
簿記1級を持っている場合の最適な転職先とは?会計事務所・経理・財務なのか?
2022/02/14
資格試験の人気講座と言えば簿記検定ですが、日商簿記検定試験の最高峰の資格「簿記1級」は、キャリア形成においてどれくらいの価値があるのか気になるところではないでしょうか。
簿記1級の資格を保有しているとどのようなメリットがあるのか、どのようにキャリアに活かしていけるのか、一般的にはあまり知られていません。
今回は簿記1級の資格について、簿記1級とはどのような資格なのかということや、簿記1級を持っている場合にはどのような転職先があるのか、簿記1級をキャリア形成にどのように活かせるのかなど詳しく解説させていただきます。
Contents
簿記1級とはどのような資格か
まず、簿記1級とはどのような資格なのかについて簿記検定試験や簿記1級の資格概要、メリット・デメリットなど順を追って解説します。
簿記検定試験とは
簿記検定試験とは、簿記の基礎知識や計算能力などを判定するための試験です。簿記検定には主催者によって、日商簿記・全経簿記・全商簿記の3種類があります。企業では「簿記=日商簿記」として扱われています。主催者や概要は以下のとおりです。
通称 | 正式名称 | 主催者 | 概要 |
日商簿記 | 日商簿記検定試験 | 日本商工会議所・各地の商工会議所 | ・簿記検定の中で最もよく知られています。 ・社会人も受験し、就職活動にも有利です。 ・1級・2級・3級・簿記初級・原価計算初級の5段階で、1級が最上位級です。 ・1級取得で税理士試験の受験資格を得られます。 |
全経簿記 | 簿記能力検定 | 全国経理教育協会 | ・経理専門学校の学生が受験します。 ・上級・1級・2級・3級・基礎簿記会計の5段階で上級が最上位級です。 ・上級取得で税理士試験の受験資格を得られます。 |
全商簿記 | 簿記実務検定試験 | 全国商業高等学校協会 | ・商業学校の学生が対象です。 ・1級・2級・3級の3段階で、1級が最上位級です。 ・1級の取得を推薦入試合格の条件としている大学や短大もあります。 |
簿記1級資格の概要
日商簿記1級の試験は毎年6月と11月の年2回実施されています。受験資格に特に制限は無く、誰でも受験できます。試験科目は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目です。1科目でも成績が悪いと足切り制度にかかり合格できないため、総合力が求められます。試験時間は3時間で、合格率は10%前後と超難関の試験です。
出題範囲は広く、簿記2級の3倍程度と言われています。簿記1級に求められる知識レベルは「大学の商学部などで簿記を専攻した者が有する知識」レベルで、「公認会計士・税理士などの国家資格への登竜門」と定義されています。
簿記1級資格のメリット
簿記1級を保有している場合のメリットは、以下のとおりです。
・転職において一定の評価が得られます。
・会計知識が深まり、簿記の高度な専門能力を保有していること証明できます。
・資格手当が支給されます。
・税理士試験の受験資格が得られます。
簿記1級資格のデメリット
簿記1級を保有している場合のデメリットは、以下のとおりです。
・士業の国家資格のように独立開業することはできません。
・士業資格と異なり、簿記1級保有者でないとできない業務(独占業務)がないため、簿記2級保有者との差別化が図れません。
・資格だけでは転職の切り札とはならず、経理業務などの実務経験やPCスキル、コミュニケーション能力など他のスキルや能力が必要となります。
・中小企業や零細企業への転職の場合にはオーバースペックに思われ、遠慮されてしまう場合もあります。
簿記1級を持っている場合の転職先
簿記1級を保有している場合、資格を活かせる転職先の候補としては、主に会計事務所と一般企業の経理・財務の2つの選択肢があります。以下、それぞれについて解説します。
<転職先候補1:会計事務所>
簿記1級を保有している場合、転職先候補の1つとして会計事務所があります。一般的に会計事務所の求人では、簿記1級の資格よりも科目合格者を含む税理士資格を優先する傾向があります。また、求人応募資格では日商簿記2級とされているケースが多く見受けられますが、簿記1級を条件としている募集はほぼ見られません。
会計事務所への転職において、簿記1級保有の事実のみを高評価して優遇されるということは少ないようですが、簿記1級が評価されないわけではありません。
税理士資格獲得への道筋があるため、そのことをベースに面接に対応すれば高評価につなげられます。
<転職先候補2:一般企業の経理・財務>
簿記1級を保有している場合、もう1つの転職先候補は、一般企業の経理・財務です。特に大企業や大手外資系企業への転職には有利となります。
