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会計事務所は残業なしがあり得るのか?

会計事務所の「残業なし」は実現可能なのか?繁忙期でも残業を減らせる秘訣とは

2023/12/13

昨今、働き方改革や36協定などというキーワードが一般的に使われるようになり「働き方」を重視する傾向が強くなってきています。

一部の企業では、ワーク(仕事)ライフ(私生活)バランスを大切にする働き方を取り入れており、自分自身でワークライフバランスを積極的にマネジメントする「ワークライフマネジメント」にも注目が集まっています。

一方、会計事務所業界を見てみると、確定申告時期など年に数回の繁忙期があり、その期間中はどうしても残業が多くなってしまい、業務負担が増加すると言われています。会計事務所で勤務する人の中には、税理士試験を受験する人も多く、残業が多くなってしまうと勉強時間が確保できないというジレンマもあります。

では、会計事務所で「ワークライフマネジメント」を実施し、残業なしの環境を実現させることは現実として可能なことでしょうか。

転職サイトの求人情報には「残業ゼロ」「残業なし」「繁忙期も残業20時間以内」といったように、これまでの会計業界の環境を払拭するような見出しやキャッチコピーが見受けられますが鵜呑みにしてしまってもいいのでしょうか。

そこで、現在の会計業界の働き方の実態についてご紹介します。

会計事務所で残業が発生する理由

会計事務所で残業が発生する理由には様々な理由があり、避けては通れない一面があると言われ続けています。
残業が発生する主な理由は次のようなものがあげられます。

時期的な要因

会計事務所は「季節労働者」と例えられるほど時期によっての業務量が異なります。クライアントの業種や形態によって多少異なりますが、一般的な会計事務所では年に3回の繁忙期があります。

時期 理由 忙しさ
2月~3月 個人事業主の確定申告 大変忙しい
5月~6月 3月決算法人(申告期限の延長の特例) 大変忙しい
12月 年末調整 忙しい

会計事務所は1年間のうち上半期に業務が集中します。個人事業主の確定申告は、通常3月15日までに確定申告を行わなければならないため、残業が多くなってしまうこともあります。会計事務所によってはスタッフの残業用の夜食を用意している事務所も少なくありません。

5月は3月決算法人の申告時期のため多忙になります。国内の法人の1/4は3月決算と言われており、特に規模の大きな法人が集中しています。中には申告期限の延長の特例を利用している法人もあるため、6月末まで忙しいこともあります。

12月は年末調整の時期です。ある程度規模の大きい法人は自社で年末調整を行いますが、小規模な法人や個人事業主などについては、年末調整を会計事務所に依頼するため忙しくなります。

このように会計事務所はクライアントの動向によって、どうしても業務が集中してしまう時期ができてしまい、残業が多くなると言われているのです。

外回りによる移動時間

多くの会計事務所では、特定の頻度(月1回~年1回)でクライアント先を訪問する「会計監査業務」があります。クライアント先までの距離が遠い場合は移動に係る時間が増加するため、日常業務の時間が取れずに残業しなければならないことがあります。特に、会計監査業務が集中してしまう時期は忙しさが増してしまいます。

スポットでの依頼が発生する

会計事務所は毎年決まったルーティーンだけではなく、スポットでの依頼が発生することもあります。クライアントやその親族が亡くなったことによる相続税申告書作成、M&Aや法人の解散、新規クライアントへの記帳指導などのスポットでの業務が発生すると業務量が増加するため残業が必要になる可能性があります。

このようなスポットの業務は発生時期を予測することできませんので、重なってしまったりするとどうしても業務量が増えてしまいます。

会計業界は人手不足

会計業界は慢性的な人手不足と言われています。人手不足により1人あたりの業務量が増加し、残業しなければならない状況になります。会計業界が人手不足に陥っている原因はいくつ考えられます。

会計業界志望者数の減少

クラウド会計ソフトやAIを利用した会計ソフトが開発されることにより「簿記の知識の必要性が低下」しています。会計ソフトに従って売上や経費を入力することで、簿記を知らない人でも月次試算表を作成することが可能です。「テクノロジーの進化により、会計業界自体が衰退してしまうのではないか」という不安が影響し、会計業界志望者数が減少しています。

将来、AIの進化により公認会計士や税理士は無くなる仕事だというレポートが発表されています。特に入力や仕分けのような作業はAIが学習することにより、自動で対応できるようになる日はそう遠くないでしょう。
しかし、実際には公認会計士や税理士の仕事は無くなることはないというのが大筋の見解です。なぜなら、昨今の会計事務所はAIが代替することができないコンサルティングなどの業務にも力をいれており、業務範囲も変革しつつあるからです。

