税理士試験科目の国税徴収法の特徴とは?試験内容と勉強方法を解説
2023/11/01
税理士試験には、必修科目と選択必修科目の他に、選択科目があります。その選択科目の中の1つが「国税徴収法」です。選択科目の中で、消費税法や酒税法などはイメージしやすいものですが、一方で国税徴収法は一般的にあまり知られていないものだといえます。大まかにいうと、国税徴収法は、税金を滞納した場合に国が行う措置について定めた法律のことです。
今回は、国税徴収法の特徴について紹介するとともに、試験内容や勉強方法について紹介します。税理士試験の選択科目で、国税徴収法を選択しようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
■□■□会計業界へ効率的に無駄のない転職活動をするなら専門転職サイト「会計求人プラス」が最適!完全無料の会員登録はこちらから■□■□
コンテンツ目次
国税徴収法の科目とは
普段の生活においてあまり馴染みのない国税徴収法ですが、明治時代に制定された歴史ある法律です。国税徴収法は、国税の徴収だけではなく、地方税の徴収や社会保険料といった公課の徴収に関しても広く準用されています。つまり、租税と公課に関する基本的な法律だといえます。
税理士試験の科目の国税徴収法では、民法や国税通則法が大きく関係してくるため、幅広い知識が必要になるといえるでしょう。加えて、国税徴収法は法律で決められた内容をいかに具体的に実行するかが定められているため、「手続法」ともいわれています。
目指して求人を探すなら
「会計求人プラス」
公認会計士や税理士を目指すなら、実務経験を積みながら資格取得も目指せる事が理想です。会計業界に特化した求人サイト「会計求人プラス」ならそんな職場も探せます!
国税徴収法の科目の特徴
税理士試験における国税徴収法は、出題内容のボリュームが少ないミニ税に分類されます。他の科目と比較して勉強しやすそうな国税徴収法ですが、一体どのような特徴があるのでしょうか?ここでは、国税徴収法の出題範囲や形式、過去問について紹介します。
出題範囲について
国税徴収法では、国税通則法や民法も出題範囲となっています。実際のところ、実務と直結する内容は多くありませんが、税金の体系を理解するうえでは非常に大切な科目です。出題内容のボリュームは少ないですが、さまざまな内容を覚える必要があります。
出題形式について
国税徴収法の特徴として、その他の科目とは違い、理論のみの出題となっている点が挙げられます。こうした出題形式を採用しているのは、国税徴収法のみです。頻出論点となるのは、滞納処分や第二次納税義務、徴収緩和制度といった内容です。学びやすいため、最初に学ぶ科目としても適しているといえます。試験問題の大半は、国税徴収法の知識が問われますが、理論問題を解く中では計算も必要です。
解答時間は他の科目と同様、2時間に設定されています。相続税法や消費税法のように、多くの計算問題を解く必要がないため、時間的には比較的余裕がある科目といえますが、一方で理解力や文章力などが求められます。
国税徴収法の過去問題について
国税徴収法は、歴史が深い法律であるというのが特徴です。また、法改正が少ないため、過去問と似たような問題が出題される可能性が高いともいえます。例えば、法改正が頻繁に行われる消費税法の場合は、法改正ごとに新しい情報をインプットする必要がありますが、国税徴収法の場合は、過去問集を最大限に活用して対策が可能です。そのため、過去数年間の過去問を把握しておくことが大切になります。以下で、過去問の一例を紹介します。(※1)
〇第1問(50点満点)
問1:国税徴収法第79条に定められた、差し押さえ解除における要件の中で、「差し押さえを解除することができる場合」について説明する問題が出題されました。他の科目と比べると、問題文がかなりシンプルなのが印象的です。この問題では「差し押さえを解除することができる場合」と「差し押さえを解除しなければならない場合」との違いについて正しく理解できているかどうかが求められました。
問2:公売における不動産の売却手続きについての問題です。自動車と不動産に関して、公売における売却決定の日が、公売をする日程と異なる理由が問われています。また、換価した財産にかかる売却決定が取り消される場合について説明する問題も出題されました。これらの問題では、不動産売却手続きに関して正しい理解ができているかどうかが問われています。
