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独立開業した税理士は食えないって本当? 独立が難しいと言われる理由や独立する上で重要なポイントを紹介
2025/02/10
税理士を目指している方の中には「ゆくゆくは独立し、事務所を構えたい」と考えている方も多いでしょう。
実際、独立して個人事務所を設立している税理士は少なくありませんが、その一方で「税理士は独立しても食えない」という声も散見されます。なぜ税理士は独立してもやっていけない、と言われるのでしょうか?
本記事では税理士の独立で食べていくのが難しいと言われる理由や、税理士の平均年収、独立する上で重要なポイント、独立以外に選択できるキャリアについて解説します。
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コンテンツ目次
税理士は独立しても食えないと言われる4つの要因
インターネットや書籍では「税理士は独立しても食えない」「独立開業は厳しい」という声がいくつか見つかります。
なぜ税理士は独立しても食えないと言われるのか、その要因は大きく分けて4つあります。
シェアの奪い合い
税理士試験は毎年1回実施されており、合格率はおよそ2割前後で推移しています。
決して多い数字とは言えませんが、受験者数が多い分、合格者数は例年5,000人を超えるケースがほとんどです。もちろん、合格者全員が税理士登録を行うわけではありませんが、税理士には定年がないこともあり、税理士登録者数は年々増加傾向にあります。
実際、国税庁が公開しているデータによると、2015年には約7万5,000人だった税理士登録者数が、2024年11月末日時点では約8万1,000人と、およそ6,000人も増加しています。
税理士が増えると、当然シェアの奪い合いになるため、新規顧客をうまく獲得できなかった税理士は食えない状態になるケースが多いようです。
激化する価格競争
昨今の税理士業界では、限りあるシェアを獲得しようと、価格競争が年々激化しています。特に新規参入したばかりの税理士は、既存の事務所と比較して実績面で不利なので、価格をできるだけ下げて集客を試みるケースが多数見受けられます。
価格を下げれば、当然ながら収益も減ってしまうので、経営が成り立たない状態に陥る事務所も少なくないようです。
中でも人手が少ない個人事務所は各案件の収益が業績に直結するため、価格競争のしわ寄せを受けやすい傾向にあります。
便利なシステムの台頭
税理士の主な仕事は、確定申告をはじめとする税務代理や税務書類の作成、税務相談などです。この3つの業務は税理士だけが行える独占業務であることから、苦労せず依頼が舞い込んでくるのが一般的でした。
しかし、近年は便利な会計ソフトや会計システムの台頭により、面倒な経理業務の自動化が進んでいます。
特に最近はAIを搭載した会計ソフトも多数リリースされており、書類データを読み込むだけでAIが自動的に仕訳したり、決算報告書の出力をサポートしたりすることも可能になりました。
AIの精度は今後さらに上がると言われており、現行のシステムよりも多くの業務をこなせるようになる日も近いかもしれません。
こうした会計ソフト・システムが台頭した結果、これまで税理士に任せていた業務の大半を自社内で処理できるようになり、税理士のニーズが減少。事務所を開業してもなかなかシェアを獲得できず、廃業する事例も少なくないようです。
経営・営業スキルがないまま独立するケースが多い
一定以上の規模の会社に所属する税理士の場合、依頼は会社の営業担当などが取ってきてくれるため、税理士は案件をこなすだけで良いことが多いです。そのため、税理士としての経験や実績は積めても、営業や経営に関するスキルは磨かれる機会が少ないのが一般的です。
営業や経営のスキル・ノウハウがないまま独立開業すると、集客の段階でつまずいてしまい、経営を軌道に乗せられないまま終わってしまうパターンもままあるようです。
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税理士の年収と廃業率
ここまで税理士が「食えない」と言われる理由について説明してきましたが、実際のところ、税理士の年収や廃業率どのくらいなのでしょうか。
税理士の年収
厚生労働省が発表している令和5年賃金構造基本統計調査の結果によると、企業規模計10人以上の事務所に属する公認会計士・税理士の現金給与額(月額)は53万1,000円、年間賞与その他特別給与額は143万7,000円です(※1)。
