IPO準備企業に転職するメリットは?管理部門の人材が求められる理由
2025/10/20
大企業や中小企業で一定の実務経験を重ねると、日々の業務が安定する一方で新たな挑戦の機会が減りがちです。その転機としてベンチャー企業へのキャリアシフトを検討し始める方は少なくありません。
とりわけIPO(新規上場)を目指すベンチャーであれば既に確立された大企業やメガベンチャーとは異なる希少性の高い実務に触れられ、そこで培った知見や成果が自身の市場価値を大きく押し上げると期待するケースも多いでしょう。
もっとも、IPOベンチャーへの転職には固有のリスクも伴います。将来の上場可否や事業の不確実性、ワークロードの高さなどを踏まえると不安や逡巡を感じるのは自然な反応です。
そこで、本記事ではIPOベンチャーに転職するメリットとデメリットを整理するとともに、ベンチャーで求められる人材像などについて分かりやすく解説していきます。
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コンテンツ目次
IPO準備企業とは
IPO準備企業とは、新規上場を目指している企業のことです。
IPOは英語の “Initial Public Offering” の略で、日本語では一般に「新規公開株式」や「新規上場」と表現されます。
上場のメリットとしては株式市場を通じて幅広い投資家から資金を調達できること、ならびに企業の知名度や社会的信用力が高まることなどが挙げられます。
もっとも、IPOは思い立ってすぐ実行できる性質のものではありません。実現までには相当な準備期間と体制整備が必要で、一般的には少なくとも3年以上を見込むのが通例です。
最大の理由は、証券取引所へ上場申請する際に直前2期の財務諸表について「適正に表示されている」旨の監査証明を添付する必要があるためです。
この会計監査は外部の監査法人に委嘱して受ける必要があり、監査に耐える会計方針・決算プロセス・内部統制の整備にも時間がかかります。
さらに、会計監査の対応だけでなく上場審査で問われる開示体制の構築、ガバナンスや内部統制(J-SOX)の整備、規程類の制定・運用、証券会社・印刷会社・信託銀行など関係先との調整、申請書類の作成・レビューといった膨大なタスクが発生します。
実務面ではこれらを推進するために専任のIPO準備プロジェクトチームを立ち上げるのが一般的です。
このようにプロジェクトチームの結成・運用、直前2期の会計監査対応、および審査要件を満たすための社内体制づくりまで考慮すると、IPO実現には最低でも3年程度の期間が必要になる、と理解しておくとよいでしょう。
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IPO準備中企業に転職するメリット
会社が成長していくのを実感できる
IPOを目前に控えた企業には、独特の高揚感と推進力が生まれます。
上場に向けた体制整備が進む中で組織全体の水準が一段引き上げられ、社員一人ひとりにもポジティブな緊張感や期待が広がります。自分たちが業界に新しいうねりを起こせるのではないか、そんな空気が社内に満ち、経営陣にとっても今後の企業像や成長戦略を描きやすくなる時期です。
達成感に加え、資本市場を前提とした意思決定やガバナンスの方向性が明確になっていきます。とはいえ、「新しい基準を自分たちで作る」作業は響きこそ良いものの実務は想像以上に煩雑です。
大企業であればアルバイトや外部委託で片づくような細かな雑務であっても、ときに自分たちの手でやり切らなければなりません。
しかし、まさにこの総力戦のプロセスが各人にとっての役割ややりたいことを「会社」という器を通じて具体的に捉え直す契機になります。
目的意識が研ぎ澄まされ、当事者意識が強まる。この手触りは大企業ではなかなか味わえない、IPO準備期の企業ならではの大きな魅力と言えるでしょう。
キャリアの幅が広がる
IPO準備フェーズの会社へ転職して関与できる業務の多くは、その時期の企業でなければ触れられない実務です。
証券会社での上場引受審査や監査法人でのIPO準備企業監査といった一部の専門的な立場は例外ですが、一般に経験できるタスクの大半はIPO準備中の現場だからこそ身につくものだといえます。
さらに、この段階で培うスキルは汎用性が非常に高いのも大きな強みです。たとえば開示資料(有価証券報告書・目論見書等)の作成プロセスや、内部統制(J-SOX)体制の設計・運用整備といった実務はどの会社でも上場を目指すなら必ず求められる共通要件であり、企業や業界が変わっても通用します。
結果としてIPO準備企業での実務経験はキャリアの市場価値を高める即戦力の証明になり、スキルアップとキャリアアップの双方に直結します。
上場後の運用フェーズでも、あるいは他社に移った後でも再現性高く活かせるため、長期的な職業人生にとっても極めて投資対効果の高い経験だと言えるでしょう。
大きな収入を得るチャンス
新規に上場する企業の多くは、いわゆるベンチャー企業が中心です。
そして、そうした企業で働く社員のなかには創業者や役員ではないにもかかわらず数千万円規模の資産を形成している人も珍しくありません。少数精鋭で事業を推進する体制ゆえに、一般社員にも大きなリターンを得る機会が開かれているからです。