大企業や大手外資系企業の場合、高度な会計処理が必須となるため、簿記1級は、簿記2級などに比べて高度な専門知識を身につけている証明になることや超難関の資格を突破した実績からの能力の高さ、目標に取り組む積極姿勢や意欲、向上心など採用に向けてのアピールポイントが多いからです。
また、大企業や大手外資系企業の場合、大半が連結会計システムを導入していて、連結決算における簿外の資産・負債の取り扱いの判断や子会社や関連会社の決算を精査する場合など、簿記1級レベルの知識と帳簿読解能力が必要になります。簿記1級保有の人材は、部長クラス以外は希少なので、簿記1級保有者の求人は意外と多いのです。
ただし、大企業や大手外資系企業の場合の簿記1級保有者の求人は20代から30代前半と若年層の場合が多いことや、中小企業や零細企業の場合にはオーバースペックと判断され敬遠されるケースもあることを念頭に入れておきましょう。

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簿記1級をキャリアに活かす方法
簿記1級をキャリアに活かす方法は、一般企業から会計事務所へのキャリアチェンジ、一般企業から別の業種の一般企業への業種転換、それらにプラスして税理士を目指すという3つの方法があります。以下、それぞれについて解説します。
一般企業から会計事務所へのキャリアチェンジ
簿記1級を保有している場合は、会計事務所の実務経験が無くても、一般企業の職務経歴を活かして会計事務所へのキャリアチェンジが可能です。簿記2級よりも簿記1級のほうがそれ以上の知識があることの証明になるからです。
この場合にも、簿記1級の資格だけではなく、経理・財務の実務経験やさまざまなスキルなどをアピールすることが重要なのは言うまでもありません。
特に30代後半から簿記1級をキャリアに活かす場合には、若年層の求人が中心の大企業や大手外資系企業への30代後半の求人が減少することから、会計事務所へのキャリアチェンジがおすすめです。待遇面が希望に合わず、もっと年収を上げたい、独立開業も考えたい、という方は士業へのキャリアアップを検討してみてください。
一般企業から一般企業への業種転換
簿記1級をキャリアに活かす方法の1つとして、一般企業から別の業種の一般企業への業種転換がおすすめです。経理職以外の職種でも会計の深い知識があるというのは強みだからです。職歴によっては、即戦力としての転職が可能です。
例えば、IT系企業でシステム開発における勘定系との連携をする場合、会計の知識があることはとても大きな強みとなります。営業やマーケティングでも、帳簿が読めれば社内外の評価が高まります。
一般企業の転職を考えた場合に一番に浮かぶのが経理・財務ですが、先に挙げたように他の分野でも積み重ねた知識と経験を生かせる場所は見つかるでしょう。
士業へのキャリアアップを目指す
大企業や大手外資系企業への転職の場合、簿記1級の資格を活かせるのは20代から30代前半と言われています。特に30代後半以降に簿記1級の資格を活かすことを考えている場合には、その専門的知識を活かせる士業へのキャリアアップを目指すことをおすすめします。
税理士や公認会計士、中小企業診断士など経営関連士業は、簿記1級資格の専門的知識が活かせます。特に、簿記1級の内容は税理士試験の会計科目(簿記論・財務諸表論)と重なるため、合格を狙う下地にもなるでしょう。士業へのキャリアチェンジの際は資格試験に合格する必要があることはもちろんですが、実務経験を要求される点に注意が必要です。
これらの国家資格取得にチャレンジして、キャリアアップを図ることも現実的な簿記1級資格の活用方法です。
まとめ
これまで、簿記1級の資格について、資格の内容やメリット、転職先の候補、キャリア形成への活用方法などについてご紹介させていただきました。
簿記1級を取得する際に、目的を明確にすることはとても重要です。
簿記1級の試験範囲と税理士試験には重複する部分も多いので、税理士資格を取得することが目的であるならば、簿記1級はパスして、税理士試験にいどむという人も多いはずです。
しかし、税理士試験には受験資格があるため、職責や学歴で受験資格を持っていない人は簿記1級を取得して、受験資格を得ると言う場合もいらっしゃいます。
簿記1級取得に必要となる勉強時間はとても大きいので、目指す前にしっかりと目的を確認しておきましょう。
簿記1級を保有していることは食いっぱぐれないといわれており、それだけで会計業界や一般企業の経理・財務への転職活動において、有利であることは間違いありません。簿記1級の資格や自身の職務経歴をキャリアにどのように活かしていくのか、仮に方向性を迷っている場合には、業界専門のエージェントに相談して転職の検討をすることも考えてみてください。
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