月額給与を年に換算すると53万1,000円×12カ月=637万2,000円となり、年間賞与と合算した額は780万9,000円です。同年の一般労働者の平均賃金は318万3,000円なので、税理士の平均年収はかなり高めであることがうかがえます(※2)。
ただ、これは事務所に所属する税理士や公認会計士の年収であり、独立開業した税理士の年収とは事情が異なります。
日本税理士会連合会が2004年に実施したアンケートによると、独立開業している税理士の平均年収は約744万円だったそうです。内訳をチェックすると、年収が1,000万円を超える層も少なくない一方、年収300万円以下の層が全体の約3割という結果となっています。
つまり、開業税理士の年収は格差が大きく、中には一般労働者の平均賃金以下の年収で生活している方も少なくないことが分かります。
※1 参考:e-Stat「令和5年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(2024-12-18)
※2 参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況 賃金の推移」(2024-12-18)
税理士の廃業率
全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)によると、税理士事務所の休廃業件数は81件で、2022年比で170.0%増となり、業種別の前年比増加率1位です。次点の一般機械修理の前年比増加率が85.5%であることを考えると、税理士事務所の廃業率が前年比から大幅に増加したかが分かります。
増加率の大幅上昇の原因として、以前から問題視されていた税理士の高齢化の他、業界内の競争激化による顧問企業の減少、顧問料の低下、さらにはインボイス制度などの影響が大きかったのではないかと考えられています。
これらの問題は今後も続くと予想できるため、税理士として独立開業することを目指すのなら、生き残るための工夫や努力を行うことが大切です。
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税理士が独立する上で押さえておきたいポイント
独立開業しても食えない税理士が多いのは事実ですが、一方で、年収が1,000万円を超えている開業税理士も少なくありません。
食っていける税理士になることは簡単なことではありませんが、独立開業の準備をしっかり行っておけば、経営を軌道に乗せることは十分可能です。
ここでは税理士として独立する際に、押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
集客の方法を決めておく
税理士が飽和状態にある現代では、いかにして新規顧客やリピーターを獲得するかが重要なポイントになります。
税理士の集客方法は、大きく分けてオフラインとオンラインの2つです。
オフラインでの集客方法としては、これまで築いてきた人脈からの紹介、チラシの配布、飛び込み営業などが挙げられます。このうち特に即効性が高く、かつコストもかからないのは人脈を頼る方法です。友人からの依頼を受けたり、知り合いの士業から顧客を紹介してもらったりすれば、すぐに案件につながるでしょう。
ただ、独立前にどれだけの人脈を築けたかによって集客率は大きく左右されます。またシェアの奪い合いになっている現代では、同業からの紹介は期待できない可能性もあり、人脈だけに頼るのはリスクが高いと言わざるを得ません。
そのため、既存の人脈を利用しつつ、他のオフライン手段やオンラインでの集客も並行して行うことが大切です。
オンラインの集客方法としては、SEO対策した公式ホームページを設立する、SNSでアプローチする、Web広告を利用するなどの方法があります。
いずれもノウハウがないと目立った効果を得られない可能性があるので、WebサイトやWeb広告に特化した業者にアウトソーシングを頼むのも一つの方法です。
なお、多くの集客方法を実践すれば、それだけ高い効果を期待できますが、その分手間やコストも増加します。どの方法をどれだけ利用すれば高い費用対効果を見込めるのか、よく考えてから集客を始めるようにしましょう。
営業力を身につける
さまざまな集客方法によって事務所に興味・関心を持つ方が増えても、肝心の営業力がなければ正式な依頼につながるチャンスを逃してしまいます。リード(見込み顧客)を顧客として固定するためには、顧客のニーズを正確に把握し、強固な信頼関係を築いていかなければなりません。
