首都圏の税理士が地方の会計事務所に転職することは可能なのか?
2023/11/01
新型コロナウイルスなどの影響により、テレワークやITツールを導入する企業が増加。同時に都市部から地方に本社を移転する企業も多くなりました。税理士事務所などの会計業界も例外ではありません。
実際、首都圏に勤めていた税理士でも、地域の特性を活かして、地方で活躍する税理士も多くいます。「地方はヒト不足でクライアントも少なく転職できない」と思っている方も多いと思いますが、地方には地方の特徴や魅力がたくさんあります。
そこで本記事では、首都圏と地方の税理士事務所の違いについて解説します。
地元で仕事がしたい人や首都圏で働くことにストレスを感じる人はぜひ参考にしてみてください。
コンテンツ目次
地方での税理士の数はどれくらい?
税理士の登録者数は以下の表のとおりです。
《税理士登録者数表》
税理士会 | 税理士 | 主たる事務所 | 従たる事務所 |
---|---|---|---|
東京 | 23,376 | 1,271 | 447 |
東京地方 | 4,949 | 218 | 153 |
千葉県 | 2,525 | 105 | 83 |
関東信越 | 7,427 | 425 | 249 |
近畿 | 14,956 | 722 | 321 |
北海道 | 1,846 | 159 | 92 |
東北 | 2,481 | 140 | 99 |
名古屋 | 4,654 | 288 | 152 |
東海 | 4,366 | 232 | 134 |
北陸 | 1,404 | 101 | 49 |
中国 | 3,139 | 153 | 101 |
四国 | 1,624 | 88 | 47 |
九州北部 | 3,338 | 172 | 136 |
南九州 | 2,192 | 108 | 60 |
沖縄 | 441 | 27 | 28 |
合計 | 78,718 | 4,209 | 2,151 |
上記表は、各地域の税理士法人が届け出をしている事務所数が分かるようになっています。税理士は法人事務所の場合、事務所の所在地域の税理士会員を必ず1人、社員として常駐させなければならない決まりがあるため、「従たる事務所」も同じように1人は会員が社員として常駐しています。
税理士の求人の多い地域は当然、事務所の登録が多い地域となりますが、この表からも分かる通り、登録数は東京や関東地方、近畿で圧倒的に多くなっています。それに比べて、地方の登録数は少ない傾向が見て取れます。
中でも北陸や東北地方と四国では税理士事務所登録数が少ないため、転職先を選ぶ際は、各地域でどのくらいの税理士事務所登録数があるのか、よく知っておくと有利です。
地方の税理士事務所の特徴とは?
税理士のニーズは、その地域の人口比率によって変わるため、都会と地方では差があります。
東京都など都会では人口による税理士のニーズが高いので、『法人専門』や『資産税専門』というようなある分野に特化した形での業務もそれ単体で成り立ちやすいですが、人口の少ない地方であれば専門分野に特化した事務所としての在り方は難しいと言えます。
税理士というのは事務所を構える地域の事業者が主な顧問先となるので、人口が少なければ事業者数も少ないため、特定の分野に特化した業務形態はなかなか成り立つことが難しいということです。
地方の税理士事務所は特定の分野に絞らず、個人の決算や申告業務を中心としながら、顧問先の相続税の申告業務も行うなど、幅広い分野を手がける税理士が多いのが特徴です。
地方の税理士事務所で働く魅力とは?
地方税理士事務所で働く魅力は大きく2つあります。
幅広い実務経験が得られる
1つ目は、地方のお客様のニーズが多種多様であり、業務も多岐に渡るため、さまざまな知識や能力が非常に身につきやすいという点です。
異業種の知見が広がる
2つ目に、個人・法人を問わず依頼を引き受けることによって、異業種への知見が自然と広がることです。経営者との打ち合わせを重ねるごとに、異業種の経営者が、どのようなビジネス構造を持っているか実務を通して学ぶことができます。
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地方では税理士不足になっている?
地方と都会での税理士を取り巻く環境の違いについても説明します。
地方と都会での大きな違いは、ITの浸透具合です。税理士業務はいずれAIにとって代わられると言われていますが、AIの活用度はその地域のITの浸透具合により差が出ます。地方では都会と比較して、浸透具合が低い分、AIの活用度も低いといえます。
つまり、AIに関する問題は都会を基準としたものであり、地方に必ずしも当てはまる訳ではないのです。もちろん、時間の経過とともに地方でもさまざまな業務の自動化は行われていくので、IT・A I技術の導入も視野に入れた働き方をしていくことは必要です。
地方での転職は難しい?
地方への転職は、有利に働く場合が多いです。なぜなら、地方に転職を希望する税理士が少ないからです。地方の税理士事務所の数は決して多くありません。加えて、希望者が少ないため人手不足・税理士の高齢化が深刻化しています。
今後、団塊世代の税理士が引退していくことを考えると、即戦力になる30代や40代の中堅税理士の需要はより高まっていくが予想されます。若手から中堅で、実務経験のある方であれば、地方転職で優遇される可能性は十分にあるでしょう。
地方で働くメリットとは?
