税理士試験科目の固定資産税の特徴とは?試験内容と勉強方法を解説
2023/11/01
固定資産税は、税理士試験における選択科目の1つに含まれています。一般的にも広く認知されている科目ですが、税理士の仕事としては、あまり多く利用されない科目です。
また、将来的には科目から外されるのではないかという見解もあり、情報が少ない科目でもあります。そのため、税理士試験の固定資産税の試験対策を進めたくても、どう対応すれば良いかわからない方も少なくないでしょう。
こちらの記事では、税理士試験における固定資産税の科目について紹介します。出題形式や難易度、勉強方法などを把握することで、よりチャレンジしやすくなるでしょう。
現在、税理士試験の固定資産税の勉強をしている方も参考にしていただける内容です。
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コンテンツ目次
税理士試験における固定資産税の科目とは
固定資産税とは、土地や住宅といった固定資産に課せられる税金です。住民税や事業税と同じく、地方税法の1つであり、選択必須科目の法人税法や所得税法に比べると、ボリュームは少ないでしょう。税理士試験の固定資産税では、通常の不動産だけではなく事業用資産の償却資産についても含まれます。また、相続税に関する業務に関連している点も特徴です。
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固定資産税の科目の特徴
税理士試験における固定資産税では、計算問題と理論問題がバランス良く出題される傾向があります。基本的には「税法科目」と呼ばれ、簿記論や財務諸表論といった「会計科目」とは異なるジャンルです。
ここからは、過去に出題された問題にも触れながら特徴や傾向を紹介していきます。
固定資産税は出題傾向が安定している
固定資産税は、税理士試験が登場した当初から試験科目となっているため、出題傾向は比較的安定しており、勉強しやすい点が特徴です。また、消費税法ほど頻繁に税法が変わるものでもありません。
税理士試験では、理論問題と計算問題それぞれ50点ずつ出題されます。理論問題は応用理論が出題されることもあるため、留意する必要があるでしょう。一方の計算問題では、過去の試験内容を踏まえた上で、ボリュームの多い問題が出題される傾向にあります。
固定資産税の過去問題
固定資産税の科目で合格するためには、過去の問題を繰り返し解くことも必要です。例として、令和3年度の税理士試験で出題された固定資産税の問題内容について見ていきましょう。令和3年度は理論問題が2問、計算問題が2問でした。(※1)
〇第1問(50点満点)
問1:地方税法に規定されている固定資産税に関する申告制度について、内容や趣旨を説明する問題が提出されました。基本的な理解が求められる問題でありながら、令和2年度の税制改正で新たに創設された、現所有者の申告についての理解度もチェックされます。
問2:土地名寄帳と家屋名寄帳について説明するとともに、固定資産税の免税点について内容や趣旨、判定方法を解説する問題が出題されました。こちらも土地名寄帳と家屋名寄帳に関する基本的な理解が問われています。また免税点の判定に関して、留意するポイントが理解できているかどうかも大切です。
〇第2問(50点満点)
問1:提示された3点の資料をもとに、令和元年度から令和3年度までの各年度における固定資産税額について、計算過程を明確にして算出する問題が出されました。理論問題である第1問と同じく、固定資産税制度の総合的な理解度を、計算を通して試される問題です。
問2:提示された償却資産に関する資料をもとに、課税評価額を県と市にわけて、計算を明らかにした上で算出する問題が出されました。この問題では、大規模償却資産について課税定額の増額における特例についての理解度があるかが問われています。
税理士になるためには実務経験も必須
税理士試験に合格した瞬間から、税理士を名乗れるわけではありません。
税理士になるためには、実務経験を積む必要があります。そのため、税理士試験の合格を目指す方は、税理士事務所や会計事務所で働きながら勉強を重ねるケースが多いです。
また、効率良く勉強をするためには職場選びが重要です。税理士試験は、固定資産税だけではなく、全11科目のうち5科目に合格する必要があります。そのための勉強時間は膨大であり、仕事が忙しすぎると、勉強時間を確保できません。
税理士試験における固定資産税の合格基準と難易度とは
税理士試験の選択科目に固定資産税を選ぶ上で気になるのは、合格基準と難易度です。合格ラインを把握しておくと、勉強のモチベーションにもつながるでしょう。
合格率は15%前後
令和元年度の税理士試験における固定資産税の合格率は13.7%、令和2年度は13.5%でした。平成30年度は14.9%と高めで、毎年13~15%を推移しています。
ほかの科目と比べても平均的な合格率といえるでしょう。しかし、計算問題は満点に近い点数を獲得する必要があり、理論問題で差が出るためしっかり押さえておく必要があります。特に、基礎的な資産税に関わる内容はひと通り網羅しておくと良いでしょう。
簿記と関連するので勉強しやすい
税理士試験において、簿記論と財務諸表論は必須科目となっており、最も勉強時間を割く必要のある科目といえます。そのため、簿記の内容とも関連する固定資産税は、比較的勉強しやすい科目です。出題される問題も理論・計算ともに、基礎的な内容が出題される傾向があるため、基本をしっかりと押さえておくことで、合格に一歩近づきます。
固定資産税の勉強方法とは
固定資産税は、一般的な目安とされる勉強時間が200~250時間程といわれています。いわゆるミニ税法に分類される科目で、学習範囲も広くはありません。
