簿記1級の難易度

日商簿記1級合格の難易度や合格率は?取得方法や独学でも取得できるのか

簿記一級は、簿記検定の中で最上位の資格試験であるため、「難しい」「大変そう」というイメージを持っている方も多いでしょう。実際、簿記一級の資格を取得するのは簡単なことではありませんが、有していれば簿記に関する知識・技術を証明できるようになり、就職や転職活動で有利になります。

本記事では、簿記一級の難易度や簿記二級との違い、受験対策などについて解説します。

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簿記一級の難易度を徹底解剖

簿記1級の難易度を解説

簿記一級の試験は、具体的にどのくらい難しいのか、過去の合格率や簿記二級との比較から見ていきましょう。

近年の合格率は10~15%

日本商工会議所が公開している受験者データによると、過去6回の合格者数と合格率は以下の通りです(※)。

回(開催日) 受験者数(申込者数) 実受験者数 合格者数 合格率
168(2024.11.17) 1万2,939名 1万420名 1,572名 15.1%
167(2024.6.9) 1万1,798名 9,457名 992名 10.5%
165(2023.11.19) 1万2,886名 1万0,251名 1,722名 16.8%
164(2023.6.11) 1万1,468名 9,295名 1,164名 12.5%
162(2022.11.20) 1万2,286名 9,828名 1,027名 10.4%
161(2022.6.12) 1万1,002名 8,918名 902名 10.1%

上記のデータから、簿記一級の合格率は10~15%で推移していることが分かります。なお、簿記二級の直近の合格率は以下の通りです。

回(開催日) 受験者数(申込者数) 実受験者数 合格者数 合格率
169(2025.2.23) 8,606名 7,118名 1,486名 20.9%
168(2024.11.17) 9,116名 7,589名 2,187名 28.8%
167(2024.6.9) 7,786名 6,310名 1,442名 22.9%
166(2024.2.25) 1万814名 8,728名 1,356名 15.5%

簿記二級の合格率は多少ばらつきがありますが、直近は20%を超えており、特に最新の168回では3割に迫る合格率です。

なお、簿記二級は会場で行う統一試験の他に、インターネットによる試験にも対応しています。インターネットによる試験の合格率は30%台であり、統一試験よりもさらに高い値になっています。

以上の比較から、簿記一級は二級よりも1割近く合格率が低く、難易度はかなり高めといえるでしょう。

※ 参考:商工会議所の検定試験.「1級受験者データ(統一試験)」.https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data ,(参照2025-04-22).

簿記二級との違い

簿記一級と二級で難易度に差が出る理由は、大きく分けて4つあります。

求めるレベルの違い

簿記二級は、高度な商業簿記・工業簿記(原価計算含む)を習得し、企業活動や会計実務を踏まえて適切な処理や分析を行えるレベルです。例えば、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、経営管理に役立つ知識を有していることが求められます。

一方、簿記一級は極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を習得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則といった企業会計に関する法規を踏まえながら、経営管理および経営分析を行えるレベルです。

一級は、二級よりもさらに高度かつ複雑な知識・スキルを要求されることから、試験難易度も相応に上がっています。

出題範囲の違い

簿記一級の試験科目は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4つであるのに対し、簿記二級は商業簿記と工業簿記の2つのみです。簿記一級の方が、試験科目が2つも多く出題範囲も広いため、より広範な知識を求められます。

合格基準の違い

簿記二級は商業簿記と工業簿記を合わせて90分の試験時間となっており、合格基準は70%以上です。

一方、簿記二級は商業簿記と会計学、工業簿記と原価計算でそれぞれ90分ずつの構成となっています。合格基準は二級と同じ70%ですが、1科目ごとの得点が40%以上である必要があります(※)。

これを足切り制度といい、例えば商業簿記と会計学の試験で合計70%以上の合格基準を満たしていても、会計学の得点が40%に満たない場合は合格と見なされません。

得意科目で集中的に点数を稼ぐという手段が通用しないため、科目ごとの得点に制限が設けられていない二級に比べて難易度が高くなっています。

※ 参考:商工会議所の検定試験.「試験科目・注意事項」.https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1/exam ,(参照2025-04-22).

