会計事務所に社会保険労務士が必要とされる理由とは
2023/11/01
会計事務所の求人の中には、時折社会保険労務士の募集を見かけることがあります。また、税理士の募集している会計事務所の中でも社会保険労務士を持っているとプラスに働く求人も多く見受けられます。
では、一体それはなぜなんでしょうか?
背景には、会計事務所が会計業務だけをしている時代は終わりを告げ、待っているだけでクライアントを獲得できたようなことも減り、会計事務所も他との差別化を図り、其々の特徴を強みに変え、コンサルティングなどの業務に力をいれるケースが急激に増えているからだと考えられます。
今回は、税理士を目指している会計事務所スタッフや会計事務所への転職を考えている方、または社会保険労務士の資格を保有されていて社労士事務所ではなく会計事務所で働くことに興味をお持ちの方に向けて、社会保険労務士の仕事内容と会計事務所の業務の関係性についてご紹介します。
社会保険労務士を取得した人が会計事務所で働く場合の参考にしてください。
コンテンツ目次
社会保険労務士とは
まず、社会保険労務士に関して、定義や業務範囲、資格取得、活躍できる職場について、以下順に解説します。
社会保険労務士の定義及び業務範囲
社会保険労務士とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格です。社会保険労務士は、通称「社労士」といい、企業で雇用する「人材に関する専門家」として知られています。社労士の業務範囲は広く、社会保険労務士法に基づき、1号から3号まで分類されています。
その中で、労働者の社会保険関連の届け出業務(1号業務)や出退勤・賃金台帳等の作成、就業規則・労使協定等の労務管理書類の作成・届け出・相談業務(2号業務)は社労士の独占業務となっていて、資格がないとできない業務です。その他に、社労士の資格がなくとも行える3号業務としての企業の人事労務に関するコンサルティング業務や紛争解決業務なども社労士の主な業務です。
社会保険労務士になるには
社労士になるには、年に1回実施される「社労士の国家試験」に合格する必要があります。試験科目は、「労働保険」「社会保険」の2つの分野があり、労働関係法令や社会保険関係法令など10のジャンルから出題されます。
社労士の国家試験の合格者数と合格率は、2015年度には合格者数1,000人前後、合格率2%台でしたが、ここ数年は概ね合格者数2,500人前後、合格率6%台で推移しています。社労士試験に合格後、一定の実務経験を経て、社労士名簿への登録をして、社労士になることができます。
また、個別労働関係紛争の解決手続きの代理業務を行うには、名簿への登録後、一定の研修を経た上で、年に1回実施される「紛争解決手続代理業務試験」に合格する必要があります。
社会保険労務士が活躍している職場
社会保険労務士が活躍している職場に関しては、以下のような事例があります。
- 社会保険労務士事務所(個人事務所・法人)
- 他士業の事務所
- 企業の人事部・総務部
- コンサルティング会社
- アウトソーシング会社
- 予備校など
社労士として活躍するには実に幅広い選択肢があります。社労士として、独占業務を行うためには、社労士名簿に登録した上で、社会保険労務士事務所に勤務している必要があります。
社労士の資格取得後、名簿登録して、社労士事務所や社労士法人に従業員として勤務して仕事のやり方を覚えるということが一般的です。
その後、独立開業して、自ら社労士事務所を経営することもできます。また、税理士事務所や法律事務所など他士業の事務所内に社労士事務所を併設して、勤務することもあります。
さらに、社労士の専門知識を活かして、「企業内社労士」として、企業内の人事部や総務部、コンサルティング会社、アウトソーシング会社に従業員として勤務して活躍することも可能です。
変わった活躍の場としては、社労士試験予備校などで社労士試験の講師などをする選択肢もあります。
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会計事務所での社会保険労務士の需要
次に、会計事務所での社会保険労務士のニーズについて探っていきます。
会計事務所は、クライアントの総務部と会計業務を通じて強く深い関わりがあります。クライアントの中には、社労士の独占業務である1号業務や2号業務などのニーズがある企業もあります。さらに、会計事務所の各種コンサルティングを受ける中で、人事制度に関するコンサルティングのニーズも含まれているケースもあります。
このように、社会保険労務士と税理士とは、お互いに携わる業務の中で重なる分野が存在します。しかし、資格の面や専門知識の面で、会計事務所ですべての業務を引き受けることはできません。
仮に、会計事務所の中に社労士がいれば、会計事務所は、社会保険労務士がいることでバックオフィス業務やコンサルティング業務の大半をワンストップで引き受けることができ、業容の拡大が図れるというメリットがあります。この点、会計事務所での社会保険労務士のニーズが発生するのです。
ただし、会計事務所で社会保険労務士の独占業務を行うことはできないため、具体的には関連会社で社会保険労務士事務所を併設して対応することになります。
社会保険労務士は税理士とのダブルライセンスが可能か
会計事務所に社労士をおくメリットが大きいのであれば、社労士と税理士のダブルライセンスを取得することで強みを活かせるはずです。しかし、社労士と税理士のダブルライセンスの取得は可能なのでしょうか。
この点、この2つの資格試験範囲には重複するところがなく、税理士試験も社労士試験もどちらも高難度のため、ダブルライセンスの実現は困難であることが予想できます。
したがって、1人の人が単独でダブルライセンスを取得するよりも、会計事務所に社会保険労務士を所属させる方が現実的な選択とされています。もちろん、独立開業を目指すなら、ダブルライセンスを果たせればクライアントへのメリットは強みを持ち、差別化を図れるでしょう。転職市場における自身の市場価値もアップし、キャリアパスも多様化できるでしょう。
まとめ
ここまで、社会保険労務士の仕事内容と会計事務所の業務の関係性についてご紹介してきました。
会計事務所において社会保険労務士を所属させることは、会計事務所としての業容拡大やワンストップサービスによる他社との差別化を図るという意味でのメリットが大きいのです。
したがって、社労士の資格保有者が会計事務所への転職を目指すことや、税理士等(税理士を目指している人を含む)が社労士とのダブルライセンス獲得を目指すことなどは、しっかりとしたキャリアプランを形成して、キャリアアップを図る上では、理にかなっていると言えます。
会計事務所等へ転職する際には、自身の転職市場における価値を測り、効果的な転職活動などのアドバイスを受けるために、専門サイトや転職エージェントの活用を検討することをおすすめします。
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