日商簿記・全商簿記・全経簿記の違いとは?就職・転職に有利な資格を解説
本記事は、日商簿記・全商簿記・全経簿記の3つの簿記検定の概要、各試験の受験者層や出題範囲、合格基準や合格率などの違いを解説しています。就職や転職の際に有利になる資格はどれか、自分が目指すキャリアに応じた資格はどれか、ご参考になれば幸いです。
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コンテンツ目次
日商簿記・全商簿記・全経簿記の違い
簿記検定には、日商簿記、全商簿記、全経簿記の3種類があります。それぞれ主催者が異なり、級によって、難易度や合格率も異なります。
まず、難易度・知名度ともに高いのが日商簿記です。日商簿記は、日本商工会議所が主催する簿記検定で、主な受験者層は大学生や社会人です。全商簿記は、全国商業高等学校協会が主催しており、高校で使用している教科書を基本とした試験で、商業高校に通う高校生が多く受験しています。全経簿記は、全国経理教育協会が主催しており、経理・会計の専門学校生が主な受験者層です。なお、後述しますが、試験科目には「商業簿記」と「工業簿記」などがあり、基本的な知識としては商業簿記が主となります。
それぞれの簿記検定についてくわしく解説します。
日商簿記の試験内容と合格率
日商簿記3級
基本的な経理知識を問われるレベルです。合格すると大学の推薦入学に有利とされています。試験科目は商業簿記のみで、試験時間は60分、検定料は3,300円、合格基準は70%以上とされています。合格率は年度により異なりますが、直近では30%~35%程度です。
日商簿記2級
経営管理に役立つ知識と、財務諸表の数字から経営内容を把握できるレベルが求められます。3級同様、大学の推薦入学に有利です。商業簿記・工業簿記を試験科目とし、試験時間は90分、検定料は5,500円、合格基準は70%以上です。合格率は、直近では10%~25%程度となっています。
日商簿記1級
1級は極めて高度なレベルで、企業会計に関する法規を踏まえた知識を問われます。合格すると税理士試験の受験資格が得られ、大学の推薦入学にも有利です。また、職業能力開発促進法の指導員資格試験において一部が免除されます。
試験科目は商業簿記、工業簿記に加え、会計学と原価計算の4科目です。180分の試験時間(途中休憩あり)、合格基準は70%以上、1科目ごとの得点は40%以上であることが求められます。検定料は8,800円、合格率は10%~15%ほどの難関です。
全商簿記の試験内容と合格率
全商簿記3級
高校で使用している教科書に沿った問題が出題されます。商品売買業を営む個人企業の基礎になる会計処理が試験範囲で、試験時間は90分、合格基準は70点以上とされています。検定料は1,300円、合格率は40%~70%程度です。
全商簿記2級
3級と同様に商品売買業を営む個人企業における会計処理が試験範囲ですが、発展的な会計処理と、株式会社の基本的な会計処理について出題されます。試験時間、合格基準、検定料は3級と同様です。合格率はおよそ60%です。
なお、全商簿記2級は、日商簿記の3級レベルと同程度と想定されます。
全商簿記1級
会計と原価計算の2つの部門に合格すると1級が取得できます。それぞれ合格率は40%、45%となっています。株式会社の会計処理を中心とした問題と、製造業で使われる原価の計算手続に関する問題が出題されます。試験時間、合格基準は2・3級と同様で、検定料は各部門1,300円です。
なお、1級取得を推薦入試の基準としている大学も多く、進学時には有利です。全商簿記1級は、日商簿記の2級レベルと同程度と想定されます。
全経簿記の試験内容と合格率
全経簿記3級
試験科目は商業簿記で、小規模株式会社の管理に必要とされる簿記の基本的な仕組み、会計について問われます。試験時間は90分、受験料は2,000円、合格基準は70点以上とされ、合格率はおよそ60~70%です。
全経簿記2級
試験科目は商業簿記と工業簿記です。商業簿記は、中規模株式会社を前提として、小売・卸売業のみならず他業種にも応用できる簿記や資本の管理・仕組みが問われ、工業簿記は基本的な知識が求められます。
試験時間は各科目90分、受験料は各科目2,200円、合格基準は70点以上とされ、合格率は、商業簿記が40~50%、工業簿記は70~90%です。
全経簿記1級