税理士が地方で働く3つのメリットを紹介します。
メリット1 開業後の固定費が安い
メリット2 ストレス発散になる環境がある
メリット3 事務所の評判が広がりやすい
それぞれ詳しく説明します。
メリット1 開業後の固定費が安い
都会と比較して地価の低い地方では、テナント賃料等の固定費が安く済みます。例えば、東京都の家賃相場は約8万円であるのに対して、北海道の家賃相場は約4万円と家賃だけでも約2倍の変動があります。さらに、車での移動も多くなるので、タクシー代やJR代などの交通費も押さえられる点もメリットといえます。
メリット2 ストレス発散になる環境がある
地方の緑豊かな環境は、ストレス発散に貢献します。満員電車や人混みの中に長時間いると、ストレスが貯まり、息苦しさを感じてしまう人もいます。都会と比べて地方は、自然が多く、開放的な空間が多い分、穏やかな気持ちで働くことができるでしょう。
メリット3 事務所の評判が広がりやすい
事務所の評判が顧客に広がりやすいのも、地方の大きなメリットです。競合が少ない分、良い評判が広がれば、お客様からの紹介も増えていきます。言い換えれば、地方で開業している税理士が活躍できるかどうかは、顧客との信頼関係を構築できるかどうかに大きく左右されるといっても過言ではありません。複雑な税務スキルよりもコミュニケーション能力が高く、信頼関係が構築できる税理士の方が活躍できるところも地方ならではの特徴といえます。
地方で働く税理士の年収は?
地方における税理士の平均年収額は、約600万円です。東京の約1,160万円と比較すると低く感じるかもしれませんが、税理士の年収は抱える案件数に大きな影響を受けるので、平均年収はあくまで参考程度に考えてください。
税理士が地方で独立開業は可能なのか?
地方でも、独立開業は可能です。固定費を安く抑えられるという点においては、都会よりも独立開業の難易度は低いといます。顧客との信頼関係を構築し、地域密着型の事務所を目指していけば成功できる可能性は十分にあるでしょう。
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地方在住で首都圏事務所へのリモート勤務は可能か?
税理士法40条第3項により、税理士の2か所以上の事務所設立は禁止となっていますが、自宅で業務を行うことは可能です。2020年4月に日本税理士連合会が発出した「税理士のテレワーク」でも、下記のとおり明言されています。
Q1 開業税理士が登録している事務所所在地とは別の自宅で税理士業務を行う場合、税理士法上の問題点・留意事項はありますか?
A1 『税理士法第40条3項では、2箇所目の事務所の設置が禁止されていますが、臨時に仕事を自宅に持ち帰り税理士業務を執行したり、自宅への来客に対し一時的に税務相談に応じる当の行為をしても、自宅が外部に対する表示の有無等の客観的事実により事務所として判断される状況でなければ、2か所事務所の問題は生じないものと考えられます』
引用:日本税理士連合会業務対策部「税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)〜新型コロナウイルス感染症防止対応版〜
顧客や税務署へ赴く必要があるため完全なテレワークの実現は困難かもしれませんが、新型コロナウイルスの終息も先が見えていない現状では、部分的にでも導入していくことは必要です。
一部でも導入することができれば、通勤費の削減や多様な働き方の実現による離職率低下などのメリットを享受できる可能性があります。
現在では、通信環境さえ整っていればテレワーク導入のハードルは低くなっています。一方で、税理士事務所は様々な企業情報を取り扱う業務であり、セキュリティ面にも配慮が必要です。テレワーク導入時は、セキュリティリスクも考慮して方針を定めていくといいでしょう。
まとめ
首都圏と地方で働く税理士事務所の違いについて理解は深められたでしょうか。首都圏と地方では年収やコスト面、特徴に違いはありますが、仕事内容に大きな違いはありません。
地方企業は、地元の地域性を活かした産業が伸びやすいという特徴から、地方で活躍できれば、将来の独立・開業にも有利に働きます。
また、地方への転職活動は自分で行うよりも転職エージェントを活用するのがおすすめです。なぜなら、地方へ転職できたはいいものの、再度転職を考えた時に、地方企業のメリットがデメリットになることもあるからです。
今後の情勢を見極め、選択肢を広げるという意味でも転職のプロである転職エージェントに相談されてみてはいかがでしょうか。
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投稿者情報
- 公認会計士資格を取得しており、現役で公認会計士として仕事をしています。税理士資格も持っていますので、財務、会計、税務、監査などの専門的な業務経験も豊富にあります。ライターとして5年以上執筆しており、専門的でリアルな内容が好評いただいています。
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