高卒でも公認会計士になれる?高卒者の合格率や目指す方法を解説
2024/01/26
公認会計士は、企業監査を専門分野とする職業です。医師や弁護士とともに「三大国家資格」として知られている会計のスペシャリストであり、高額な年収も期待できます。そのような難易度の高い国家試験であるため、「高卒で公認会計士を目指すのは無理なのでは?」と思う方も多いかもしれません。しかし、公認会計士は誰でも受験できるため、高卒者にも公認会計士の門戸は開かれています。今回は高卒でも公認会計士になるための方法や、公認会計士の試験対策について紹介します。
■□■□会計業界へ効率的に無駄のない転職活動をするなら専門転職サイト「会計求人プラス」が最適!完全無料の会員登録はこちらから■□■□
コンテンツ目次
公認会計士は高卒でもなれる?
公認会計士は受験資格に制限がなく、高卒者でもチャレンジ可能です。実際に、高卒者の合格者も発表されています。ここでは他の国家資格と比較しながら受験資格や難易度について解説します。
公認会計士の受験資格について
医師や弁護士と並んで「三大国家資格」の1つに数えられる公認会計士は、学歴がなければ受験できないと思われがちです。しかし、三大国家資格のうち公認会計士だけは受験資格による制限がないので、学歴・資格・経験を問わず誰でもチャレンジできるという特徴があります。実際、公認会計士試験の合格者発表には毎年、高卒者の合格者が発表されています。また、試験に合格した後の公認会計士登録をする際も学歴はいらないので、高卒者でも公認会計士になれます。
ちなみに、代表的な国家試験には以下のような受験資格が設けられており、受験をするためにも何年もかかってしまうような資格もあります。このような国家資格が並ぶ中では、公認会計士は比較的受験のハードルが低い資格です。
<代表的な国家試験の受験資格>
- 医師国家試験…医大、医学部の卒業者、医師国家試験予備試験の合格者 且つ規定の期間実地修練を経た者
- 司法試験…法科大学院の修了者、司法試験予備試験の合格者
- 税理士試験…大学3年次以上で一定の単位履修、日商簿記検定1級合格者
2005年以前の旧試験制度では、公認会計士にも学歴や旧1次試験合格といった受験資格が設けられていました。しかし、2006年度からは受験資格による制限がなくなり、誰でも公認会計士試験を受けられるようになりました。
公認会計士試験の難易度は?
誰でも受験できる公認会計士試験ですが、試験内容は非常に難しいものとなっています。公認会計士試験を実施する「公認会計士・監査審査会」が発表した公認会計士試験の合格者発表(令和4年度)によると、次のような結果でした。
- 受験者(願書提出者)数/18,789人
- 合格者数/1,456人(合格率7.7%)
- 合格者の平均年齢/24.4歳
公認会計士試験に向けて勉強時間を確保しやすい「学生」「専修学校・各種学校受講生」「無職」の合格者が多い傾向にあり、全体の66.1%を占めています。集中的に勉強して公認会計士試験に臨む受験者が半数以上いるにもかかわらず、合格率わずか7.7%の難関資格である、という見方もできます。
参照元:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」
会計業界へ転職したいなら
「会計求人プラス」
未経験でも会計事務所で働くことは可能です。簿記資格を持っている、税理士を目指している・目指したことがあるなど、あなたの知識を活かせる職場をお探しします!
高卒から公認会計士になるまでの流れは?
公認会計士になるには、まず試験に合格しなければなりません。また、公認会計士として登録するためには、公認会計士や監査法人で補助業務に就き、実務経験を2年以上積む必要があります。ちなみに、試験合格前の実務経験も対象です。
公認会計士試験に合格した後は、監査法人や企業の会計部に就職して経験を積み、その後、補習所に通います。公認会計士として必要な講義と考査を受けて、最後に日本公認会計士協会が実施する「修了考査」を受験し、見事合格すれば、正式な公認会計士としてキャリアをスタートできます。
高卒で公認会計士を目指すのは不利なのか?
