財務分析で分かることとは?4種の分析方法について解説!
2023/11/01
ビジネスを行う以上、企業は事業の継続と拡大をし続けることが求められます。また、経営危機に陥らないためにも定期的な経営状態の確認が欠かせません。財務分析は、企業の健康診断ともいえる大切な作業です。企業の財務状況を把握することは、問題点が明らかになるため改善にも役立ちます。この先の経営戦略を立てるうえでも必要な要素となるでしょう。そのため、経営者は財務分析について把握しておかなければなりません。
今回は、財務分析について解説するとともに、財務分析を活用する方法についても解説します。
コンテンツ目次
財務分析とは
財務分析とは、貸借対照表や損益計算書などをベースに、会社の現状と課題を明確にして分析することです。財務分析は、主に収益性・安全性・生産性・成長性の4つに分類されます。それぞれ目的が異なり、すべての分析を活用することが大切です。まずは、4つの分類について解説していきます。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 成長性分析
収益性分析
企業が収益を上げる力がどれくらいあるのかを分析する手段を収益性分析と呼びます。ここで大切なのは、利益の具体的な額ではありません。比率を見ながら分析していくのがポイントです。
主な指標になるのが、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率で、指標が高ければ高いほど、効率的に高い売り上げを得ていることが分かります。企業が手がける戦略や経営の状態がダイレクトに反映される指標ともいえるでしょう。
加えて、かかった経費が占める割合が売上高のどれくらいになるかをチェックすることで、経営の実態をさらに明確にすることができます。例えば、売上高営業利益率が下がったとしても、どのような内容の経費が多くかかったのかによって対策は異なるでしょう。
安全性分析
収益性分析が収益に着目しているのに対して、安全性分析は支払い能力を把握するために行います。財務的に安全な企業であるかどうかが明らかになる分析です。例えば、流動比率や自己資本比率が安全分析の指標に該当します。
流動比率は、1年間に企業が得た現金と預金の額を表す流動資産と、支払いである流動負債を比較したものです。流動比率が低い企業は、短期的な支払いが多く財務的にも安全性も危ぶまれます。一方、自己資本比率は、総資本に対する自己資本の比率を示す指標です。自己資本が少ないと、自己資本比率も下がり、経営が不安定であることが明らかになります。
こうした安全性分析は、企業が倒産する可能性も示唆する大切な指標です。そのため、自社はもちろん取引先や銀行も重要視するポイントといえるでしょう。ただし、安全性の角度で見れば安全性分析の指標は高い方が健全ですが、あまりにも高すぎる数値になると、効率的な経営がなされていないと見なされる可能性もあります。
生産性分析
生産性分析で確認できるのは、従業員や設備といった経営資源を企業が効率良く活用できているかどうかです。また、経営資源が売り上げや付加価値の創出に対してどれだけ影響しているかを確認することもできます。生産性分析でよく使われる指標は労働生産性です。従業員一人あたりがどれだけの付加価値を生み出しているかが明確になります。また、生産性の土台となるのは、人や設備だけではありません。お金や情報なども生産分析の指針となるでしょう。
生産分析をすることで、少ない労力で高いリターンを得るための対策を練ることができます。また、獲得した利益を次の労力に活かしたうえでうまく回せているかも、企業が成長するために大切なポイントです。
成長性分析
企業がこれまでに辿った成長の過程やこれからの可能性をはかるために使うのが成長性分析です。売上高の伸び率や経営利益伸び率で分析することができます。企業が利益を追求するには、利益率を上げることや規模を大きくしていくことが欠かせません。こうした目標を達成するにあたって、従業員の士気を上げることも大切でしょう。
とはいえ、成長率を闇雲に上げれば良いというわけではありません。あまりにも急激な成長は、安全性の低下をもたらし、顧客の満足度を下げる可能性があります。安定して企業を成長させていくためには、長いスパンで見据えて、あらゆる角度でバランスを整えることが大切です。
財務分析に必要な資格
財務分析をするうえでは、簿記やお金の流れなど、押さえておきたい知識がいくつかあります。必ずしも資格を取得する必要はありませんが、財務分析に役立つ資格は取得しておくと、より正確に分析することができるでしょう。おすすめしたい3つの資格について解説します。
- 公認会計士
- 日商簿記検定
- 中小企業診断士
公認会計士
公認会計士は、会計監査やコンサルティングなどを担う専門家です。資格を取得すれば、会計監査のプロとして企業の財務処理も行えるようになります。おまけに、公認会計士の有資格者が税理士登録を行えば、企業の税務を担うことも可能です。取得の難易度こそ高い資格ですが、会計に関する多彩な仕事を担える資格といえます。公認会計士の資格取得方法や仕事内容については、別ページでも詳しく紹介していますので、こちらをご覧ください。
日商簿記検定
財務分析をするにあたって、簿記の基礎知識は欠かせません。必ずしも資格を取得する必要はありませんが、日商簿記の2級か3級程度は取得しておくとスムーズでしょう。簿記の知識が全くないと、専門用語や数字の意味が分からないため分析自体が困難です。
日商簿記では、企業の財務分析に不可欠な財務諸表の作成を学習します。損益計算書や貸借対照表の作成を学ぶことで、財務諸表がどのような構造で成り立っているかが理解できるでしょう。1級となると難易度がかなり高くなりますが、2級や3級程度であれば、しっかりと勉強することで合格できます。日商簿記2級を取得した場合に活かせる主な企業や職種は、以下の通りです。
- 保険会社
- 会計事務所
- 経営コンサルティング
- 一般企業の経理部門
