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インボイス制度の激変緩和措置とは?

インボイス制度の激変緩和措置とは?果たして朗報なのか詳しく解説

2023/11/01

令和5年(2023年)10月1日にインボイス制度が施行されることはご存知かと思います。

個人事業主やフリーランスは消費税の免税事業となる要件を満たす人が多いでしょう。しかし、インボイス制度は免税事業者にも大きな影響を与えると考えられる制度です。インボイス施行に備えて、さまざまな準備・対策の必要が出てきています。

近年ではフリーランスとして働く人が急増したことによって、フリーランスに特化した会計事務所も増えています。会計・税務を会計事務所に依頼することで、フリーランスの人が本業に専念できる点は大きなメリットです。

一方で、会計事務所に任せている状態のため、インボイス制度について理解しきれていない人も多いのではないでしょうか。

また、先日インボイス制度の激変緩和措置も設けられました。当初公表されていたインボイス制度の内容とは大きく異なるため、認識のアップデートが必要となります。

今回は大きく軽減されたインボイス制度の緩和措置を中心に解説します。

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インボイス制度とは?

はじめに、インボイス制度の概要を解説します。

インボイス制度は、消費税の仕入税額控除に関するルールです。インボイス制度の施行後、買い手側は原則として、仕入税額控除を受けられるのが適格請求書(インボイス)を保管している取引に限定されます。また、売り手はインボイスの発行および保管、買い手はインボイスの保管が必要です。

インボイス(適格請求書)は現行の請求書の記載内容に加え、取引ごとの適用税率および税率ごとの消費税額合計、そして適格請求書発行事業者の登録番号が記載されています。インボイスを発行できるのは適格請求書発行事業者のみであり、証拠として登録番号の記載が必要です。

適格請求書発行事業者として登録できるのは消費税の課税事業者のみです。すなわち免税事業者が発行する請求書は、仕入税額控除の要件を満たすことができません。

インボイス制度の導入後、買い手側は適格請求書発行事業者との取引を優先するようになると予想されます。結果として、インボイスを発行し得ない免税事業者は、取引量の減少・売上の下落といった大きな打撃を受ける恐れがあります。

参考:国税庁「インボイス制度の概要」

インボイス制度の激変緩和措置とは?

当初発表されたインボイス制度の内容では、免税事業者が発行した請求書に関する取引は、仕入税額控除を一切適用できない予定でした。そのため免税事業者は、消費税の課税事業者になり適格請求書発行事業者として登録するか、免税事業者のままでいるかの選択肢を迫られる状態だったのです。

前者はインボイスを発行できるようにはなるものの、消費税の納付義務により消費税分の負担が発生します。金銭面だけでなく、消費税に関する事務作業増大といった問題も大きいです。

後者はインボイスを発行できないため、取引量の減少という恐れがあります。

いずれにせよ、インボイス制度は免税事業者に大きな負担がかかる恐れのある制度です。

このような問題を解決する手段として、インボイス制度の負担軽減措置が発表されました。当初発表されたインボイス制度と大きく異なる内容であるため、インボイス制度の激変緩和措置とも呼ばれています。以降の文章でも、インボイス制度の激変緩和措置と表現します。

参考:財務省「令和5年度改正におけるインボイス制度の改正について」

小規模事業者向けの緩和措置

インボイス制度の導入を機に、免税事業者から消費税の課税事業者になった小規模事業者向けの緩和措置を2つ紹介します。

ひとつは、納税額が売上税額の2割になる措置です。

消費税の納付税額は原則として、以下いずれかの方法で計算します。

  • 課税売上にかかる税額から課税仕入にかかる税額を引く(原則課税)
  • 課税売上にかかる税額に業種ごとのみなし仕入率を乗じた金額を課税仕入にかかる税額として扱う(簡易課税)

インボイス制度の激変緩和措置によって、課税仕入にかかる実際の税額やみなし仕入率に関係なく、課税売上にかかる税額の2割のみの納付となります。納付税額が小さくなるため、消費税の納付によって発生する負担も押さえられるでしょう。

なお、対象となるのは令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む課税期間です。

もうひとつは、インボイスの登録によって持続化補助金が50万円上乗せになる措置です。

持続化補助金の補助上限額は50~200万円ですが、適格請求書発行事業者の登録をした小規模事業者は、補助上限額が100~250万円となります。

中小企業向けの緩和措置

中小企業向けの緩和措置も2つ用意されています。

ひとつは、IT導入補助金の下限が撤廃される措置です。IT導入補助金とは自社の課題やニーズ解決を目的としたITツールの導入にかかる経費の一部を補助する制度です。ソフトウェア購入費やクラウドサービスの利用料など、ITツール導入に関する幅広い経費が対象となります。

IT導入補助金には下限額が設定されており、少額の経費は補助対象になりませんでした。しかし緩和措置の導入により、IT導入補助金の下限撤廃となります。結果として、会計ソフトや事務系ソフトなどの安価なツールも補助対象にできます。

