RPA導入で税理士業務も効率アップ!活用方法を解説
2023/11/14
毎年、電子帳簿保存法の改正などから感じる会計事務所、税理士業務のデジタル化、IT活用の波を肌で感じているという人も多いのではないでしょうか。
さらに会計業界も人手不足が深刻になってきており、実務経験者の中途採用がなかなかうまくいかないという事務所様も増えているようです。
会計業務の効率化にRPA(Robotic Process Automation)が役にたつという話を耳にしたことはありませんか?RPAを導入することにより、それまでスタッフが行っていた業務を自動化することができ、より専門的な業務に集中できる可能性があります。
会計事務所の税理士業務ではすでに多くの方がRPAを活用して業務効率化を図っています。これからRPAの活用を検討されている会計事務所へ向けて、RPAについてわかりやすく紹介し、メリット・デメリットなどについて解説していきます。
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コンテンツ目次
そもそもRPAとはなにか?
RPAとは、PC上で行う業務をロボットで自動化するテクノロジーのことを言います。
ロボットというと、日本ではアシモや鉄腕アトム、ドラえもんのような物理的な形態を持ったものと考えてしまいがちですが、RPAにおけるロボットは仮想ロボット(ボット: Bot)を意味しており、PC上で人が操作する代わりに動く「自動プログラム」のことを意味しています。
会計事務所がRPAを導入するメリット
会計事務所がRPAを導入することで、エンドツーエンドの自動化が可能となるので、人手を介さずに会計プロセスを自動化することができます。RPAを導入することで、会社の経理スタッフは、書類の準備ではなく、書類からインサイト(会社の状況についての洞察)を収集することに集中できるようになります。
この他にも、会計事務所は、RPAボットに一度投資することでコストを削減することができます。長期的な投資額は、軽微な業務のために経理担当者を雇うコストに比べれば、比較にならないほど安価にすみます。
加えて、RPAを導入すれば、人間よりもはるかに速く業務を遂行することができるボットを手にいれることができます。メールやPDFファイルなどの非構造化データや請求書などをRPAで自動化することが可能です。
データ抽出はその一助となります。顧客情報フォームに入力するようなありふれた財務プロセスをRPAで処理すれば、会計事務所の従業員は、組織の収益性を高める価値の高い業務に集中することができます。
データ記録
会計におけるRPAの最適なユースケースの1つはデータの記録です。ほとんどの場合、データの収集と入力には時間がかかります。また、ヒューマンエラーも発生し、企業は巨額の損失を被ることになります。
RPAにより、会計事務所はエラーなく、完全に正確なデータを記録することができます。RPAを使うと手作業で取引をチェックする人員を雇う必要がなくなり、大幅なコスト削減も可能です。
買掛金と売掛金の管理
支払管理は、会計事務所において最もリスクの高い業務の1つです。RPAを導入することで、売掛・買掛のプロセスを効率化することができます。厳格な買掛金・売掛金管理のためには、遵守すべき厳格なタイムラインがあり、支払額も適切である必要があります。
RPAを通じて、ベンダーへの支払いやステークホルダーからの入金のプロセスを自動化することができます。RPAを使えば、受信した請求書情報(請求書番号、受信データ、金額など)をPDFからSAPのWebアプリケーションや社内のスプレッドシートに転送することができます。その結果、PDFの複製を社内サーバーに置くことができます。これは、規制遵守を確実にするために非常に有用なメリットです。
支払金の送受信のタイムラインを自動化することが可能です。RPAボットは、顧客マスターファイルの維持や与信承認などをより簡単に(つまりより速く、正確に)処理することができます。同じことが、注文や現金受領処理にも当てはまります。
また、納期遅れの連絡もメールにて迅速に行うことができ、納期遅れの連絡に伴う手間を軽減することができます。
RPAボットを使って承認ワークフローを構築し、支払い、受領を処理し、すべての取引が時間通りに行われるようにすることが可能です。また、財務監査ポリシーや規制を確実に遵守することもできます。
インボイス管理
銀行であれ、金融機関であれ、請求書は日常業務の一部です。1つの請求書の処理には、ほとんどのプロセスで手入力が必要なため、2週間ほどかかります。財務プロセスにRPAを導入すれば請求書管理を簡素化することが可能です。
RPAボットは、領収書の収集と抽出、データの収集、ベンダーへの請求書の作成及び送信、通知の提供、照合など、すべてを数分で行うことができます。RPAボットは24時間365日利用できるため、請求書を見落とす可能性が低くなります。RPAソフトウェアが領収書を受け取るとすぐに、直接データを抽出可能です。
ファイナンシャル・クロージング(決算業務のサポート)
会計事務所における最適なRPAユースケースの1つは、決算のサポートです。1年間のすべての経費、領収書、取引は、Excelなどのシステムからサブ台帳への記録整備が必要です。これは時間のかかる作業となりがちです。
しかし、RPAにより、企業はマスターデータ(帳票)の抽出と適切な帳簿への転記プロセスを自動化することができます。会計処理に必要な請求書、領収書、書類は数百枚に及びます。会計システムとしてのRPAは適切な情報を適切なタイミングで適切なフォームに提供することで、従業員の年次決算や月次決算を支援します。