試験科目は商業簿記・財務会計と、原価計算・管理会計、の2科目です。商業簿記・財務会計では、大規模株式会社を前提とし、簿記及び財務会計に関する基本的な事柄の理解を求め、原価計算・管理会計では、製造業の経理担当者や管理者として、原価の意義や概念、製造原価報告書、貸借対照表と損益計算書を作成し、利用・管理する能力が求められます。日商簿記2級と同等レベルと考えられます。
試験時間は各科目90分、受験料は各科目2,600円、合格基準は各科目70点以上で、1科目ずつ「科目合格証書」が与えられ、2科目合格すると1級合格証書が交付されます。合格率は、商業簿記・財務会計が25~60%、原価計算・管理会計は45~60%ほどで幅があります。
全経簿記上級
試験科目は商業簿記、財務会計、原価計算、管理会計の4科目です。上場企業を前提とし、商業簿記や財務会計においては、税理士などの会計専門職及びその候補者として必要な理解、業務の能力が求められます。原価計算や管理会計においても、製造・販売過程に係る原価の理論理解が求められ、責任者・管理者として、意思決定や業績評価のための会計を運用できるレベルとされています。
試験時間は各科目90分、受験料は7,800円、各科目の得点が40点以上、全4科目の合計得点が280点以上を合格としています。合格率は平均12~14%ほどです。
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就職・転職にメリットが大きい日商簿記
3つの簿記検定のうち、社会人の就職・転職に有利な試験は日商簿記でしょう。日商簿記は難易度が高く、実務を意識した試験内容であるため、企業からの信用度も高く、取得すれば心強い資格となるでしょう。なお、企業に高く評価してもらえるレベルとしては、日商簿記2級以上、全商簿記・全経簿記は1級以上だといわれています。
全商簿記は、前述のとおり、主に高校生が受験する検定で、進路決定に役立つ資格です。より上位の試験を目指していけば将来の選択肢も広がります。
ところで、税理士試験については、2023年より会計科目の受験資格は撤廃され、税法科目の受験資格は、学識、資格、職歴のいずれか1つの要件を満たせば良いことになりました。学識、職歴の要件を満たさない場合は日商簿記1級または全経簿記上級に合格すれば受験資格を得られます。税理士の受験資格を取得したい人は、日商簿記1級よりも合格率が少し高い全経簿記上級がおすすめです。
学習方法と科目の違い
日商簿記は大学生や社会人の受験生が多く、市販のテキストで独学するか、通学・オンラインの講座を受講することになります。3級であれば独学で十分対応できますが、1級は難易度が高く、講座を受講する受験生がほとんどです。
全商簿記・全経簿記は、高校で使用している教科書に準拠した問題集やテキストで学習を進めると効果的です。
試験科目には、商業簿記と工業簿記があります。
商業簿記
商業簿記は、一般的な業種を対象とするもので、商品やサービスを売買する商業経営を対象とした簿記です。企業の決算報告書を作成するための基盤となる知識です。経理業務には必須の知識といえるでしょう。
工業簿記
工業簿記は、製品を製造する工業経営を対象とした簿記で、製品の原価計算など特殊な知識が必要とされます。工業簿記は2級から問われますが、3級レベルの商業簿記の知識を身に付けてから勉強しましょう。計算力が必要なため、例題や過去問を数多く解き、数字に慣れることがポイントです。
簿記資格で転職を有利に進める
就職や転職で有利に資格を活かしたい方は、社会的に評価の高い日商簿記を取得すると良いでしょう。日商簿記1級は難易度が高いため、講座の受講を検討しましょう。
学生の方の場合は、比較的合格率が高い全商簿記・全経簿記を選べば、推薦入試や採用試験に役立ちます。また、税理士の受験資格を取得したい方は、全経簿記上級を目指すなど、目的に応じて選ぶと良いでしょう。
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投稿者情報
- 現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しているかたわら、会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。
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