〇第2問(50点満点)
問1:国税を滞納した会社が換価の猶予を申請し分割納付することになったが、途中から売上が減少し納付ができなくなった場合の、参加差し押さえをした税務署長による換価執行についての問題が出題されています。不動産売却決定手続きに関する理解が問われる問題です。
問2:問1の設例を踏まえて差押不動産における換価代金の配当額を計算して答える問題です。設例の中で細かな金額や年月日などが指定されており、それらを踏まえて計算する必要があります。このように、論理問題でありながら、計算が必要な問題が出題される可能性は高いといえるでしょう。
※1 令和3年度(第71回)税理士試験/国税徴収法 試験問題
税理士になるには実務経験も欠かせない
税理士として働くためには、税理士試験に合格するだけでは十分ではありません。実務経験も必須となっています。国税徴収法を含む税理士試験の問題は、非常に難しいのが特徴です。全11科目のうち、必須科目の会計学2科目と税法3科目の合格が必要になります。
これらをクリアするためには、それぞれの科目に多くの勉強時間を割かなければなりません。科目の中でもボリュームが少ない国税徴収法に関しても、150時間程度の勉強時間が必要といわれています。
加えて税理士になるには実務経験も必要なので、日々の仕事にも取り組まないといけません。税理士事務所や会計事務所で働きながら税理士試験の勉強をするためには、職場選びが大切だといえるでしょう。ストレスなく働くことができて、かつ勉強時間が確保できる職場を選ぶ必要があります。
目指して求人を探すなら
「会計求人プラス」
公認会計士や税理士を目指すなら、実務経験を積みながら資格取得も目指せる事が理想です。会計業界に特化した求人サイト「会計求人プラス」ならそんな職場も探せます!
税理士試験における国税徴収法の合格基準と難度とは
税理士試験の合格基準は、60%とされています。ただ、実際のところは、受験者の上位10~15%が合格するといわれ、受験者数が多くなればなるほど合格できる可能性も低くなります。
国税徴収法は、合格を目指すうえでの学習量が少なく、テキストも非常に薄いのが特徴です。一方で、理論問題のみということもあり、論理的な思考能力や文章力が求められます。他の科目に比べて、出題内容がシンプルである点も特徴だといえるでしょう。こういった点から、暗記問題が得意だという方は、国税徴収法を選択することをおすすめします。ただし、理論問題の中には、計算が必要になる問題が含まれている可能性も考えられます。
そのため、国税徴収法の試験問題を解くには、ある程度の計算力も必要であるということは覚えておきましょう。
国税徴収法の勉強方法とは
国税徴収法で求められるのは、理論を正確に把握しておくことと、把握した理論を解説する力です。他の科目とは特色が異なる点が多くあります。事前に勉強方法をしっかりと押さえておくことが、合格のポイントといえるでしょう。続いては、国税徴収法の勉強法について紹介します。
出題範囲の理論部分をしっかりと把握する
税理士試験の科目のうち、所得税法や法人税法などは「実体法」と呼ばれます。これは、実際の法律関係が、どのような条件で成立するかを定めたものです。一方で、国税徴収法は「手続法」といい、法の理念を実現するための内容が具体的に規定されています。そのため、定められている規定を組み合わせて結論づける、論理的な能力が問われるのが特徴です。
こうしたスキルを磨くためには、出題範囲の理論部分をいかに把握するかが大切になります。隅々まで暗記する必要はないものの、幅広く内容を理解しておけば、合格の可能性を引き上げることも可能です。
テキストと過去問集で繰り返し対策をする
理論をどれだけ把握しているかが大きく点数に影響する国税徴収法は、テキストと過去問を繰り返して解くことで対策ができます。まずは、簡単な例題から解いて、個別の理論をどれくらい把握しているかを確認しましょう。間違った際には、しっかり解説を確認して理解することが大切です。間違えた問題をそのままにしておくことは避けるようにしてください。