ベンチャーでは経営陣の力量はもちろん、新たに加わるメンバーにも一定以上の実力と自走力が求められます。
環境は相応にハードですが、そのぶん成果が見えやすく評価もダイレクト。日々の仕事に真摯に取り組むことで、重宝されながらスキルを加速度的に伸ばすことが期待できます。
また、利益配分の対象となる人数(社員数)が比較的少ないため会社が利益を出せば一般社員にも大きく還元されやすいという構造的メリットがあります。
さらに、現場への権限委譲の機会が多いのもベンチャーの特徴で、任される範囲が広がるほど経験値・裁量・報酬といった形で将来のリターンが積み上がる好循環を生み出せます。
ストックオプションを得られる可能性がある
IPO準備期の企業のなかには福利厚生の一環として従業員向けストックオプション(SO)を付与しているところも少なくありません。
ストックオプションとは、あらかじめ定められた一定の期間内に決められた価格で自社株を購入できる権利のことです。
従業員にとっては強力なインセンティブ制度であり、勤め先の株価が上昇すれば自らの利益にも直結します。
言い換えれば、成果へのコミットが形を変えた実力主義のボーナスとして反映される仕組みだと言えるでしょう。
とりわけ上場前の成長局面では企業規模の拡大や業績向上に伴い株価の上振れ余地が大きく、付与されたSOがまとまった利益につながる可能性があります。
加えて「自分の取り組みが企業価値に跳ね返る」という手触りがモチベーションの向上を促し、日々の業務改善や生産性向上へのドライブにもなり得ます。
一方で留意すべき点もあります。採用時点でSO制度が整っている企業へ転職したとしても、企業の株価が上がらなければ従業員の利益にはならないという現実です。
あくまで入社後に自分の成果を積み上げ会社の成長に貢献し、その結果として株価が上昇したときに初めてメリットを享受できるという成果連動型の性質を忘れないようにしましょう。
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どのようなIPO準備会社を選ぶべきか
IPO準備企業とひと口に言っても、実際には上場までに相当な時間を要する初期段階の会社から申請直前のフェーズにいる会社まで幅があります。
あわせて、報酬水準や待遇(現金報酬・賞与・SOなど)もIPOまでの残り期間や属する業界によって大きく異なります。
ユニコーン企業のような成長性が高い会社
いわゆるユニコーン企業は、高い成長性とダイナミックな仕事を求める人に好相性です。
成長スピードが速い企業ほど採用・組織拡大のペースも上がり、新しいポストやチャンスが次々と生まれます。
さらにストックオプション(SO)の付与がある場合は、企業価値の伸長とともにまとまった株式売却益を得られる可能性も高まります。
独自の技術などわかりやすい強みのある会社
一方でIPO準備段階の企業は上場企業に比べると財務基盤が脆弱で、経営が一度つまずくと破綻リスクが相対的に高い側面もあります。
安定性を重視して転職するなら会社の規模だけでなく、市場で差別化できる固有の強み(独自技術・知財・ネットワーク効果等)を備えているかを確認しましょう。
独自技術を持つIPO準備企業は価格競争に巻き込まれにくく、競争優位を維持しやすいため選択肢として有力です。
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IPO準備企業に求められる人材
管理部門でIPO経験がある人
幹部も現場も手探りで前進することになりがちなIPO準備の局面では、準備開始から上場達成までの一連の流れを実体験している人材がいるだけで組織の推進力は大きく変わります。
実務の勘所や落とし穴を理解しているため、プロジェクトの立ち上げ・設計・運用の各段階で即戦力として高い付加価値を発揮できるからです。
そのような実績を持つ人はこれまで培った知見やネットワークを武器によりやりがいの大きい企業や処遇面で魅力のある企業へ活躍の場を広げられる可能性が高く、キャリア上の選択肢も一段と広がると言えるでしょう。
経理・財務など管理部門を担える人材
IPOを目指すベンチャーで最もよく見られる課題は、業績や将来性は十分に高いにもかかわらず管理体制の整備が追いついていないという状況です。
上場には証券取引所による上場審査や監査法人による会計監査など、厳格なチェックをクリアして承認を得る必要があります。
その土台として経理・財務・人事・法務といった管理部門の機能をルール・プロセス・体制の面からしっかり構築することが不可欠です。
このため、これらの領域で実務知識と豊富な経験を持つ人材はまさに不可欠な存在になります。
さらに、単一領域だけでなく複数の管理機能を横断して制度設計・運用・ガバナンス構築まで担えるクロスファンクショナルなスキルを備えた人であれば、企業側から強い関心を持って迎えられる可能性が高いでしょう。
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公認会計士がIPO準備企業に転職する場合
IPO(新規株式公開)を実現するには、まず各証券取引所が定める「上場審査基準」を満たさなければなりません。審査基準には、株主数・時価総額といった定量的要件だけでなく