税理士登録者が増加している

会計業界志望者数が減少していることに反比例して、税理士登録者の人数は増加しています。税理士登録者のほとんどが開業税理士であるため、減少している会計業界志望者を取り合う状況が起きてしまうことが人手不足の原因の1つになります。

さらに言えば、日本の法人数は減少傾向にあります。会計事務所のクライアントの総数が減少しているのに、税理士登録者は増えているという状況なこともあり、人材だけではなくクライアントの獲得競争が激化することが既に始まっています。

このことからも小規模、中堅の会計事務所は経験者の中途採用が困難を極めており、会計事務所によっては未経験者層に目を向けて素養があれば、育てていくことを前提に採用を強めています。

給料水準が低い

会計事務所職員の給料水準は他の業種と比べて決して高いものではありません。会計事務所勤務を経験した後に、他の業界に転職する人も増加しており、業界全体で人手が流出しています。

その背景には、クライアントとなる対象に顧問料を高く設定できないフリーランスや個人事業主が急増したことも影響していると思われます。
また、クライアント獲得競争に勝ち抜くため、一部の会計事務所では業務効率化を徹底し、顧問料を安く設定したりという価格競争が起こっています。



残業が多い会計事務所の特徴と残業が少ない会計事務所の特徴

残業が多い事務所、少ない事務所違いとは

「会計事務所に就職したいけど残業はしたくない」と考える人もいらっしゃいます。ワークライフバランスを大切にしたい人や税理士試験の勉強をしたい人、子育てや家庭の事情により残業ができない人など、人それぞれの考えや事情があるのではないでしょうか。

就職・転職してから「こんなに残業が多いとは思わなかった」と後悔しないように、ここでは残業が多い会計事務所の特徴と残業が少ない会計事務所の特徴を紹介します。

残業が多い会計事務所の特徴

残業が多い会計事務所に見られる特徴には次のような特徴が見られます。

IT活用、デジタル化が遅れている

会計業界は会計ソフトをはじめ、様々なところでIT活用が加速しています。会計業界の動向をキャッチアップせず、従来の方法で業務を行っている会計事務所は「業務の効率化」ができておらず、繁忙期には残業が多くなってしまうでしょう。

サービスと報酬のバランスが悪い

会計事務所はサービス業です。会計業務や付随する業務を行うことでクライアントから報酬をいただきます。会計事務所の中には昔からの報酬規程を改訂せずに利用している場合があります。

サービス提供にかかる労力に対して報酬がつり合っていない会計事務所は利益効率が悪く、利益を確保するために業務量が多くなり、必然的に残業が多くなってしまうという悪循環になってしまいます。

業務が属人化している

業務の属人化とは、特定の人しか業務を進め方が分からない状況になっていることです。業務が属人化していると、もしその業務を行っている人が退職してしまうと誰も業務の進め方が分からなくなってしまいます。その人が業務に携わっている時はいいですが、長期的にみると業務効率化低下し、残業に繋がる可能性があります。

また、業務が属人化していると、他の人がサポートに回ることも難しく、その人しかできない業務が積み重なって残業が増えてしまうということになってしまいます。

離職率が高い

離職率が高い会計事務所は労働環境に原因があることが考えられます。残業が多いため、その結果、ストレスを抱えてしまい体調に影響がでてしまったり、より良い環境を求めて転職をしてしまうなど、離職率が高くなっていると思われます。

離職率が高いと、退職した人の後任がいなければ、担当していた業務は残っているスタッフに分配されることになり、業務負担は増えてしまいますし、新任が入社しても教えなくてはならないといった状況になり、業務負荷が高くなってしまいます。

繁忙期でも残業が少ない会計事務所の特徴

会計事務所の中には、繁忙期であっても残業を極力少なくして、業務を終わらせることができる会計事務所もあります。残業の少ない会計事務所には次のような特徴があります。

経営者が業務効率を意識している

会計事務所にとって、スタッフが残業することで得られるメリットは一つもありません。残業代は通常の賃金より多く支払わなければなりませんし、スタッフの業務意欲の低下によるサービスの低下、離職に繋がる可能性など、デメリットばかりです。

残業の少ない会計事務所では、経営者である税理士がそのことを理解し、業務効率化を重要視しています。
働き方改革、36協定など、働き方の多様化が進む中、会計事務所でも多くの経営者が業務改革に乗り出していて、働く環境を良くすることで、スタッフが安心して働ける事務所にしようと奮闘しています。

