会計、経理、財務は同じ意味?それとも明確な違いがあるの?
2023/10/30
企業のお金に関する仕事を行う、会計・経理・財務という仕事について、それぞれの違いをハッキリと把握しているでしょうか?
経営者の方でも「顧問会計士にまかせているので問題ない。詳細は分からない。」と答える方も多いのではないでしょうか。しかし、会計・経理・財務は企業のお金に関する仕事ですから、業務内容や役割を正しく理解しておくことは経営にも役にたつことでしょう。
また、これから経理・財務の部署へ就職、転職を考えている方も、正確に理解しておくと今後のキャリアパスにも役立ちます。
ここでは混同されがちな会計・経理・財務の内容や目的の違いについて詳しく解説します。
コンテンツ目次
企業のお金にまつわる業務の重要性
会計・経理・財務それぞれの内容について触れる前に、企業にとって、お金にまつわる業務がどれだけ重要かを改めて考えてみましょう。
ビジネスではお金が動くのは当然です。お金を動く中で、仕入れの支払いや取引先からお金を頂いたりするからこそ、商売が成り立つのです。そして、企業のお金の動きを把握し、その状況に応じて売上アップの施策や人件費などのコストを管理、設備への投資等を決めて事業が進んでいくのです。
お金の業務が適切にされていれば、取引先や従業員から信頼を得ることができるでしょう。また、経営面でもお金の動きを把握し、記録することにより、ビジネス拡大・事業見直しなどに役立てることも可能です。さらに、一定規模以上の大きな企業には法的に定められた形でお金にまつわる情報を公表する必要があります。
このように、ビジネスを成立させる上で切り離すことができない企業のお金にまつわる業務は、最も重要な要素だと言えるでしょう。
会計とは?
会計とは、ひとことで説明するなら「お金にまつわる管理全般のこと」で、企業であれば、その企業の資産・負債状況や収支を帳簿に記録することを意味します。後述の経理がその一部としてみなされることもあります。この会計という概念は、国や自治体がお金を管理する場合でも用いられます。
管理会計と財務会計の違いとは
会計は大きく2つに分けられます。
帳簿に記録することには、企業が今後の事業展開の参考資料とするという意味が第一にあります。これがいわゆる「管理会計」というもので、会社内の経営陣や社員に対して経営状況などを説明するための会計です。
売上やコスト、利益等の記録と分析を指します。業界における会計処理の指針などは各種ありますが、作成に際して詳細に定められた法的なルールなどはないのが特徴です。
一方で「財務会計」では、株主、銀行など外部の利害関係者に企業の経営成績と財務状態を報告することを目的とします。決算などのまとめを企業内外に向けて開示するための会計です。
関係者と利害調整を行うという役割も持ちます。このような財務報告のための資料が必要となる場合、その資料の記載事項や財務諸表作成時などに一定のルール(会計制度)がありそれを遵守することが求められます。
また、利害関係者に対して公表されるものであるため、内容の正確性が極めて重視されるものです。
このように、「管理会計」と「財務会計」では、その目的が異なります。そのため、「管理会計」ではルール自体の法的な縛りが少なく企業の任意で処理される内容が多い一方、「財務会計」では一定の基準があり正確性が求められるという点に、大きな違いがあると言えます。
会計の業務とその流れ
会計のみの業務としてとらえた場合、実際にお金を動かすというよりは、包括的なお金の変動を帳簿に付け、その数値のとりまとめや資料作成をすることを指します。多くの企業で行われる「会計」は、日々の取引にごとのお金に関する処理である後述の「経理」の業務の積み重なった結果を受けて行う包括的なものです。
具体的には、日々の経理処理の結果から、ある一定期間ごとに数値を集約・分析し、利害関係者向けの報告書や国向けの書類などを作成するという流れになります。その作成のために必要な集計作業や資料の記述に必要な情報などの整理も会計のひとつと言えるでしょう。
このように、企業のお金の状況、つまり経営状況を把握した資料を作成し、それらをもって企業の経営状況を説明する業務です。
これを業務として後述の「経理」「財務」とは区分し、担当者を分けるケースは上場をしているような大きな規模の会社に多く見られます。小さな企業では、この会計のとりまとめも「経理」の担当者が行うことも少なくありません。
経理とは?