●適切な情報開示体制(事業内容・リスクの開示が正確か)
●公正・誠実な事業運営が担保されているか
●事業計画の実行に必要な基盤が整っているか、または合理的に整備見込みがあるか
といった定性的な評価項目も含まれます。つまり数字を満たすだけでは足りず、内部統制・ガバナンス・開示プロセスまで総合的に整える必要があります。これらを自社だけでやり切るのは難しく、専門家の支援は実務上不可欠です。
このため、多くのIPO準備企業では企業会計に精通し、客観的にIPO達成へ導く助言ができる公認会計士の力を強く求めています。
背景には上場基準クリアに直結する開示文書の精度向上、会計方針の整備、内部統制の構築、監査対応など、会計・ガバナンス領域の実装ニーズの高さがあります。
その結果、経験豊富な公認会計士には
●経理/財務や特定管理部門のマネジャー
●CFO(最高財務責任者)
●内部監査責任者
●常勤監査役
といった多様なポジションの選択肢が開かれています。
監査法人やコンサルの外部支援者ではなく、当事者としてIPOを推進する立場で関わることができる点も大きな魅力と言えるでしょう。
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IPO準備会社で働くリスク
IPOできない可能性がある
IPOを目標に走ってきたものの、結果として上場時期が先送りになるケースは珍しくありません。
とはいえ上場は企業成長のための手段の一つに過ぎず、上場できなければ終わりという話ではありません。実際、戦略上の判断としてあえて非上場のまま事業拡大を選ぶベンチャーも存在します。
ただし、長らく「上場」を大目標に掲げて努力してきた場合、延期や見直しが決まるとモチベーションの維持が難しくなることがあります。
さらに、上場を前提に描いていたキャリアプランや報酬設計(例:SOのエグジット前提)が想定どおりに進まず、望んだキャリア・報酬の実現が遅れる/届かない可能性も否定できません。
こうした局面では目標の再定義や評価指標の見直し、成長機会の再設計などを通じて次のステップに向けた納得感のある「再チャレンジの物語」を描き直すことが大切になります。
激務である可能性がある
大手や中小からIPO準備中のベンチャーへ転じた人の多くは、前職より明らかに忙しくなるのが実情です。
のちにキャリアを振り返ったとき、人生で最も働いた時期として記憶される可能性も高いでしょう。
IPOベンチャーで本気で成果を出したいのであれば、人生を賭けるくらいの覚悟が求められる、そのくらいの密度とスピード感があります。
もっとも、負荷のかかり方は上場までの残り期間(N−何期か)や所属部門(管理部/経営企画/マーケティング など)によって大きく異なります。
たとえばN−2期、N−1期の経理・財務に就く場合は次のようなタスクが重なり、どのタイミングでもハードワークになりがちです。
N−2期(直前々期)
●監査法人による会計監査の開始
●会計方針の変更対応
●株主名簿管理人(信託銀行等)との契約締結
●各種規程の整備・運用の立ち上げ
N−1期(直前期)
●主幹事証券会社の決定
●申請資料の作成準備/印刷会社との契約
●ガバナンス体制の構築・運用の実装・定着
●予実管理の強化(計画精度・モニタリングの高度化)
一方で、マーケティングや営業職は日々のKPI運用や顧客対応が中心で監査法人対応などの特殊業務が発生しにくいため、相対的には繁忙の波が小さめな傾向があります(もちろん、成長局面の施策集中で忙しくなることはあります)。
いずれにせよ、ワークライフバランスを堅持したい、自分のペースを崩したくないという志向が強い方にはIPO前後のベンチャー環境は相性が良くないかもしれません。
転職を検討する際は自分が何を優先したいのかを事前に明確にし、納得のいく意思決定につなげましょう。
IPO準備企業への転職はエージェントをうまく活用しよう
IPO準備段階の企業では管理部門が未整備、もしくはこれから本格的に整備していく途上にあるケースが少なくありません。そうした環境で立ち上げメンバーの一員として仕組みを作る経験は大きなやりがいにつながるはずです。
また、状況に応じて複数領域(経理・財務/人事/法務 など)を横断して担当する場面も多く、実務の幅が広がることでスキルの伸長が見込めます。将来的にキャリアアップやキャリアチェンジを志向する際にも、強いアピール材料になり得るでしょう。
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会計事務所や税理士事務所、一般企業の経理職など会計業界の求人情報が豊富な「会計求人プラス」を運営し、多くの求職者の方、会計事務所の採用ご担当者とお話をさせていただいています転職エージェントです。
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その一環として、会計業界でお役に立つ情報をお届けするために10年以上記事を書いています。是非、会計業界で働く人が楽しく、知識を得られるような情報をお伝えできればと思います。
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