税理士の確定申告業務とは?具体的な業務内容を解説
2023/11/01
税理士は、税務関係のスペシャリストであり、税理士しか行えない独占業務を手がける特別な職種です。確定申告に関連する業務も、税理士の独占業務の1つに該当します。確定申告は税理士の代表的な仕事でもありますが、詳しい業務内容を知らないという人や、未経験者でも対応できる業務があるか気になる人もいるでしょう。
今回は、税理士の確定申告業務の、具体的な業務内容やクライアント、繁忙期について解説します。
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コンテンツ目次
税理士に必要な能力
税理士の代表的な仕事として、「税務の代理業務」と「クライアントの相談業務」などが挙げられます。確定申告に関連する業務も税務の1つであり、日々細かな計算や書類のチェックに追われます。税理士には計算処理能力や集中力、几帳面な性質が求められます。
また、税務は複雑な法律に則って行われる業務です。毎年、改正された法律内容が発表されるため、その都度チェックをする必要がある他、クライアントの業種に適した法律を把握しておかなければなりません。また、導き出されたデータをもとに課題を見出し、正しく分析してクライアントにアドバイスをする業務もあります。こうした情報収集能力や分析力も、税理士に必要なスキルです。
クライアント側は、税務のプロである税理士を信頼して業務を依頼しています。クライアントの悩みを把握して解決に導くためには、コミュニケーション能力もかかせません。クライアントに寄り添い、問題点や改善点があれば正確に伝えられる力も求められます。
税理士の繁忙期と閑散期について
税理士の仕事は、繁忙期と閑散期に分かれています。それぞれの時期によって仕事内容が異なるため、把握しておくことが大切です。ここでは、税理士の繁忙期と閑散期について詳しく解説します。
税理士の繁忙期は11月から5月
税理士の仕事は、11月から5月にかけて繁忙期になります。この時期は、年末調整や確定申告、決算申告書など、様々な種類の申告書類の提出が重なり、それらの依頼が増えるためです。加えて通常の業務もこなす必要があり、依頼を受けるクライアントの数によっては人手が足りないほどの忙しさになることも少なくありません。
繁忙期に入ると、まず年末調整に関する依頼が入ります。12月から1月にかけて訪れる年末調整のピークが過ぎると、次に個人事業主の確定申告業務を行わなければなりません。個人事業主も多岐にわたり、医師や小売店経営、フリーランスなどの様々な業種に対応する必要があります。そのため、持ち込まれる書類の量も一気に増え、残業や休日出勤などで対応するケースも少なくありません。
確定申告業務が落ち着き始めると、法人税に関する決算業務が始まります。日本では、3月を決算月としている企業が多く、決算月の2ヶ月後である5月が法人税の申告期限です。このように、様々な申告業務が立て込むのが11月から5月であり、税理士の繁忙期となります。
税理士の閑散期は6月から10月
税理士にとっての繁忙期が終わり、6月から10月にかけては、比較的穏やかな時期に入ります。残業や休日出勤も少なくなり、日常的に行う巡回監査や月次決算などが主な業務です。業務が落ち着く閑散期は余裕ができるため、この期間にスキルアップを図る人も多いでしょう。例えば、税理士だけでなく公認会計士や社労士などの資格取得を目指している人は、閑散期に集中して学ぶことができます。
税理士事務所は、繁忙期に合わせて求人を増やす傾向があります。税理士事務所の中には、未経験者でも採用するケースがあるので、税理士事務所への転職を考えている人は、繁忙期を狙って転職先を探すと良いでしょう。
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税理士の具体的な業務内容
税理士の業務は、確定申告に関するものだけではありません。日常的に行う業務もあり、どのような内容かを把握しておくことが大切です。ここでは、税理士の具体的な業務内容を解説します。
税務代理・税務書類の作成・税務相談(独占業務)