そのためには、顧客との円滑なコミュニケーションや、自身を売り出すアピール力といった営業力を求められるので、独立開業前にある程度のスキルを磨いておくと良いでしょう。
具体的には、ロールプレイングなどを行い、顧客の話を正確に読み取るヒアリング力を養うのが効果的です。
独立前に税理士事務所で働く場合は、上司や先輩の営業手法を間近で観察し、そのテクニックやノウハウの習得に努めるのが近道です。
他の事務所との差別化を図る
需要よりも供給が勝っている税理士業界で生き残るためには、他の事務所との差別化を図り、顧客に選ばれる事務所を目指す必要があります。
特に新規参入する場合は、既存の事務所に比べて業績や実績の面で不利な立場にあるため、他の事務所とは違う点(自社ならではの強みやアピールポイント)を積極的にアピールしていくことが重要です。
そのためにはまず自己分析を行い、自社の強みや弱みを明確にするところからスタートしましょう。
分析方法は複数ありますが、代表的な例として、自社を取り巻く顧客や競合の現状と自己の強み・弱みから多角的に自己分析を行う3C分析が挙げられます。
分析結果を基に、自社の得意な分野で差別化を図ったり、独自のサービス内容を盛り込んでアピールしたりすれば、ニーズとマッチした顧客をスムーズに取り込めるでしょう。
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独立以外に選択できるキャリア
税理士として安定した収入を得る方法は、独立開業だけではありません。「現在の待遇に不満があるけれど、独立開業するのは不安」という方は、他のキャリアを選択するという方法もあります。
ここでは独立以外に選択できる税理士のキャリアを3つご紹介します。
勤務税理士としてキャリアアップを目指す
勤務税理士と一口にいっても、その待遇や任せられる仕事は事務所によって異なります。より大きな仕事を扱いたい場合や、今以上の好待遇を希望する場合は、他の税理士事務所や税理士法人への転職も検討してみましょう。
ただ、転職先の業務形態や待遇などを事前にきちんと下調べしておかないと、転職後に「こんなはずでは……」と後悔することになりかねません。
転職先を決める際は、自身が希望する条件にマッチする職場かどうかをしっかり吟味しましょう。
公認会計士へのキャリアチェンジを図る
税理士から公認会計士へキャリアチェンジするケースは決して多くありませんが、一つの選択肢として検討することは可能です。
公認会計士の主な仕事は企業が作成する財務諸表を第三者の目線でチェックする監査業務です。
また、さまざまな監査業務を通して習得した知識やノウハウを生かし、コンサルティング業務を提供している公認会計士もいます。
いずれも現時点ではソフトやシステムでの代行が難しい業務なので、税理士としての将来の不安を感じたら、公認会計士へのキャリアチェンジを考えるのもありでしょう。
他の産業への転職を考える
税理士が働ける場所は税理士事務所や税理士法人だけではありません。
例えば、企業の経理部門やコンサルティング会社の税務部門で働いたり、金融機関の企業内税理士として従事したりする選択肢もあります。
全ての税理士が税理士事務所で働くという固定観念に縛られているとキャリア選択の幅を狭めてしまう可能性があるので、ご自身のスキルや希望する働き方などを考慮し、さまざまな職場を検討してみてはいかがでしょうか。
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独立開業で成功するためには入念な準備が必要
独立した税理士が食えないと言われる背景には、シェアの奪い合いや価格競争の激化、便利なシステムの台頭といった問題があります。
また、勤務税理士として働いている間に十分な営業スキルや経営力を磨いておかないと、満足な集客ができずに廃業に追い込まれてしまうこともあります。
税理士として独立開業したいのなら、集客の方法をあらかじめ決めておく、営業力を身につける、他の事務所との差別化を図るなど、入念な下準備を行っておくことが大切です。
また税理士のキャリアパスは独立だけに留まらず、勤務税理士としてキャリアアップを図る、他の産業への転職を検討するなどの方法もあるので、自身のニーズや希望を踏まえ、さまざまな働き方を模索してみましょう。
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- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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