勉強時間の違い

簿記2級の取得には、一般的に250時間から350時間の学習時間が必要だといわれています。

一方、簿記一級は出題範囲が広がるため、二級の倍ほどに当たる500時間~1,000時間の勉強時間が必要とされています。

働きながら資格取得を目指す方は、仕事と並行して勉強を進めなければならないため、一日当たりの勉強時間はどうしても短くなってしまいがちです。

その結果、一度の試験で合格するのは難しく、二度、三度とチャレンジする方も少なくないようです。

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簿記一級に合格するための効果的な対策

簿記1級に合格するための対策

簿記一級に合格するためには、一級試験ならではの特徴を十分理解した上で、対策を講じる必要があります。

ここからは、簿記一級に合格するために実践したい対策を5つご紹介します。

科目別対策

簿記一級は試験科目が4つあるため、科目ごとに出題傾向をしっかり把握しておきましょう。

商業簿記

商業簿記は、財務諸表を作成する総合問題が中心となる科目です。特に損益計算書や決算整理後残高試算表に関する問題の出題頻度が高い傾向にあります。

また、過去には在外支店や商品売買に関する問題が出されたこともあります。特に在外支店はマイナーな論点であるため、勉強の優先度を下げてしまいがちですが、出題される可能性は十分あるため、対策をしておくのがよいでしょう。

会計学

会計学は、文章の穴埋めや正誤判定問題などが多く出題される科目です。全体的に理論を問われる問題が多いため、丸暗記のみに頼っているとつまずいてしまう可能性があります。

とにかく基礎をしっかり固めることが重要です。

工業簿記

工業簿記は、標準原価計算からの出題が多い科目です。二級で学習した知識をさらに深掘りした問題が出されます。

出題されるテキストが難しいケースが多く、しっかりと内容を理解しながら解くようにしましょう。

原価計算

原価計算は、差額原価収益分析や投資の意思決定など、分析にまつわる出題の頻度が高い科目です。

いくつかの資料を読み、利益が増減した理由や投資をすべきかどうかなどを導き出します。一つ読み間違えると、複数の設問を間違えてしまう可能性があるため注意しましょう。

足切り制度対策

簿記一級には足切り制度があるため、全ての科目において満遍なく点数を取る必要があります。具体的には1科目ごとに40%以上、正解していなければなりません。

各科目で偏りのないようにするためには、それぞれ計画的に勉強をすることが大切です。苦手な分野が出てきた場合でも、あまり不安に思わずに少しずつ理解度を高めることを心掛けましょう。

さらに、簿記一級では2科目ずつ試験を受けますが、まずは「簡単そう」「解けそう」と思った方から取り組むのもポイントです。

難しそうな科目から解き始めると、1科目解くだけで時間を使い切ってしまい、2科目目の合格ラインを満たせなくなる可能性があるためです。

時間配分対策

簿記一級の試験時間は、まず商業簿記と会計学で90分の試験を受け、休憩を挟んだ後、工業簿記と原価計算で90分の試験を受ける仕組みになっています。単純計算で1科目当たり45分しか費やせないため、全ての問題を解くには時間配分に注意しなければなりません。

特に一つの問題に長時間悩んでいると、あっという間に時間が足りなくなってしまうため、難しいと思った問題は飛ばして先に進むという判断をすることも大切です。

なお、どの科目にどれだけの時間を費やすかは得意分野・苦手分野によるところが大きいため、個人差が生じます。時間を計測しながら過去問を解き、適した時間配分を割り出してみましょう。

理論対策

簿記では計算問題の他に、なぜそうなるのかを説明する理論問題が出題されます。

理論問題は計算問題に比べて解答に時間がかかるため、いかにスムーズに解けるかが重要です。

勉強のポイントとしては、まず丸暗記に頼らないことが挙げられます。過去問とそっくり同じ問題が出されるのなら丸暗記も効果的ですが、問題文のニュアンスが少しでも異なる場合、丸暗記した解答では不正解になってしまう可能性があるためです。

理論問題を解くためには、企業会計原則や企業会計基準などの資料をよく読み込んで基礎をきちんと学習し、その必要性や趣旨を理解しておくことが大切です。

勉強方法

簿記一級の勉強方法には、独学・予備校・通信講座の3つがあります。

このうち、一般的にコストが少ないのは参考書やテキストなどを購入して勉強する独学です。しかし簿記一級は出題範囲が広いため、自分だけで効率的な学習計画を立てるのは簡単なことではありません。また、独学だと分からない問題が出てきたときにつまずきやすく、勉強時間がかさみやすい傾向にあります。

そのため、短時間で効率的に勉強したい場合、予備校あるいは通信講座を利用し、プロが考案したカリキュラムに沿って学習した方がよいでしょう。

なお、予備校は仲間と一緒に勉強できてモチベーションを維持しやすい、分からない箇所はすぐ講師に質問できるというメリットもあります。通信講座は予備校よりも価格が安く、場所や時間を選ばずにマイペースで勉強できるのが利点です。