税理士が行う業務のうち、メインとなるのが税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つです。いずれも、税理士のみに許された独占業務であり、税理士以外は行えません。
税務代理は、所得税や法人税などの税に関する申告を、納税者の代わりに行う業務です。税に関する法律は複雑で、頻繁に改正が行われることもあり、自分では把握しきれないというクライアントも少なくありません。そのため、税に精通した税理士が代理となり、正確な税務業務を行います。税務代理と合わせて、税務書類を作成する業務も独占業務の1つです。相続税申告書や確定申告書など、様々な税金の申告書類を正しく作成し、クライアントの代わりに申告を行います。また、クライアントからの税務相談を受ける業務も大切です。節税や税金に関する悩みだけでなく、資金繰りや事業計画、保険の相談まで幅広く請け負うケースもあります。
会社の決算のための業務
法人がクライアントの場合は、会社の決算に関する税務書類の作成も行います。月次決算を月末ごとに行い、中間決算や決算期に向けて準備を行う流れが一般的です。日本の企業は3月に決算期を定めるケースが多く、2ヶ月後の申告期限である5月は繁忙期のラストスパートとなります。しかし、決算期は企業によって異なり、9月に設けるケースも少なくありません。この場合は、11月が決算業務を行う月に当たります。
会社の年末調整に関する業務
企業は、給与を支払うタイミングで、所得税の源泉徴収を行います。しかし、源泉徴収した金額は、給与が変動しないことが前提となっている他、保険料が控除されていない状態です。そのため、本来納付すべき税額とは異なります。税額の過不足を調整する作業を年末調整といい、従業員を雇っている企業では必ず行う業務です。
税理士は、こうした年末業務の処理を請け負うこともあります。クライアントから、11月上旬ごろに必要書類を受け取り、11月下旬から12月の間に行う重要な業務です。
確定申告に関する業務
確定申告に関する書類作成も、税理士が担う業務の1つです。個人事業主やフリーランスに限らず、不動産や株式などの投資を行っているクライアントの申告も手がけます。そのため、様々な業種や状況に合わせてサポートをしなければなりません。また、通常業務と同時に行う必要があるため、確定申告の時期は忙しくなります。確定申告業務に関する詳しい説明は、以下の見出しでさらに詳しく解説します。
会計参与の業務
税理士の業務として、「会計参与」という役目を担う場合があります。会計参与とは、会社法において2006年5月に設けられた制度です。貸借対照表や事業報告書の作成を行う他、作成した書類を適切に保管し、株主や債権者に開示するなどの業務を行います。
すべての企業で会計参与を設置する必要はありませんが、監査役がいない場合や、非公開会社であるなど一定の条件を満たした場合は設置しなければなりません。会計参与は、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のみが請け負うことのできる業務です。
他の士業と連携した業務
税理士は、他の士業と連携した業務を担うことも少なくありません。例えば、税務訴訟においては「補佐人税理士」として、弁護士と連携して出廷し、陳述することがあります。租税訴訟において、納税者が正当な権利を主張するためには、税務に関する知識がかかせません。しかし、弁護士は法律の専門家であり、税務に関する知識が豊富とは限らず、場合によっては不利な展開になる可能性もあります。そこで、税理士が補佐人として知識のサポートすることで、弁護士は正当な主張がしやすくなるため、補佐人税理士は重要な役目です。
確定申告を依頼された際の税理士の業務内容
確定申告は、個人事業主が自分で行うこともできますが、手続きが煩雑で手間がかかるため、税理士に依頼するケースも多くみられます。また、確定申告をするためには、日々の記帳がかかせません。忙しい業務をしながら仕分け作業をすることは企業にとって負担であり、記帳自体の代行を税理士に依頼するクライアントもあります。ここでは、確定申告を依頼された場合、税理士が行う業務を詳しく解説します。
確定申告に必要な書類を作成する