ここまで高卒でも公認会計士になれることをご説明してきましたが、実際のところ「高卒から公認会計士を目指すことは不利なのか」と気になっている方もいらっしゃることでしょう。ここからは、高卒で目指すことが不利なのかどうか解説していきます。
学歴は特に関係ない
公認会計士試験は学歴不問の資格なので、学歴が不利に働くことはありません。学歴に関係なく、公認会計士のキャリアを築けるのは試験に合格した人だけです。
会計事務所や会計法人に就職をする際、会計の専門知識を備えていることは学歴で証明できますが、公認会計士試験に合格したという実績でも十分にアピールできます。
経済学部や法学部卒の人と比べると勉強時間がかかる
公認会計士の試験は、社会人を含めたさまざまな経験を持つ方が公認会計士を目指せるよう、試験科目の免除制度を設けています。高卒者に不利な要素を強いて挙げるとすれば、それは試験科目の免除ができず、すべての科目を受験しなければいけないという点です。
公認会計士試験では、以下の条件を満たすことで、一部の試験科目を免除してもらえます。
<試験科目の免除対象者の条件>
免除される科目 | 免除対象者 |
---|---|
短答試験(全科目) | ●大学等で商学・法律学に属する科目の教授・准教授として3年以上務めた者 ●商学・法律学に属する科目に関する博士号取得者数 など |
短答試験(一部科目) | ●税理士試験の簿記論・財務諸表論で60%以上の成績を持つ者 ●会計専門職大学院の修士号取得者 ●会計・監査に関する業務に通算して7年以上従事した者 など |
論文試験(一部科目) | ●大学等で商学・法律学・経済学に属する科目の教授・准教授として3年以上務めた者 ●商学・法律学・経済学に属する科目に関する博士号取得者 ●不動産鑑定士試験の合格者 など |
公認会計士試験の受験者でもっとも多いのは学生ですが、学生のほとんどは免除対象になる学位・経験・資格を持っていません。全科目を受験しなければならないことは不利ではあるものの、他の受験者と比べて大きく遅れを取るような要素ではないでしょう。
途中で投げ出してしまうと経歴に何も残らない
最後まで諦めずに勉強し、公認会計士試験に合格すれば人生が変わります。しかし、合格するまでの道のりは厳しいものになるでしょう。「学生」の次に多い受験者が「無職」であることからも、公認会計士試験は片手間で勉強して合格できるほど簡単な試験ではないことが分かります。過去問を解けば簡単に受かるほど甘くはないのです。それにもかかわらず、試験勉強を途中で諦めると、経歴に残るものは何もありません。他の仕事を探すために、履歴書に「公認会計士試験の勉強期間」と記載しても、何のアピールポイントにもならず、むしろ「空白期間」と捉えられてしまうのです。空白期間が長いほど、書類選考で落とされる確率も高いため、就活が困難になる可能性があります。
高卒者の公認会計士の合格率とは?
公認会計士試験を実施する「公認会計士・監査審査会」が発表した公認会計士試験の合格者発表(令和4年度)によると、最終学歴別の合格者数と合格率は次のような結果でした。
<最終学歴別の合格者数と合格率>
最終学歴 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|
大学院修了 | 39人 | 4.10% |
会計専門職大学院修了 | 22人 | 3.20% |
大学院在学 | 13人 | 9.10% |
大学院在学 | 14人 | 8.50% |
大学卒業(短大含む) | 632人 | 8.00% |
大学在学(短大含む) | 642人 | 9.80% |
高校卒業 | 76人 | 4.00% |
その他 | 18人 | 4.00% |
参照元:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」
令和4年は全受験者のうち10.1%は高卒者による挑戦で、合格率は4.0%でした。会計専門職大学院修了者の合格率は3.2%、大学院終了者の合格率は4.1%となっており、合格率だけを見ると高卒者の合格率と著しい差はありません。令和4年度公認会計士試験の合格率が7.7%であることも踏まえると、高卒者だからといって著しく合格率が低くなるとは限らないことが分かります。
会計業界へ転職したいなら
「会計求人プラス」
未経験でも会計事務所で働くことは可能です。簿記資格を持っている、税理士を目指している・目指したことがあるなど、あなたの知識を活かせる職場をお探しします!