それぞれの特徴やメリットを比較検討し、自分に合った勉強方法を選びましょう。

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簿記一級を取得するメリット

簿記一級は非常に難易度の高い資格試験ですが、苦労して取得するだけのメリットがあります。ここからは、簿記一級を取得することによって得られるメリットを4つご紹介します。

税理士の受験資格を得られる

税理士試験を受験するには通常、大学卒業などの学歴要件や実務経験が求められます。しかし、簿記一級を取得すれば、これらの要件を満たさなくても税理士試験に挑戦することができます。

既に社会人になっている方にとって、今から学歴要件や実務経験を満たすのは経済的、立場的に難しいケースがほとんどです。簿記一級なら本人の努力次第でクリアできるため、これから税理士を目指したいという方にとって有用な手段となり得るでしょう。

就職・転職・独立に役立つ

簿記一級は専門性が高く、経理・財務部門や税理士事務所、公認会計士などの職において非常に有用です。

また、企画部門などでもその能力をアピールできることがあり、大企業への就職のチャンスが広がります。複数の候補者が同時に就職試験を受ける中で、簿記1級の資格保持者は希少性が高いため、それだけで評価される可能性があるのです。

実際、簿記1級を必須または歓迎条件とする求人の平均年収は、日本の平均年収よりも高い水準であるといわれています。

大学受験や推薦入学にも役立つ

大学などの推薦入試で、簿記2級よりも上級の資格を持っていると、高く評価されることが多いです。

日本商工会議所のWebサイトにて、簿記資格の取得によって優遇を受けられる大学の一覧が掲載されているため、これから大学入試を控えている方はチェックしてみるとよいでしょう。

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簿記一級合格後のキャリアパス

簿記一級に合格した後のキャリアパスは、大きく分けて3つあります。簿記一級の合格を将来の目標を実現するためのスタートラインとして、次のステップに進んでみましょう。

新たな資格取得を目指す

簿記一級を取得すると税理士の受験資格を得られるため、次のステップとして税理士を目指すのも一つの道です。

簿記一級レベルの知識を保有していると、特に会計学に属する科目(簿記論および財務諸表論)は、ある程度勉強するだけで合格レベルに到達できるといわれています。

5科目全てに合格しなければならないため難易度は高めですが、税理士の資格を取得すれば専門的な知識を生かして高収入を得ることも可能です。

また、簿記一級から公認会計士の試験にチャレンジする方もいます。公認会計士は税理士と違って受験資格がないため、簿記一級に合格しなくても受験することは可能です。ただし、公認会計士の試験は簿記一級の出題範囲と重複している部分が多いため、簿記一級を持っていれば一から勉強する場合よりも試験対策が容易になるとされています。

公認会計士も税理士と同じく国家資格の一つであり、公認会計士にしかできない独占業務に携われるなど社会的なニーズの高い職業であることから、将来有望な資格であるといえるでしょう。

他にも中小企業診断士や証券アナリストなど、簿記一級レベルの知識を生かしてチャレンジできる資格は複数あります。さらなるスキルアップを目指したい方は新たな資格試験に挑んでみるのもおすすめです。

経理・財務のスペシャリストとして働く

簿記一級は、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえ、経営管理や経営分析を行うことができるレベルに到達している資格です。

いわば経理・財務のスペシャリストであるため、上場企業の経理部門や財務部など、安定かつ高収入を得られる職場でも大いに活躍できます。また、中小企業の財務戦略支援やコンサルティング業務などを行うためのスキルも有していることから、M&Aコンサルなどに就職・転職する方もいます。

独立開業する

簿記一級の知識とスキルを生かしてさまざまな職場・部署で経験を積んだ後、特定の業界で独立開業するという道もあります。

特に税理士や公認会計士の資格を取得した方は、法人や事業所で働いた後、事務所を立ち上げて独立するパターンが多いようです。

まとめ:簿記一級を取得すれば将来の選択肢が増える

簿記一級は出題範囲が広い上に足切り制度などもあることから、合格率は10~15%程度と低めです。

簿記二級に比べると難易度は高いですが、合格すれば経理・財務のプロフェッショナルであることが証明されるため、大学受験や就職・転職などで有利になりやすいでしょう。さらに簿記一級に合格すると、税理士の受験資格も得られるため、将来的に税理士を目指している方にとっても取得する価値があります。

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