
公認会計士試験の合格率を分析!合格者の傾向は?(令和2年度版)
2021/02/24
令和2年度の公認会計士試験の結果発表が令和3年2月16日にありました。最終合格率は10.1%と発表されましたが、合格の実情はどのようなものだったかご確認されたでしょうか?
今回は実質的な合格率や過去5年のデータから見る合格者の傾向など、詳細な結果分析をご紹介します。
実質的な合格率は?
試験結果は「公認会計士・監査委員会」のサイトに掲載されています。
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/
「令和元年公認会計士試験合格者調」では受験者が13,231人、合格者が1,335人で合格率が10.1%となっています。こちらの数字は「願書提出者」を受験者としており、当日欠席して答案を提出していなかった人数は加味されていません。令和2年度は新型コロナウイルスの影響によって日程変更や会場変更がギリギリまで行われた年になり、受験者数の合計は辞退者が反映されていますが、各内訳は辞退者がない数字となっているため多少の相違が出ています。
同サイトから別紙(短答式・論文式の「合格発表の概要」)を見ると、短答式試験は合格率16.04%、論文式試験は欠席者数410名を除いた受験者数で計算すると40.34%が合格率となっています。
広範囲の知識を要求される短答式試験を乗り越えられた方でも、ほぼ同じ試験範囲で回答が記述式になる論文式試験は容易ではないということになります。
短答式試験 | 論文式試験 | |
受験者数 | 11,598名 | 3,309名 |
合格者数 | 1,861名 | 1,335名 |
合格率 | 16.04% | 40.34% |
(詳細資料PDFはこちら)
※欠席・辞退者数は内訳が不明のため、以降の数字は加味しないものとなります。実際は表記よりは少し高めと考えて良さそうです。
合格率の高い年齢層
上段の分析表を見るとわかる通り、合格率が高いのはやはり若年層(20代)が圧倒的です。受験者の職種のうち半数を「学生」が占めることを考えると、学生のうちに公認会計士資格に合格して就職活動に生かす傾向はまだまだ強いようです。
例年の通り(過去5年間でも比較的同じ傾向)ではあるのですが、年代による合格率で決定的に差が出ているのは論文式試験です。年齢が上がれば上がるほど論文式試験の合格率は下がっており、勉強との親和性や勉強時間の確保が困難になっていく等の要素が響いていると思われます。しかしながら、高年齢層でも合格者は出ております(今年の合格者の最高年齢は61歳)ので、絶対に合格しないということではありません。
職種による傾向
中段の職種別で見てみると、令和2年度の論文式試験の合格率は学生が高い以外は概ね同じような数字に留まっています。
学生の合格率は確かに高いのですが、学生のうちに公認会計士試験に合格するのは生半可なことではありません。確かに社会人より多くの勉強時間を確保することができますが、大学の授業や試験をこなしつつ公認会計士試験の勉強をするため、普段の勉強に公認会計士試験の勉強が上乗せされる形になります。他の大学生より勉強時間を大きく取る必要があり、時間に余裕の無い生活を送っている人も少なく無いようです。
また、大学に加えて専門学校にも通う(ダブルスクール)など費用も大きく掛かるため時間と費用両面の負担に耐える必要があります。しっかりとしたスケジュールと、必要な予算を考えて計画的な勉強となるよう心がけておきましょう。
無職に相当される方は、大学などの卒業後に勉強を続けているものと思われます。専門学校生との区分けが難しい点ではありますが、オンライン授業なども普及してきたため学生に分類されなくても十分な環境を作れるようになってきています。
会計士補については15年前に廃止となった資格です。短答式試験は殆どが通過しているのですが、論文式試験での苦戦が目立ちます。受験者の年齢も少々高めとなるため、勉強時間の確保が困難な点がネックかと思われます。
会計事務所員は学生と並んで合格率が安定しており、年度による合格率の振れ幅が小さめなのが特徴です。専門家が近隣にいるため、わからない点を解決しやすい環境なのがメリットになるでしょう。
その他の職種については受験者数が少ない等で年ごとの結果変動が大きいため、特定の傾向は見受けられません。

社会人と学生の合格率
下段の分析表では、学生は「学生」「専修学校・各種学校生」のみ、「学生以外」はそれ以外の職種をまとめて数字を集計してあります。
「学生」が短答式・論文式ともに高い合格率を出しているのは、「勉強に専念できる」環境が作れていることが大きいと考えられます。実際に業務で使った経験が無くても、普段から勉強をする癖がついているため理解する・覚えることについて大きな強みを持っているといえます。
一方で、「学生以外」は合格率を落とし気味になっています。年齢層が上がると仕事の忙しさや家庭のことで勉強の時間を取りにくいことが想定されます。ただ、「無職」が資格試験に専念している上で合格率が特段高くは無いことを考えると、安定した合格率を持つ会計事務所員のように普段から業務で触れている、質問する相手がいる環境も視野に入れて取り組む方針も良さそうです。
結局、理想的な勉強法は?
理想だけで言うならば、専門・専修学校に通いつつ公認会計士試験の勉強に専念することでしょう。ただし、それにはお金が必要な上に時間もかかります。もともと難易度が高い試験であり、合格率も高くないのが公認会計士試験です。職歴に隙間があるのも将来的なリスクになると考えると、働きながら経験と知識を積み重ねていくのが妥当ではないでしょうか。
もちろん、学生の間に公認会計士試験に合格しておき、就職後に実務経験を積む方が一番効率的と考えられます。その場合には大学の学費に追加で専門学校の費用の工面や、試験に合格できなかった場合等のリスクもありますので、事前にルールを決めた上で取り組むことをお奨めします。
まとめ
・合格率は年齢層が低い方が高い
・短答式は年齢層に関わらず合格率は大きく変わらず、論文式の合格率が年齢層による差になっている
・わからないことを質問できる相手がいた方が良い
費用や年齢、家庭の事情など人によって取れるスタイルは様々だと思います。今までの事例はあくまで傾向のため絶対ではありませんが、一つの目安となるかと思います。
学生の方は、一時的な負荷は大きいですが在学中の取得を一つの目標にすると良いでしょう。在学中に合格に至らなかった場合、働きながら勉強するか勉強に専念するかを費用面も含めて検討することになりそうです。
現在就業中であれば、資格取得に向いた職場環境かを検討するところです。資格取得の支援体制が整っている、通学のための就業時間に融通を効かせてくれる会計事務所も少なくありません。今のままで仕事と勉強の両立ができそうか検討し、難しいようであれば新しい環境を探してみると良いでしょう。

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