公認会計士を目指すのに向いている人
公認会計士の主な仕事は「監査」です。企業が公開している会計情報の正確性をチェックし、投資家に対して、偽りのない適正な経営状況を保証するのが監査の仕事です。
膨大な資料と向き合いつつ小さな不正・ミスを見逃さないためには、正確な計算能力が必要です。また、長時間に渡って数字と格闘し続けますので、「几帳面」で最後までやり抜く「忍耐力」のある方が向いています。「ちょっと違うけど、後で何とかなるだろう…」と安易に捉えると、後々、数字の違いで大問題にも発展しかねませんので、そのような大雑把な方には向いていません。もし、監査で財務諸表の不正や誤りを見逃してしまったら、公開された決算書を信頼して取引を決めた企業や投資家に多大な損失が生じてしまうからです。
また、膨大な資料と向き合う公認会計士の仕事は事務作業が多いので、想像していたよりも地味な仕事だと感じる方もいます。作業そのもののやりがいに左右されることなく、一度引き受けた仕事を最後までやり通す責任感のある方、企業の社会的信用をサポートするという社会的貢献にやりがいを感じる方にも向いています。
公認会計士の試験内容
公認会計士試験は、必須科目と選択科目を合わせて9科目あります。
試験方式 | 試験科目 | |
---|---|---|
短答式試験(マークシート) | 財務会計論、管理会計論、監査論、企業法 | |
論文式試験(筆記) | 【必須科目(5科目)】 会計学(財務会計論+管理会計論)、監査論、企業法、租税法 |
【選択科目(1科目)】 経営学、経済学、民法、統計学 ※4つの科目より1科目を選択します |
回答形式は「短答式試験(マークシート)」と「論文式試験(筆記)」です。公認会計士試験を合格するには、短答式試験をパスした上で論文式試験に合格する必要があります。公認会計士試験について、より詳しく知りたい方は、試験内容と学習方法を紹介したこちらの記事もご一読ください。
公認会計士試験の科目とは?試験内容を徹底解説
公認会計士の業務内容
公認会計士になると、どのような業務に従事するのでしょうか。ここでは、公認会計士の主な業務内容について紹介します。
監査業務
上場企業に参加する企業は、投資家に対して財務情報を公開し、経営内容を発表しなければなりません。投資家は財務情報を見た上で、投資をするか否かを判断しますので、財務情報には「正確さ」が求められます。その情報を第三者の立場で正確かどうかを厳しくチェックするのが「監査業務」で、公認会計士の主要な仕事のひとつです。監査が義務づけられているのは、上場企業のほかにも学校法人、独立行政法人、社会福祉法人、医療法人などがあります。
税務業務
公認会計士は、税理士登録も行うことができ、研修を受ければ税理士として次のような業務にも従事できます。
- 税務代理(申告、不服申し立て、税務官庁との交渉など)
- 各種税務書類の作成
- 企業再編に伴う税務処理・財務調査
- 海外現地法人・合併会社設立を含む国際税務支援 など
コンサルティング業務
他にも、公認会計士が担当する仕事として、企業の経営戦略立案から組織再編など経営に関わるコンサルティングも行っています。
<公認会計士が行う主なコンサルティング業務>
- 会社の経営戦略・長期経営計画に関するコンサルティング
- 提案内容の実行支援(情報システム・生産管理システム等の開発導入)
- 企業再生計画の策定と検証
- 組織再編などに関するコンサルティング など
公認会計士の業務内容について、もっと詳しく知りたいという方はこちらもご覧ください。
高卒でも公認会計士に合格するには
ここからは、高卒から公認会計士試験の合格を目指す上で必要なことやポイントについて解説していきます。
情報を集める
