日商簿記1級資格取得は公認会計士試験合格へ必要な資格なのか?
超難関国家資格といわれている公認会計士試験は「質」の難易度が高いと言われ、膨大な試験範囲を理解するため多くの勉強時間をかけ、基本的には1度の試験で合格しなくてはならないので、戦略を立てて勉強しないと合格できないと言われています。
税理士試験のように科目制度がないことからも、1回の試験で合格しなくてはならず、密度が高く集中して勉強できる環境を必要とします。そのような難関試験にいきなり挑むのは躊躇してしまい、なかなか一歩を踏み出せないなんていう人もいるかと思います。
一方では、「日商簿記1級は公認会計士試験への登竜門」という話を耳にしたことはありませんか?簿記1級よりも公認会計士のほうが難しい試験であることはなんとなく理解されていると思いますが、具体的な違いなど詳細については解説が難しいかと思います。
この記事では、日商簿記1級と公認会計士の試験内容などを比較し、どのような違いがあるのかを解説します。また、簿記1級を先に取得することのメリットはどのようなことなのかも紹介します。
公認会計士という資格はBIG4などの大手監査法人へ就職できるようなチャンスでもあることから、1日あたりの勉強時間を確保できる学生が多く挑んでいる資格でもあります。
簿記1級も非常に難易度が高く、取得することができれば大規模な企業で活躍できるレベルの知識を得ることができます。
それだけでも就職、転職が有利になりますので、取得しておくことに越したことはありません。公認会計士試験に挑む前に簿記1級を取得することは遠回りだという意見もありますが、その理由などを本記事で詳しく解説しますのでご参考にしてみてください。
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コンテンツ目次
日商簿記1級の特徴とは
日商簿記1級は、極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベルの簿記検定試験です。合格すると税理士試験の受験資格が得られます。日商簿記検定1級は公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門として認知されている試験で日本商工会議所の検定試験です。
また、上場していたり、グループ会社を多数もち連結会計をしているような大企業であれば余すことなく活用できますが、中小企業の経理職では持て余してしまうほどの会計知識を身につけることができます。日商簿記1級はよくUSCPA(米国公認会計士)とも比較されたりしますが、目的が異なる資格になりますので、比較することにあまり意味を持たないかもしれません。
税理士試験を受験するためには、受験資格を得ていない場合は、簿記1級に合格することで受験資格をクリアしようとする人が多いようですが、公認会計士試験を受験するために、簿記1級に合格している必要はありません。
なぜなら公認会計士試験は受験資格に条件がなく、誰でも受験することが可能な門戸が広い試験だからです。
また、日商簿記1級の試験内容などについて、更に詳しく知りたい場合は「日商簿記1級合格への方法とは?最上位資格の試験内容、合格率・難易度など徹底分析」の記事をご覧ください。
公認会計士の特徴
公認会計士の資格は、監査業務が行える唯一の国家資格です。
公認会計士は、公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格し、2年以上の業務補助等の期間があり、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受けて日本公認会計士協会による修了考査に合格した後、内閣総理大臣の確認を受けた者は、公認会計士となる資格が与えられます。
公認会計士として開業するためには、公認会計士名簿に登録し日本公認会計士協会に入会することが義務付けられています。
出所: 日本公認会計士協会
また、公認会計士になるまでの流れについて、更に詳しく知りたい場合は「公認会計士になるまでの全体フローを再確認!目指す上で気になる疑問にもお答えします」の記事をご覧ください。
試験内容の出題範囲などの違いとは?
公認会計士の試験は短答式試験と論文式試験に分かれています。短答式試験の試験科目は、財務会計論、管理会計論、監査論及び企業法の4科目です。一方、論文式試験は、会計学、監査論、租税法、企業法及び選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち、受験者があらかじめ選択する1科目)の5科目となっています。
一方、簿記1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算に科目が分かれています。
「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識となっています。
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学習範囲の違いとは?(比較)
簿記1級試験は企業経営に役立つ会計情報を作成するための考え方を学習することを目的とした試験です。したがって、それに準じて学習範囲が決まっています。したがって、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算といった科目が学習範囲として定められているのです。
一方、公認会計士試験は、企業が作成した財務諸表について、それが適正なものかどうかを監査するための考え方を学習することを目的とした試験となっています。
監査をするためには、どのように会計情報が作成されるべきであるのかがわかっていないといけないので、簿記1級で学習する内容も勉強しますが、あくまでもそれは監査のための一つの手段に過ぎません。つまり、簿記1級と公認会計士試験では、その目的が違うので、それに準じて学習範囲も違うものとなっているのです。
必要となる勉強時間や、難易度の違いとは(比較)
簿記1級は民間資格です。そのため、資格を取得したからと言って、独占業務といった独占的に何らかの業務ができるようになるわけではありません。
日商簿記検定試験は年3回ありあますが、簿記1級の試験は年に2回開催されています。このことから、合格までにおよそ半年程度の時間が必要と言われることが多いです。具体的な時間数としては、およそ1,000時間程度と言われています。
一方、公認会計士は国家資格です。公認会計士の試験は「医師」や「弁護士」の試験と並ぶ日本三大国家資格と呼ばれており、勉強方法をしっかりと計画して戦略的に挑まないと合格が難しいと言われるほど、非常に難易度が高いことで広く知られています。筆記試験は、合格率10%の難関であることから、独学での合格が限りなく難しい試験です。
公認会計士試験の合格レベルに達するまでに要する勉強期間は、集中できる環境で約2~3年と言われています。最も合格者の多い属性は大学生ですが、これは、大学生が最も勉強のための学習時間を割けるからです。大学生の場合、十分な学習時間を確保して1年半程度の時間が必要となります。具体的な時間でいえば、3,500時間もの学習時間が一つの目安とされています。
簿記1級は公認会計士への登竜門なのか?