どの企業や職種においても、財務分析は欠かせません。取得した簿記の知識は十分活用できるでしょう。この他、簿記2級や3級が活かせる仕事については、以下のページで解説をしていますので、こちらをご覧ください。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、その名の通り企業経営における問題点を分析し、解決方法を示す専門家です。クライアントである企業の診断と経営助言を行うかたわら、経営に関する講演会やセミナーを開催することもあります。企業診断には、マーケティングや人事戦略を初めとした知識が必要となりますが、財務や会計についても精通しておくことが不可欠です。
資格を取得することで、経営者の目線で多角的に財務分析を行いやすくなるでしょう。この中小企業診断士については、別ページでも詳しく解説しています。試験の概要や合格のポイントなどを知りたい方であれば、こちらをご覧ください。
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財務分析を行うために必要な書類
財務分析は、自社の経営状態を知り、競合他社や自社における過去の状態と比較するのが目的です。そのため、財務に関わる書類が必要となります。つまり、貸借対照表と損益計算書があれば、ある程度の財務分析が行えます。
ここからは、財務分析のベースとなる書類について解説します。
- 貸借対照表
- 損益計算書
貸借対照表
貸借対照表は、決算日の段階で企業がどのような財政状態にあるのかを数字にまとめたものです。資産と負債、純資産が表示されており、企業によってその内容はさまざまです。
例えば、資産には現金や預金、売掛金の他に固定資産も含まれます。一方、負債に含まれるのは、買掛金や借入金などです。他人資本とも称され、他から借りているお金のことを表しています。また、純資産とは、資産と負債の差額を指しており、実際に企業が持っている自己資産のことです。
損益計算書
貸借対照表が決算時点における会社の財政状態を表しているのに対し、損益計算書は1年間の経営状態を表しています。単純にいえば、会社の収入である収益と会社が支払った費用を示す表です。つまり収益と費用の差額である利益を表しています。いわば、企業における1年間の成績表であり、損益計算書を理解していなければ、企業の現状を把握することができません。
外部分析と内部分析について
財務分析では、貸借対照表と損益計算書をベースに、情報を得て経営状態を分析していきます。財務分析は、企業の内部だけで行うものではありません。公表されている財務諸表を使って、外部の人が財務分析をすることもあります。
内部分析は、企業の経営者が自社の経営状態を分析するために行うものです。財務諸表だけではなく、内部の人間だからこそ分かる細かなデータを駆使して分析することができます。
一方、外部分析は、投資家や企業アナリストなどが行う財務分析です。対象企業が支払い能力を持っているかを判断する信用分析と、投資に値する企業かどうかをチェックする投資分析の2パターンがあります。外部分析では、財務諸表だけではなく与信調査データを使って分析するのが一般的です。
財務分析を行う目的
財務分析は、単純に分析しただけでは意味がありません。正しく理解して賢く活用することで企業の成長に役立たせることができます。実際に財務分析がどのようなシーンで役立つのかを把握しておくと、スムーズに経営改善をすることができるでしょう。以下では、財務分析を活用する目的について、立場別に3点ご紹介します。
投資家や銀行の場合
財務分析を使うと、競合他社との比較が可能になります。自社の分析で表された数値が、他社とどのように違うのかを比較することで、現在の経営状態が明確になるでしょう。競合他社と比較する際に大切なのは、自社と同じような規模の企業を比較対象として選ぶことです。
業務形態やビジネスモデルが異なったり、規模があまりにかけ離れていたりする場合、お金の流れも同じとは限りません。正しく経営状態を判断するためにも、規模はもちろんビジネスモデルが近い企業と比較するようにしましょう。競合他社と比較することで、自社の仕入れ金額の割合や経費の水準、従業員の生産性などが明確になり、投資すべきポイントや経営改善に関わる仮説が立てやすくなります。
企業の経理担当者の場合
財務分析は、他社と比較するうえでも十分役立ちますが、自社が持つ過去データと比較する際にも欠かせない指標です。年々成長していれば問題ありませんが、多くの会社は紆余曲折ありながら進んでいきます。そのため、好調とはいえない年もあるでしょう。しかし、日々の業務に忙殺されていると、自社の状況を客観的に捉えられなくなります。現状を客観的に知ることは、会社の成長に欠かせないポイントです。今年の指標が去年と比べてどう違うのかを把握すると、経営方法の改善策が見えてきます。
経営者の場合
企業が成長するうえで、経営者による経営判断は大きなターニングポイントとなります。極端にいえば、事業の継続や撤退といった選択も考えられるでしょう。また、日常的に対処すべき問題も経営判断の1つです。経営判断を正しくスピーディーに行うことで、企業の成長曲線が決まるともいえるでしょう。
経営者は、経営判断において冷静な視点が求められます。感情的に経営判断をしてしまえば、業績を悪化させかねません。そこで役立つのが財務分析です。指標として表された分析を元に、単なる利益や損失に惑わされることなく判断をすることができます。財務分析は、確かな判断基準となるでしょう。財務分析を踏まえたうえで、数値化できない点も含め総合的な判断をすることも必要です。
まとめ
今回は、財務分析の基本情報や目的について詳しく紹介をしました。分析はあくまで指標であり、一概に良い比率を示すことはできません。しかし、競合他社や自社の過去データと比較するうえで大切な手法です。日常的な業務では見えなかった企業の状態が分かりやすくなり、強みや弱みを把握するのにも役立ちます。
財務分析を行い、自社の状況を把握することは経営者にとって必須事項です。とはいえ、財務分析は専門性の高い仕事のため、経営者の方が自ら財務分析を行うことが難しい場合は、専門知識のある担当者に依頼することになるでしょう。
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