確定申告に必要な書類は、業種や申告する人の状況によって異なります。例えば、事業以外の雑所得や一時所得を得ている場合は、所得金額を確認できる書類が必要です。保険料の控除をするためには、控除額がわかる各種証明書を用意する必要がある他、株取引で所得を得ているクライアントの場合は、年間取引報告書を求められます。このように、クライアントによって必要となる書類は様々で、それぞれに合わせて申告に向けた準備を行わなければなりません。
確定申告の手続きを行う
書類の準備が終わると、期日までに確定申告の手続きを行います。確定申告には、青色申告と白色申告があり、クライアントに合わせて申告方法を選ばなければなりません。また、申告方法によって、提出する書類が異なるので、丁寧に作業をする必要があります。
申告には、本人確認のためにマイナンバーの記載が求められ、成りすましを防ぐための本人確認書類も必要です。マイナンバーは、重要な個人情報であり、クライアントの中にはマイナンバーを提示することに不安を感じる人もいます。そのため、税理士とクライアントの間に信頼関係がなければ業務に影響が出る場合があります。税理士は、クライアントとの信頼関係を構築し、クライアントが安心して確定申告業務を任せられる体制を整えることが大切です。
税務調査の立ち合いをする
確定申告の申告内容に不備があった場合や、税務署が疑問を感じた場合は、税務調査を受ける必要があります。しかし、税に関する専門的な知識がないクライアントが税務調査の対応を行うのは難しく、税務署側も正確に判断することができません。そのため、税理士が税務調査に立ち会い、適切な対応を行い、税務署の判断に納得できなかった場合は、不服申し立てを代行します。
税理士に確定申告を依頼するクライアント
税理士に確定申告を依頼するクライアントは、主に下記の2パターンです。
- 確定申告をしたい個人
- 確定申告をしたい法人
それぞれの特徴について詳しく解説します。
確定申告をしたい個人
税理士に確定申告を依頼する個人としては、以下のパターンが挙げられます。
- 個人事業主
- 副業をしている人
- 投資家
- 公的年金受給者
- 不動産や株取引で利益を得た人
上記に該当する人のうち、年間の所得が、基礎控除額である48万円を超える場合は確定申告が必要です。また、雇用されている給与所得者でも、副収入で年間21万円以上の収入があれば確定申告をしなければなりません。このように、確定申告が必要な個人の状況は多岐にわたります。
確定申告をしたい法人
法人は、法人税や法人事業税、消費税などの確定申告を行う必要があります。日常的な業務をこなしながら、確定申告の作業を行うのは大変な労力です。また、個人の確定申告とは手順が異なるため、慣れていないクライアントにとっては不安も多いでしょう。そのため、確定申告業務に人手を割けない法人や確定申告に不安があるクライアントが税理士に代行を依頼するケースがあります。
税理士事務所の補助者やパートが携わる業務
税理士事務所では、税理士補助として働く人もいます。税理士補助は、税理士の業務をサポートする役目であり、独占業務以外を担うため、税理士の資格がなくても業務を行うことが可能です。アルバイトやパートとして税理士事務所に勤務しながら、税理士を目指す人も多いでしょう。
繁忙期の税理士事務所では、税理士補助の手助けを必要とする場合が多いです。例えば、確定申告業務においては、必要書類や手続きの準備を任されます。また、クライアントのオフィスを訪れ、帳簿のチェックをしたり、税務相談にならない範囲でアドバイスをしたりなどの業務に関わることもあります。
まとめ
税理士の業務において、確定申告は重要な仕事の1つです。繁忙期の最中に行われるうえに、ミスが許されないため丁寧に行わなければならない業務でもあります。クライアントが多く、業種が多岐にわたれば、確定申告業務は多くの人手を必要とするでしょう。税理士事務所では繁忙期の業務をこなすために未経験者を採用する場合があります。税理士になりたい人や税理士事務所への転職を考えている人は、繁忙期を狙って転職先を探すと良いでしょう。
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