しかし、計算問題の多さ、また基礎力だけでなく応用力を試される理論問題などもあるため、ケアレスミスを起こしてしまう可能性も考えられるでしょう。続いては、固定資産税について効率的に学ぶための勉強方法を紹介します。
理論問題は応用問題も押さえておくこと
固定資産税は、覚える情報量が少ないため、全ての理論を暗記する必要があるといえます。ボリュームが少ないため、正確性も求められる科目です。
しっかりと基礎を固めた上で、応用問題の対策も行いましょう。特に、過去の本試験で出された問題は確認しておく必要があります。繰り返し問題を解くことで、身についていない基礎の部分も見えてくるでしょう。
また、これまでに出題されていない箇所から出題される可能性も少なくありません。過去問題を解きながら、次回予想される出題ポイントを押さえておくとより効果的です。
計算問題はスピードと正確性が鍵
固定資産税の計算問題は、問題量が多いといわれています。一方で、範囲が狭いという点が特徴として挙げられます。そのため、いかに早く正確に計算ができるかどうかが鍵となるでしょう。多くの問題を何度も解くことで、スピードや正確さといったスキルを習得できます。
特に、固定資産税の計算問題は満点をとる気持ちで挑む必要があるといえるでしょう。問題文を読み解く力を理論の勉強で養いつつ、正確性も高めることが大切です。また、近年は過去問と類似した問題も多く出題される傾向にあります。過去問対策も併せて行いましょう。
税制改正もチェック
固定資産税はそのほかの科目ほど、税制改正が施行されるわけではありません。しかし、令和2年度には、固定資産の現所有者における申告が新たに創設されており、実際に試験問題として出題されています。
固定資産税に限らず、税理士試験を受ける際には、こうした法改正に関する細かなチェックが必要です。また、ほかの科目で施行された改正が、固定資産税に影響していたということも考えられるでしょう。常に新しい情報を収集しながら、基礎を押さえていくことが大切です。
固定資産税は独学可能?
固定資産税は、試験範囲が狭く計算問題が多いことから、独学でもチャレンジできるのではないか、と考える方も少なくありません。
しかし、試験問題が狭いためにライバルとの差がつきにくい科目ともいえます。また、計算問題はケアレスミスが命取りです。できれば、通信講座や予備校を活用するなど、第三者にチェックしてもらえる環境を用意することをおすすめします。
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税理士試験の科目は見直されている
平成24年に、日本税理士会連合会が「税理士法に関する改正要望書」を打ち出しています。(※2)
この要望書は、平成13年に改正された税理士制度から10年が経過し、多様化・複雑化する社会情勢を踏まえたものです。その中で、税理士の資格取得に関する規定についても触れられています。これは、固定資産税の科目にも大きく影響する内容です。続いては、税理士試験について、どのような見直し案が出されているかについて紹介していきます。
試験科目のあり方
「税理士法に関する改正要望書」の中では、税理士試験に関する試験科目のあり方について触れられています。
税理士試験は、税理士として働く上で必要となる学識と応用スキルがあるかどうかを判断するための試験です。そのため、申告納税制度をベースとする税理士業務において、役立つ内容でなければならないため、試験科目のあり方について検討すべきだとまとめられています。
実務経験のあり方
現在は、税理士になるために2年間の実務経験が必要です。しかし、要望書では実務経験がなくても速やかに、税理業務に就けるようにと指摘されています。「実務修習制度を含めたあり方について検討すべきだ」とまとめられていますが、令和3年の段階ではまだ対応されていません。
固定資産税は実務における優先順位が低い
実際のところ、固定資産税は実務で多く使う科目ではありません。法人税や所得税といった税理士の仕事に欠かせない科目と比べると、どうしても優先度は低くなります。スキルが活用できるパターンとして、償却資産税の申告を行う際には役立つでしょう。また、相続税に代表される資産税をシミュレーションする際にも固定資産税の知識は役立ちます。
一方で、実務上の優先順位が低いことから、将来的に税理士の試験科目から排除されるのではないか、という意見があるのも事実です。
現時点で廃止が決まっている科目はない
平成24年に「税理士法に関する改正要望書」が出されたものの、実際のところ令和3年の段階で、正式に廃止が決まった科目はありません。実務に直結しないとされる固定資産税も変わらず試験科目として残っています。
固定資産税は、そのほかの科目と比べて勉強しやすい、といったメリットがある科目です。受験者は年々減少傾向にあるものの、勉強しておいて損することはありません。特に、計算問題が得意な方はチャレンジしてみても良いでしょう。
まとめ
税理士試験を受けるためには、多くの勉強時間を割く必要があります。ミニ税法と呼ばれる固定資産税でも、最低200~250時間程の勉強が必要といわれています。
また、要望書において、そのあり方が問われた実務経験ですが、2022年1月時点ではまだ2年間必要なルールのままです。そのため、税理士事務所や会計事務所で仕事をしながら受験勉強に励む方が多く見られます。
しかし、これだけ多くの勉強時間を、働きながら確保するのは非常に難しいことです。仕事内容がハードな職場にいれば、ストレスも溜まるでしょう。
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投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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