公認会計士試験に合格したいからと言って、闇雲にテキストを購入して自己流で勉強するのはおすすめできません。まず、公認会計士になるまでのプロセスや必要な勉強などの「全体像」を理解することが大切です。公認会計士の通信講座の情報を集めたり、予備校のパンフレットを取り寄せたりすれば、公認会計士になるまでのプロセスやスケジュールが分かります。初めに、情報を集めて全体像を掴んでから、合格日から逆算したスケジュールを立ててください。次に、何を勉強すべきかを明確にしてからテキスト購入し、勉強をスタートさせましょう。
自分のレベルに合ったテキストを使用する
公認会計士試験で使用するテキストは、自分のレベルに合ったものを選びましょう。最初から難解なテキストに挑戦すると、なかなか理解が進まず、勉強に対する苦手意識が芽生えてしまいかねないので、あまりおすすめできません。初めはビギナーでも学びやすいものを使い、徐々に応用の効いた問題集を使いましょう。独学で勉強するなら、元試験委員による「スタンダードテキスト財務会計論」というテキストがおすすめです。実際の試験に出題された内容を分かりやすく解説していますので、勉強の方向性を見間違えることもありません。
自分なりの勉強方法を決める
人によっては、自分のペースで過去問題集を使って、独学でチャレンジしたい方もいるでしょう。一方、一人で勉強し続けるモチベーションを維持するのが難しいという方もいます。公認会計士の勉強は、独学以外にも通信講座や予備校で学ぶ方法もありますので、まずは、「どんな方法で勉強するのか」、自分にあった勉強法を決めましょう。公認会計士試験の対策については、こちらの記事も合わせてご一読ください。
公認会計士の試験を独学で合格するコツとは?壁を乗り越えるポイントを解説
公認会計士試験の合格率はどのくらい?難易度や対策方法について解説します
働きながら公認会計士を目指すことは可能?
公認会計士試験に合格するには、膨大な勉強時間が必要なため、仕事と両立しながら勉強を進めるには難易度の高い資格といえます。しかし、働きながら公認会計士を目指すことは不可能ではありません。公認会計士試験の合格者発表(令和4年度)によれば、会社員・公務員・教員などの社会人の合格者も発表されています。
ただし、公認会計士として登録をするためには、2年以上の実務経験が必要です。そのため、せっかく働くなら、実務経験に繋がる職場で働くというのもひとつの手です。未経験かつ学歴不問で求人を出している監査法人・会計事務所もあるので、実務経験を積みながら公認会計士試験の対策を進めるという方法もあります。
自分に見合った就職・転職先を見つけるためには、自分がどのようなキャリアを目指しているのか明確にすることが大切です。会計業界には大小さまざまな法人や事務所が存在し、採用基準も社風も異なります。働きながら公認会計士を目指すというのであれば、資格試験のサポートが手厚い法人や事務所を探してみましょう。
最適な求人を探すなら
「会計求人プラス」
会計求人プラスは、「会計事務所、経理専門の求人・転職サイト」です。会計業界に関連する求人のみを扱っているため、知りたい情報、希望する条件に合った求人が見つかります!
投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
最新の投稿
- 転職ハウツー2024.11.11「会計事務所を辞めたい」と思ったときの対処法!転職成功者のインタビューも紹介
- 税理士2024.10.24簿記2級と3級の違いとは?試験内容からキャリアへの影響までを解説
- 士業2024.09.06社労士は未経験でも就職・転職できる?社会保険労務士のニーズも解説
- 税理士2024.09.05税理士の仕事内容とは?主な就職先、魅力・やりがいについても解説