経理とは、企業で日常的に動いたお金の流れの管理を指します。具体的な業務としては、日々の売上や税金、給与などのお金の動きを管理・記録することです。実務としては振込みや支払いの処理、また、その取引き(お金の動き)が正しく行われたか、請求書などの証憑(エビデンス)などの情報を集め、実際のお金の動きと照合します。
万が一、他部署の処理や書類に不備や不明点があれば連絡を取って適切な経理処理を行えるよう、コミュニケーションを取ることが求められる場面も多くあります。
そして、これらのお金の動きを会計ソフトなどに入力することで、これらのお金の流れを決算書(もしくは財務諸表)作成に必要な、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などにまとめることも業務となります。先述のように、会計と一部業務が重なるところもありますが、部署の編成や業務の分担は企業によって異なります。
経理の業務内容とその流れ
経理の業務内容は、大きく日ごと(日次業務)、月ごと(月次業務)、年度ごと(年次業務)にわかれます。業務として代表的なものは、現金・預金の入出金処理や管理業務があります。これには、売上の入金確認や仕入れや各種費用のための精算(支払い)、税金の納入、給与や保険料の支払いなどが含まれます。
また、その際の取引きが適切かを売上であれば契約内容や取引先に発行した請求書など証憑、費用であれば取引先から受領した請求書を確認し、適切なお金の動きかを確認しながら進めます。
企業の規模によっては、給与計算や請求書の発行・送付業務が経理担当の業務となることもあり、その範囲はさまざまです。全体を通じ、経理担当はお金の動きの根拠を押さえつつ、実務処理を進めることになります。
そして、動いたお金の記録を会計システムなどを利用して帳簿として記入します。これらを積み重ね、月ごと(月次業務)や年度ごと(年次業務)の業務として、決算書などの報告書の作成を進めるのです。そのほか、税金に関する業務では税務署や企業の顧問税理士へ、また、給与に関する業務では社会保険労務士へ、連絡や相談をしながら進める業務も含まれます。
このように経理の仕事は幅広く、日々の作業が積み重なっていくものです。経理がまとめたデータを基に、最終的な経営分析や公的に公開する資料作成へとつながるため、企業にとって大変重要な役割を担っています。
経理の主な業務(例)
業務分担の内容は企業によりさまざまですが、以下のような業務の例があります。
仕入れ関連
1.在庫の管理
2.買掛金の管理(受領した請求書の確認、支払処理、取引先別の記録)
3.原価計算
4.伝票の発行
売上関連
1.受発注の管理
2.売掛金の管理(請求書発行、入金確認、取引先別の記録)
3.伝票の発行
現金・預金関連
1.各種経費の精算(支払い処理、振込み処理)
2.小口現金の管理(入出金の管理、残高確認等)
3.預金管理(入出金の管理、残高確認等)
4.会計システムなどを利用した帳簿への記録
財務・経営関連
1.月次決算の作成
2.年次決算の作成
給与関連
1.保険料の計算と支払い
2.給与の計算と支払い
3.年末調整
税金関連
1.法人税や消費税など税金の計算と納入
2.顧問税理士への相談
その他
1.経理システムの操作
2.資産管理
3.与信管理
4.有価証券報告書など利害関係者向けの資料作成
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財務とは?
