税理士がIT活用で業務効率化を実現するのは当然?知っておくべきこととは
2023/11/01
会計業界ではクラウド会計ソフトの導入などが選択肢の1つとして既に一般化しつつあります。
税理士の業務についても急速にIT導入が進んでいて、IT活用することで業務効率化を進めている会計事務所なども多くなっています。
特に会計事務所の業務には仕訳の入力作業からデータチェック、試算表の作成など作業的なものが多く、ITを活用することで業務効率化が図れる仕事が多く存在しています。
しかし、ITというとどうしても二の足を踏んでしまう会計事務所も多いと思います。それでも顧客先の要望なども含め、IT化を検討することは必要な時代になってきています。
ここではどのようにIT化を検討すれば良いのか、まずはIT活用について解説しますので参考にしてください。
コンテンツ目次
IT活用することで効率化が図れるメリット
IT活用を実現することで、以下のような効率化が見込めます。AIが作業することでその作業の完成度が一定に保たれ、担当者ごとによる完成度の違いなどがなくなります。その他、作業内容の品質だけでなく人件費や時間を削減することが大きなメリットとしてあげられます。
- 作業時間の軽減
- 入力ミスの削減
- 人件費の削減
- コストの削減
- ペーパーレス化の促進
- 本来の業務へ集中できる
作業時間の軽減
作業を自動化することにより、作業時間を大幅に削減できます。
伝票や領収書はスキャンしてOCRで自動でデータ化し、仕訳は自動でおこなうようなことも可能です。
最近ではAIの進化により、仕訳業務もできる会計ソフトも増えています。
入力ミスの削減
入力業務を自動化することにより、人の手による入力ミスが激減します。
自動仕分けしたデータのチェックをすることでミスは更に軽減されます。
人の手が必要となるのはチェック作業が主となる時代がきています。
人件費の削減
上記のように作業時間を経験することが出来ますので、人が作業していた時間も軽減することが可能です。
繁忙期など、人手を増やしていた場合なども人件費を圧縮できる場合もあります。
コストの削減
人件費だけではなく、ペーパーレスによる印刷代や郵送費の削減、作業時間が圧縮できるので、より多くのクライントの対応ができ、全体的にかかっているコストも軽減できるというメリットもあります。
ペーパーレス化の促進
伝票類はスキャンしてPDF化したり、契約書や請求書も電子化したりすることで、ペーパーレス化をすすめられます。
様々な書類のぺーパレス化は、電子契約を促進し、紙媒体を必要とせず対応できますので、郵送などにかかる時間の短縮にもなります。
電子帳簿保存法などにより今後はさらにデジタル化が加速するものと見られます。
本来の業務へ集中できる
作業にかかっていた時間を経験できるので、クライアントとの対応などに時間をかけることができるようになります。
また業務効率化によってクライントの月次決算の早期化も可能となるため、経営意思決定していただく時間も多く取れるようになりますので、本来時間をかけたい業務に集中することが出来ます。
IT(AI)が進化すると税理士はいらなくなる?
先述のとおり、従来の税理士の業務の仕事は、記帳代行などAI導入がしやすいものが多く、今後もIT化の流れは強まるでしょう。一方でIT化が進むことで、もともと人の手で行っていることが自動化され、人が直接作業する業務が減るということになります。すなわち、人員が少なくても業務が回り、人件費の削減が可能になります。それが価格の低いサービス提供を実現するのです。
ただし、AIが対応できる作業は、ルールがあらかじめ決まっている内容のものや、単純な作業に限られます。専門知識に基づく判断や人との渉外が必要な業務に関しては、IT化することは難しいでしょう。相続税申告に関する業務や経営相談、事業承継・事再生支援、税務調査の対応や補助金・助成金関連の相談などがそれにあたります。
税理士の業務が無くなる訳ではなく、記帳代行の業務にあてていた人員を、そういった業務に専念させることができるのです。AIの進化が進んだとしても税理士が行う専門業務と共存していく道はあります。うまくIT導入を進め、AIと人との棲み分けをすることがポイントとなるでしょう。
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IT活用の例
テレワークの推進などもあり、記帳の業務に限らず、ソフトをインストールして使う時代から、クラウドサーバー経由でソフトなどのツールを使う時代へと変わっています。経理業務で利用する会計ソフトも同様です。また、情報の共有方法がAIの発展により急速に変化しています。以下では実際に具体的なIT化の事例を紹介します。
クラウド会計ソフトの活用
クラウド会計ソフトは銀行口座の入出金情報やクレジットカードの利用明細を、データ形式で取得すればそれらを取り込むことができる機能があるものが多いです。また、事前に取引ごと、もしくは勘定科目ごとの自動仕訳などの設定をしておけば、それらのデータ内容から判定された自動仕訳処理を行い、仕訳の登録作業が可能です。
経費精算のシステムなどのデータを連携させて同様のことが可能なソフトも多く、活用するメリットが大きいでしょう。ただし、これらのお金の動きがデータで取得できない、現金での取引が多い業種では、このような機能はメリットとなりにくいかもしれません。とはいえ、入力作業が少しでも減ることや、チェック機能、オンライン上でのデータ共有の可能性を考えると有用性があると判断されることが多いツールです。
<例>
マネーフォーワード(MF)クラウド会計、freee、弥生会計オンラインなど
ペーパーレスの促進
事業規模の大小にかかわらず、データをオンラインストレージに保存して共有し、いろいろな業務に役立てている顧客先は多いのではないでしょうか。
経理業務では、これまで、様々なエビデンスを紙ベースで受け取り、会計ソフトへの入力作業をするのが当たり前だったかと思います。
現在では、それらの請求書や領収書などのエビデンス、経費精算に関する書面などをオンラインで作成できるツールが多くあります。それらのデータを活用し、会計ソフトに入力、もしくは取り込むことで人の手作業を削減できます。