働く環境を改善することで、離職率も下がり、経験者の採用にも好影響であることからもメリットばかりです。

IT化に取り組んでいる

次の項目で詳しく説明しますが、IT化に積極的に取り組んでいる会計事務所は業務のムダを取り除くため時間のかかりやすい作業が軽減され残業が少なくなります。

チーム制と役割分担ができている

スタッフでチームを作り、そのチームの中で担当や役割分担を決めることで業務の属人化を防いだり、効率的に業務を進めたりすることができます。例えば、担当を持つスタッフの他に、入力作業や資料整理を行うパートのアシスタントスタッフを雇用することで業務効率化が図れます。

多くのクライアントを抱える税理士法人などはこのようなチームでクライアントを担当し、1人に業務負荷がかからないようにしているのです。

昔からのクライアントが多い

昔からのクライアントが多い会計事務所は、クライアントとの強い信頼関係を築いている会計事務所だと考えられます。経営者と税理士だけではなく、担当者同士で十分な意思疎通ができることにより業務効率化が図れます。

クライアントとのコミュニケーションは非常に重要で、意思の疎通が取れていると依頼事項にも齟齬がなく円滑に進むでしょう。反対に意思の疎通がとりにくいと、やりとりだけで何往復もしなくてはいけないですし、要件が正確につたわってなければ作業が重複してしまったりするでしょう。


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業務のIT活用、デジタル化で残業の少ない会計事務所が増えている

IT活用で業務効率化を図る会計事務所とは

政府はデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を日本企業へ呼びかけていますが、会計業界も例外ではありません。目まぐるしく変化する技術の進化についていくことが会計業界の業務の効率になり、スタッフの残業時間の減少に繋がります。

これまでは会計事務所のIT化には多額の投資と運用費用が必要でしたが、現代ではパソコンとインターネット環境さえあれば手軽にIT化することが可能です。例えば、クラウド型の会計ソフトを導入し、銀行口座やクレジットカードを連携させることにより記帳作業を自動化することができます。また、クライアントのコミュニケーションツールを電話ではなくビジネスチャットツールやウェブ会議システムを利用することにより、移動時間を節約することが可能です。クラウド上で資料のやり取りも可能です。

会計ソフトを変えるということだけでも、非常に多くのメリットが有り、驚くほど業務改善も可能なのです。

手軽にできるIT活用によってもたらされる業務効率化により、残業の少ない会計事務所は増加しています。会計事務所に就職や転職を考えられている方は、希望する会計事務所の業務効率化やIT化について目を向けることで、残業の多寡を推測することができるのではないでしょうか。

残業時間の上限は45時間?上限を超えたらどうなるの?

まとめ

増加している残業ゼロを目指す会計事務所

働き方改革による働き方の多様化や電子帳簿保存法による証憑などのデジタル化など、社会的な法整備が進んでいます。会計業界では、IT化に対応していく会計事務所が増加しており、特に、若手の税理士が経営している税理士法人では、率先して社内環境の改善やIT活用を行い、残業ゼロを実現している事務所も数多くあります。

業務改善を積極的に行っている会計事務所は、経営の面では利益も最大化しますので「儲かっている」とも言えます。そのような将来性があって、安定した会計事務所は魅力的な勤務先ではないでしょうか。

会計業界では、以前のように「繁忙期に残業が増えてしまうのは当たり前」という常識は変わってきています。大切なのは会計事務所に就職・転職をしようと思っている人が、ワークライフバランスの充実した事務所で働けるかということです。まだまだ残業の多いブラックとも言えるような会計事務所も数多く残っていますので、いかにホワイトな会計事務所を見極めることが大切です。

周囲からの「残業が多い」という意見やメディアによる先入観にとらわれずに、求人情報を細かくチェックし、必要であれば実際に話しを聞きに行くなど、情報収取を怠らないようにすることが重要です。もし、どうやって探せばいいのかわからないという場合は、会計業界専門の転職エージェントに相談するのも有効な手段です。

会計業界専門の転職エージェントであれば、会計業界に精通していることはもちろん、常に多くの転職希望者と会計事務所の採用担当者とコミュニケーションをとっているので、最新の転職事情も把握しています。また、求人情報には記載されていないような情報も持っていることから、安心して相談することができるでしょう。

はっきりとわかっていることは、会計業界全体としてはIT活用、デジタル化など、様々なツールを活用し、これまでの悪習を払拭し、スタッフが働きやすい環境、成果に応じた報酬を得られる体制などを目指し、将来に渡り安定した職種、業種としていけるように努力している経営者が増えているということです。


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投稿者情報

税理士副業ライターSOU
税理士副業ライターSOU
現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しています。会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。

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