財務は、資金全体を管理し、資金の調達や運用を行うことを業務とします。特に資金調達が中心ですが、経理や会計からの情報や作成された報告書から、将来的な財務の計画立案することもあります。
財務の業務内容とその流れ
具体的な業務には、経理や会計からの情報や報告書から判断し、資金調達や運用を行います。資金調達には銀行などの金融機関から融資による資金の調達や株式を新たに発行する方法があります。
また、M&Aや投資などにより資金を運用します。
その他、財務計画の立案をする場合には、企業全体の販売計画や人員計画、資金計画との整合性を保ちながら、最新の金融情報などを反映させて予算等を計画していく必要があります。このことから、単に資金不足を回避するだけでなく、その時々で企業にとって適切な資金調達や運用の方法を検討し選択していく役割を担うことが分かるでしょう。
過去の取引の情報を記録し積み重ねていく経理の業務とは異なり、今後の企業のお金にまつわる計画を立てて実行していくという点が大きく異なります。
財務の主な業務(例)
業務分担の内容は企業によりさまざまですが、以下のような業務の例があります。
1. 銀行などの金融機関から資金を調達する
2.株式を新たに発行して資金を調達する
3.M&Aや投資によって会社の資産運用を行う
4.財務計画
5.予算管理
会計・経理・財務の重要性
会計が重要な理由
会計は企業の経営の根本であるお金の動きを管理することです。そのため会計業務は企業にとって必要不可欠です。適切な取引きやお金のやり取りが実現できなくなれば、資金の問題だけでなく企業の信頼などにも大きく影響を及ぼします。
会計がお金の管理全般を指す幅広い概念なので、実務的には経理部や経営企画部といった部署に仕事を分割して、会計業務を行っていますが、会計という概念を理解しておくことは企業にとって重要です。
経理が重要な理由
一方、経理は会計の元となるデータとして財務諸表をスムーズに作成するために日々の取引を記録します。そのため経理担当者がいなければこれらの業務が滞り、請求も支払いもスムーズに実行できません。さらに、財務諸表は経営者が経営状況を分析するために欠かせない書類です。
また、売上の情報を営業担当部署が分析に用いる、仕入れの担当部署が原価に関する数値を参考にするといった視点でも重要です。
小規模事業者では経営者や役員が経理を担当しているケースがありますが、一定以上のボリュームになると専門知識が必要になり、担当者を置くケースが多くあります。企業のお金の管理を担う実務部隊として、大変重要なポジションです。
財務が重要な理由
財務が実際に部署として独立しているケースは、ある程度大きな規模の企業、もしくは成長を目指している企業で見られます。財務に関しては企業の方針によってその方向性が大きく異なるためです。
資金調達の手法を金融機関からの融資に限っていたり、逆に投資などの資金運用に積極的な企業、M&Aを繰り返すことで規模を大きくする企業など、その実務はさまざまです。将来的に企業の資金をどう動かすのかを計画し、実践する部署として企業としては大変重要な立ち位置となります。
日本と海外との違い
このように会計・経理・財務は企業にとって重要な存在ですが、これらの業務について、日本と海外とでは何か違いはあるのでしょうか。日本の企業の傾向として経理や財務を部署として持ち業務は内製化しているところがほとんどだという点があげられます。一方、海外ではスペシャリストと契約することが通常です。
経理業務をアウトソーシングしたり、相談役として経験豊富な公認会計士や税理士、経営コンサルタントと契約するケース等が多くあります。こうしてスペシャリストの力を借りながら事業を進めるのが定着していますが、その際にはパートナーとなる専門家たちとの関係性の構築も重要です。
まとめ
会計・経理・財務の違いを解説してきましたが、それらをまとめると、以下のようになります。
・会計とは、お金の管理全般という大きな枠組み
・経理とは、会計のために必要な実務処理
・財務とは、経理が整理した過去の取引から、将来的な資金の運用などを行う
通常では経理として経験を積み決算書の作成ができるようになると、財務の業務に携わる機会もでてくるかもしれません。規模が大きくない企業では、経理担当者が財務的な仕事を任されるケースも多くあります。経理経理から財務へのキャリアアップをお考えなら、必要な知識、スキルなどを把握して準備するのも良いでしょう。
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