加えて、紙の保存が不要なものは電子上の確認のみでとどめるなど、紙ベースでのやり取りが減少することでペーパーレス化を促進します。電子での保存のみで許される書面の範囲は法令で順次整備されているので、最新の情報を確認しつつ、対応することで、余計な紙の保管スペースも削減できるでしょう。
間違いなく、日本もデジタル化が進む流れになっており、電子帳簿保存法の改正や、さまざまなツールやソフトウェアの登場により帳簿だけではなく、契約書、請求業務なども電子化が加速するでしょう。
<オンラインストレージの例>
GoogleDrive、Dropbox、Onedriveなど
<経費精算での事例>
領収書やレシートをスキャンしてデータ化
(STREAMED、楽楽精算、クラウド会計上の機能として付帯 など)
<その他のエビデンス等の事例>
電子契約サービスや見積・発注書、請求書の電子化
(クラウドサイン、Bill One、契約書、見積・発注書、請求書の電子化)
RPA
RPAは、人間がコンピュータを操作して行う作業を、ソフトウェアが自動的に代替して行ってくれるものです。つまり、人間の代わりに業務をこなしてくれる自動化ツールです。多少複雑な作業であっても、RPAで代替できるように整備すれば、複雑な計算やデータの置き換え、集約作業を自動化できます。構築の準備に時間がかかることや、専門知識が他の方法よりも求められる可能性がありますが、こちらも効率化のひとつの手段です。
コミュニケーションツール
経理業務に関わらず、対面で会ったり電話で話したりせずとも、代替できるツールが広く普及しています。物理的に移動が困難な場合や時間の制限があるとくにとても有効です。会話した内容を記録することや、PC画面の共有などが可能なので、コミュニケーションツールとして活用することが可能です。簡単な打ち合わせであれば、顧客先への訪問をせず、もしくは出先や遠方との同僚と会話ができるので、有効活用できます。
<チャットツールの例>
Slack、Chatworkなど
<webミーティングツールの例>
zoom、meet、など
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注意が必須なのはセキュリティ
IT活用を推進するために事前に検討することは多くあるでしょう。ツールを導入し、テレワーク環境を整備し、場合によってはリモートワークに置き換える準備が必要です。ツールの使用ルールやネット環境の確認を進める必要があります。その中でも特に注意したいのはセキュリティ対策です。
PCにウィルス対策ソフトをインストールしただけでは解決できないケースもあります。情報管理がずさんで、万が一問題が発生した場合、顧客先や周囲から信頼を失うことにつながります。ツールごとの懸念点を確認し、クリアすることが必要でしょう。
特にデータをネットストレージに保管していたり、リモートワークを導入していたりする場合は、社内のPCだけではなくネットワーク環境・機器類を含めてセキュリティを確認することをおすすめいたします。
また、ヒューマンエラーというような人の手を介することによる人為的なセキュリティ問題も検討しておく必要があります。セキュリティルールを明確化し、問題が発生する前に対策をしておりますことが重要です。
不安がある場合はIT関連の専門家やツール導入時に十分に担当者へ相談するのが賢明です。
どのようにIT活用を始めれば良いのか
IT活用するにも、どのような業務をどのツールで改善していくか、事前の検証が必要となります主なポイントは以下の通りです。業務フローを見直し、手作業や時間がかかる、ミスが起こりやすい箇所を探し、よりどこに重点を置いて解決していきたいかを検討しましょう。
- 業務の無駄を見つける
- 改善点の優先順位をつける
- ツールの選定などは専門家とも相談する
すべての業務を包括的にIT化するのは非常に難しいでしょう。
まずは自身のITに関する知識も補完していくためにも段階的に実現していくことが重要です。
ましてや、コロナ禍がつづいている現状では、否が応でもwebミーティングや、ネットストレージの利用などITを活用しなくてはいけなシーンが増えています。
いざ、利用する際に戸惑わないためにも、日頃から接しておくといいでしょう。
Excelはどのような場合でも活躍するツール
すでにエクセルを使った業務は多くあるかと思いますが、レポートの作成や、マクロを活用した計算など、その機能を十分に活用することができれば、日々の業務で少しずつの効率化を進めることができます。そのため、事務所内に少なくても1人以上はExcelを使いこなせるようなスタッフがいることが好ましいでしょう。
先述したようなツールも、不足している部分や、細かなところではExcelで加工したデータを使用することや、ソフト内のデータをエクセル形式で出力してグラフ化するなど活用するケースが多いため、Excelでの作業は今後も必要となるでしょう。
今後IT活用はさらに加速する、活用しない選択肢はなくなってくる
このようにIT活用は経理業務においても急激に浸透していきます。近い将来、会計業界は2極化し、従来の税理士とITを活用している税理士とで分かれてくるでしょう。まずは、すぐに「IT化」するのではなく、改善できる業務の棚卸しをすることをおすすめします。
そして、その職場の状況に応じた対応をすることがポイントとなります。これは働き方改革法の施行などにより、多くの職場が働く環境の見直しを迫られていることも背景にあり、会計業界のみの話ではありません。
顧客先のニーズも増える可能性も踏まえ、また、従業員がよりよい環境ではたらけるよう、ITを活用し、業務効率化や業務改善を進めて頂ければと思います。
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その一環として、会計業界でお役に立つ情報をお届けするために10年以上記事を書いています。是非、会計業界で働く人が楽しく、知識を得られるような情報をお伝えできればと思います。
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