もうひとつは、1万円未満の取引はインボイスが不要になる措置です。

前述したとおり、インボイス制度の導入後は原則として仕入税額控除ができるのはインボイスを保管している取引のみとなります。しかし経過措置の導入により、1万円未満の課税仕入れはインボイスがなくても仕入税額控除が可能となります。

対象期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日です。

全ての人が対象の緩和措置

事業規模を問わず全ての人が対象の緩和措置も2つ用意されています。

ひとつは、1万円未満の返品・値引きへの返還インボイスが不要になる措置です。

当初の予定では値引きや返品に際して都度インボイスの発行が必要であり、事務作業の負担が大きくなる懸念がありました。このような課題を解決するため、1万円未満という少額のものに限りますが、返還インボイスの発行は不要になったのです。

もうひとつは、令和5年(2023年)4月以降でもインボイスの登録申請が可能という措置です。

当初の予定では、インボイス制度が開始される令和5年10月1日から適格請求書発行事業者としてインボイスを発行するためには、令和5年3月31日までに登録が必要でした。インボイス制度に向けて課税事業者になり適格請求書発行事業者の登録をしようと決めても、期限が過ぎているという事態が起こり得たのです。

インボイス制度の激変緩和措置により、令和5年3月31日までに登録が必要という要件がなくなりました。令和5年9月30日までに登録をすれば、インボイス制度の開始と同時に適格請求書発行事業者になることができます。

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免税事業者からの仕入れに対する措置

前述したように、インボイス制度の導入後は原則として、免税事業者からの仕入取引について仕入税額控除の適用を受けられません。しかし、それでは免税事業者が大きな損失を被る恐れがあります。

そこで、免税事業者からの仕入れに対する措置も追加されます。免税事業者からの仕入れについて、インボイス制度の導入後しばらくは一部を仕入税額として控除できるようになります。令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%の控除が可能です。

緩和措置の導入により、インボイス制度の開始後に免税事業者が受ける影響を抑える効果が期待できます。

課税事業者になり、簡易課税制度を選ぶとどうなる?

課税事業者になるべきか?

インボイス制度の導入により、免税事業者は消費税の課税事業者になりインボイス登録を行うか、免税事業者のままでいるかの選択を迫られています。

また、消費税の課税事業者になる場合、消費税の計算方法について原則課税と簡易課税どちらにするかの選択が必要です。

すでに触れたように、原則課税は課税売上にかかる税額から課税仕入にかかる税額を引いた額が納付税額となる方法です。

一方で簡易課税では、課税売上にかかる税額に業種ごとのみなし仕入率を乗じた金額を課税仕入にかかる税額として扱います。簡易課税方式において消費税の納付税額を求める計算式は以下の通りです。
売上税額-売上税額×みなし仕入率=納付税額

みなし仕入率は業種ごとに以下のように定められています。

  • 第一種事業(卸売業):90%
  • 第二種事業(小売業、飲食料品の譲渡に係る農業・林業・漁業):80%
  • 第三種事業(建設業、製造業、電気業、ガス業など):70%
  • 第四種事業(他の事業区分に該当しないもの):60%
  • 第五種事業(運輸通信業、金融業、保険業、サービス業):50%
  • 第六種事業(不動産業):40%

簡易課税制度は納付税額の計算に際して、実際の仕入税額を考慮する必要がありません。そのため消費税計算や事務処理などの簡略化ができます。

適格請求書発行事業者の登録要件に、消費税の計算方法に関する決まりはありません。簡易課税制度を選択した場合でも、問題なくインボイスの発行が可能です。

小規模事業者にとって朗報と言えるのか?

インボイス制度の激変緩和措置は、小規模事業者にとって朗報と言って良いでしょう。

インボイス制度を機に消費税の課税事業者になった小規模事業者は、納付税額が売上税額の2割で済みます。消費税の負担を抑えられるため、当初懸念されていたほどの悪影響は受けずに済むといえます。

また、免税事業者からの仕入れに関する措置は、免税事業者で居続ける小規模事業者にとって朗報です。仕入税額控除の対象となるのは一部ですが、インボイス制度の開始後すぐに打撃を受ける恐れは小さくなりました。

ただし、どちらも期限が定められている経過措置です。大きな影響を受けるまでに時間の余裕ができた分、今後どうするかをしっかり検討し対策を進める必要があるでしょう。

まとめ

既に多くの企業がインボイス制度に対応するために対策を進めています。一方で小規模事業者や中小企業といった規模の小さい事業者は、どうしたら良いかわからない・インボイス制度に向けた準備ができていないと、未だ対策が不十分なケースが珍しくありません。

今回の激変緩和措置は小規模事業者にとっては朗報と言えるでしょう。しかし、あくまで経過措置であり、期限が決まっている点に注意が必要です。経過措置を上手く活用しながらも、インボイス制度に向けた具体的な対策や行動が求められます。

課税対象者となるべきなのか迷っているフリーランスや個人事業主などの免税事業者の方は、まずは本記事で紹介した内容を押さえつつ、インボイス制度の理解を深めましょう。

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投稿者情報

税理士副業ライターSOU
税理士副業ライターSOU
現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しています。会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。

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