かならずしも簿記1級は公認会計士への登竜門というわけではありません。
簿記1級に合格すると、税理士の受験資格が得られます。税理士試験では一定の学問を修めたか一定の資格合格(公認会計士は短答式試験合格など)がないと受験資格を得られません。日商簿記1級と全経上級合格者(昭和58年度以降の合格)には、資格要件によって税理士試験の受験資格が与えられます。
一方で公認会計士試験には受験資格がありませんので、誰でも受験することが可能なのです。
したがって、公認会計士となるために簿記1級は必ず必要というわけではないのです。しかし、公認会計士試験を受験する多くの人は簿記1級を受験した経験があり、ほとんどの人が実際試験に合格しています。以下では、公認会計士試験の前になぜ簿記1級を受験するのかを説明するとともに、簿記1級を先に取得するメリット・デメリットについて説明していきます。
簿記1級を先に取得するメリット
公認会計士となるために必須ではないにもかかわらず、簿記1級を先に取得しておくことには多くのメリットがあります。公認会計士試験は、短答式試験が年に2回、論文式試験が年に1回しか実施されません。したがって、試験の雰囲気に慣れる機会がほとんどないのです。
そのため、簿記1級を先に受けることで試験の雰囲気に慣れられます。公認会計士試験と同等のレベルの試験で、公認会計士試験にも役立つ試験は簿記1級しかありません。簿記1級を練習台として使えるのが、簿記1級を先に取得する第1のメリットです。
第2のメリットとしては、簿記1級を先に取得することを通じて簿記の計算力を向上させられる点が挙げられます。
簿記1級と公認会計士試験は出題形式こそ違うものの、基礎となる論点は共通しています。したがって、簿記1級で勉強した内容が公認会計士試験で役立ちます。しかも、簿記は計算科目なので、十分な演習問題に取り組まなければ試験に合格できません。当然、公認会計士試験も同様で、簿記1級に合格する以上に計算力が求められます。簿記1級の勉強を通じて、公認会計士試験の計算科目での得点力を高められるのです。
簿記1級を先に取得するデメリット
簿記1級を先に取得するデメリットは、公認会計士試験とは出題形式が異なるため、勉強時間が取られるだけの回り道となる可能性がある点です。簿記1級を取得しても、制度上、公認会計士試験に影響はありません。簿記1級はあくまでも公認会計士試験の練習台として位置づけであり、そこに余計な勉強時間を割いてしまえば元も子もありません。
公認会計士試験の合格を目指しているのであれば、簿記1級への合格は必須ではないのですから、簿記1級のための勉強にそれほど時間をかけるべきではありません。どのような資格試験でも、傾向と対策をきちんと行って効率的に合格を目指すものですが、公認会計士試験への合格を目指していて、その練習台として簿記1級を取得するのであれば、それを行うべきではありません。
理由は、時間がとられてしまうからです。その分の時間を公認会計士試験の対策に向けたほうが良いでしょう。そのため、簿記1級を取得するのであれば、あくまでも公認会計士試験の合格のための練習台として簿記1級試験を活用するようにしましょう。
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簿記1級を取得することは税理士試験にもメリットがある
簿記1級の取得は、試験制度上、公認会計士試験にはメリットはないものの、税理士試験にとっては試験を受けるための受験資格を得る1つの手段となっています。
したがって、他の要件で受験資格を得ていなくても簿記1級を取得しておけば、税理士試験を受験できるようになります。簿記1級は一度合格しておけば、基本的に有効期限はありません。
そのため、公認会計士試験合格の前に取得しておけば、途中で公認会計士試験ではなく、税理士試験に切り替えてもスムーズに勉強を移行できるというメリットがありますのでおすすめです。
また、公認会計士試験の難易度などについて、更に詳しく知りたい場合は「公認会計士試験の難易度を数字で分析!税理士試験との違いと必要な勉強時間も解説」の記事をご覧ください。
日商簿記1級を取得しておくとメリットがあります
これまでの記事の内容で、簿記1級を先に取得するメリット、公認会計士試験との違いについてはご理解いただけたかと思います。実際に簿記1級を先に取得するメリットも多いので、順序的には簿記1級を先に取得しようとしている人も多いのではないでしょうか。
なによりも公認会計士試験よりも先に、簿記1級に合格しておくことは、簿記1級と公認会計士試験で重複している部分を効率的に勉強できるようになるでしょう。簿記1級も非常に難しいと言われる試験ですから、公認会計士を目指す前段として簿記1級に合格することは自信につながることも大きなメリットです。
簿記1級を取得することは遠回りだという意見もあったり、予備校やスクールでは簿記資格は取得せずに公認会計士を直接目指すことを推奨しているところもあります。
公認会計士試験に合格するための必勝パターンや、王道などは存在しません。それぞれどのような流れで公認会計士を目指すのか、ご自身の適正を鑑みて決めていくことが重要なポイントです。
また、資格取得したことは知識をもっている証明ともありますが、会計業界も実務経験を重視する傾向が強いので注意が必要です。
公認会計士に合格したあと、どのような仕事に携わりたいのか、キャリアパスを描いておきましょう。簿記1級も簿記資格の最高峰ですし、公認会計士も超難関と言われる国家資格です。膨大な勉強時間を必要としますので、なによりもモチベーションを維持し続け合格を目指して試験勉強を進めることが大切です。
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