その後、日数を空けて同じ問題を解き、どれだけ理解できているかを確認するのも大切です。そうすることで、覚えた理論が記憶として定着します。最終的には本試験レベルの問題を解き、自分の実力を確認してみてください。このように、テキストを読むだけではなく、問題集を活用しても試験対策ができます。
解答の精度を上げる
国税徴収法は理論問題のみのため、理解している内容をいかに適切な言葉でまとめられるかが大切だといえます。単に理論の内容を覚えているだけでは不十分です。インプットした知識を、アウトプットする文章力が求められます。日々の勉強でアウトプットに慣れておくことで、解答の精度を上げることができます。
国税徴収法は勉強がしやすいため、他の受験者も高い点数を取る可能性が高い科目です。上位に食い込むためには、問題の取りこぼしをしないことが大切だといえます。
国税通則法や民法も学習しておく
国税徴収法に限らず、税理士試験では国税通則法や民法も試験範囲になっています。ただ、他の科目では、申告や更生、決定に関する理論問題で数回登場する程度です。一方で国税徴収法では、国税通則法が大きく関係してきます。また、留置権や抵当権といった民法で登場する物権関係や不動産登記法の知識も必要になる可能性があります。国税徴収法自体の学習量が少ない分、関連する法律を勉強しておくことが大切です。
国税徴収法は選択科目としておすすめ?
国税徴収法は、消費税法や相続税法などより馴染みが薄いこともあり、選択科目として選ぶかどうか、迷ってしまうという方も多いでしょう。
また、所得税や法人税のように、実務に直結する可能性が低いという点も判断を鈍らせる要因です。一方で、国税徴収法を勉強することで、税法の知識が深まるのも事実です。続いては、選択科目として国税徴収法を選ぶべきかどうか、またどんな人に国税徴収法が向いているのかについて紹介します。
学習しやすさに秀でている
国税徴収法は、消費税法のように改正が頻繁に行われる法律ではありません。そのため、学習しやすいというメリットがあります。また、試験内容も理論問題のみであり、難度が比較的低いのも特徴です。学習しやすい科目を選択したいという方におすすめとなっています。
一方で、国税徴収法は実務との関連が薄い科目ともいえます。そのため、国税徴収法を選択する場合は、他の選択科目は実務につながりやすい科目を選択するようにしてください。例えば、法人税法や所得税法、消費税法、相続税法の中からいずれかを選ぶのがおすすめです。
暗記が得意なら国税徴収法が向いている
国税徴収法は、どれだけ法律の内容を理解しているかが合格の鍵となる科目です。そのため、暗記力が非常に大切になります。計算よりも暗記のほうが得意という方には、国税徴収法は向いているといえます。ただ、理解力も大切だという点は覚えておきましょう。
まとめ
税理士試験に合格するには、国税徴収法だけではなく、さまざまな科目の勉強をする必要があります。国税徴収法の問題を解くために必要になる、暗記力や理解力などのスキルは簡単に高められるものではありません。税理士試験は難易度が高く、実質的に相対評価されることから、効率良く学習していくことが大切になります。
また、税理士になるためには税理士試験の合格だけでなく、実務経験も必要です。そのため、税理士事務所や会計事務所で働きながら試験勉強をしている方が少なくありません。仕事をしつつ、勉強時間を確保するのは難しいことだといえます。中には、日々の仕事量の多さが影響して、なかなか勉強時間を確保できないという方もいるでしょう。
目指して求人を探すなら
「会計求人プラス」
公認会計士や税理士を目指すなら、実務経験を積みながら資格取得も目指せる事が理想です。会計業界に特化した求人サイト「会計求人プラス」ならそんな職場も探せます!
投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
最新の投稿
- 転職ハウツー2024.11.11「会計事務所を辞めたい」と思ったときの対処法!転職成功者のインタビューも紹介
- 税理士2024.10.24簿記2級と3級の違いとは?試験内容からキャリアへの影響までを解説
- 士業2024.09.06社労士は未経験でも就職・転職できる?社会保険労務士のニーズも解説
- 税理士2024.09.05税理士の仕事内容とは?主な就職先、魅力・やりがいについても解説