため、どれだけ準備を重ねても失敗するリスクはゼロになりません。もしも経営に失敗してしまった場合は、赤字や負債が拡大する前に、新たなキャリアプランを検討することも大切です。
例えば、所属税理士として再就職する、一般事業者の経理・財務部門やコンサルティングファームに転職するなどが挙げられます。
また、再就職先や転職先でスキルアップを図ったり、十分な資金を確保したりした後、再度独立開業を目指すという方法もあります。
税理士には定年がないため、さまざまなキャリアパスを経てから再び開業しても遅くはないでしょう。
まとめ:税理士業界の現状や成功のポイントを押さえて独立開業しよう
税理士業界は、顧客獲得競争が激化していることや、会計ソフト・ツールの台頭などにより「独立開業することは厳しい」といわれることがあります。しかし、市場規模の拡大や若手税理士への期待などから、新規参入した場合でもビジネスチャンスをつかめる可能性は十分あります。
ただし、準備不足で開業すると失敗しやすいため、独立することのリスクを踏まえ、入念に準備を進めてから起業しましょう。
経営がうまくいかなかった場合は、所属税理士として再就職するか、一般事業所やコンサルティングファームへの転職を検討するのも一つの方法です。
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投稿者情報

- 現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しているかたわら、会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。
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