財務計画
財務結果の計画と予測は、経理担当者にとっていくつかの課題を保有しています。経理部門において、RPAは予算編成と一定期間の経費計画を簡素化できるツールです。RPAは、財務計画や予測を行うシステムにデータセットを提供します。
RPAボットが社内外のソースからデータを抽出し、予測システムに送り込み、情報に基づいた意思決定を行うための洞察を提供することで、結果の予測が容易になるのです。最新の情報を提供することで、複雑な処理も簡単に行えるようになります。
RPAを導入するデメリットとは
RPAには多くのメリットがありますが、RPAを導入した場合にはデメリットもあります。
たとえば、RPAを導入すると、特定の業務が自動化されるため、その業務に管理者が必要となりますが、管理者自身がRPAでどのような処理を行っているかわからないケースがあります。
この場合、ワークフローがブラックボックス化して、特定のワークフローを会社の誰も理解してないという状況が生じてしまいます。
また、RPAを導入した結果、特定の業務に携わる人数が少なくなります。RPAを導入すれば、そのワークフローを管理する人が少数しかいないことになるので、ワークフローの属人化が発生する可能性があります。
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RPAができること、できないこと
RPAは、大量の反復作業の処理を得意とするため、これを人間に処理させるよりも、効率的かつ正確に行なうことができます。人間と違って、RPAボットは疲れることなく 24時間働き続けることができ、初期導入コストと保守・運用コストがかかるとはいえ、非常に高い投資収益率 (ROI) を達成することが可能です。
RPAは、人間が物理的に書類からデータを読み取って解釈し、自分のパソコン上の複数のアプリケーションに入力する経理業務のような作業を自動化することを得意としています。RPAは、有限のタスクを高い精度と正確さで実行し、完了するようにプログラムされています。
従業員を時間のかかる緻密な作業に集中させる代わりに、自動化ソフトウェアを活用することで、同じ作業をより短時間で完了させることができます。RPAを利用すれば、入力やコピーペースト等、毎日・毎月行われる定形業務を簡単にロボット化し、プログラマーや技術者がいなくても自分たちで業務の自動化が実現可能です。
ミスの削減や効率化だけでなく、手作業から自動化への移行により、従業員は、ハイレベルで戦略的、かつ創造的な業務に時間を割くことができるようになるのです。ロボットが人に代わって作業することで、人件費が高い財務・会計の人材が単純作業から解放され、付加価値の高い創造的な業務により多くの時間を振り分けられるようになります。
その結果、従業員は積極的に業務に取り組むようになるだけでなく、企業の競争力も向上するのです。しかし、RPAは非定型作業を苦手としています。そのため、個別の判断が必要な業務や変更が多い業務、ルールが多い業務などはRPAによる自動化に向いていません。ただし、単純な作業だけでなく少し知的な作業についてもRPAが担うことが予想されます。
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会計事務所でRPAが普及している背景
RPAが会計事務所で普及している理由は、会計事務所で人間が行っている業務の多くをRPAが担うことができるようになったからです。会計事務所で行われている会計プロセスは、大量のデータの収集と分析を必要とし、またルールベースで反復的な作業です。仕訳・転記といった作業はまさにこの典型例と言えるでしょう。
この意味で、会計プロセスとRPAは、まさに理想的な組み合わせと言えるでしょう。会計プロセスには、膨大な数字と大量のデータが存在しています。このプロセスを処理するためには、正確でミスのない記録と管理が不可欠です。
会計上のミスが1つでもあれば、何百万円もの損失を被る可能性があります。そのため、ヒューマンエラーを減らし、効率化を実現し、正確な結果を出すための技術の必要性が差し迫っているのです。そのために、会計事務所においてはRPAの普及が進められています。
会計ソフトにはさまざまな機能が盛り込まれ、多くの業務が自動化されて効率化が図れるようになってきています。パソコンにインストールするような会計ソフトから、クラウド型やSaaStとしてブラウザ以上で操作できるクラウド会計なども主流となってきており、よりRPAとの親和性が高まっているのです。
参考:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」
RPAとAIやマクロとの違いとは?
RPAと似た技術にAIやマクロのような技術があります。RPAはルールベースの技術であるため、状況に応じた判断ができるわけではありません。一方で、AIは判断ベースの技術であるため、ある程度複雑な判断をすることができます。
AIに画像を見せるだけで、その画像から特定の人物だけを判定(判断)することができますが、RPAにはそれができません。また、マクロは、Microsoft社のソフトウェア内でしか起動しません。しかし、RPAを利用すれば、異なる会社が作ったソフトウェア間でもデータのやり取りが可能であるという違いがあります。
今後も進化するRPA
従来のRPAにはなかった技術の開発が進んだことで、RPAに任さられるワークフローも増えてきています。たとえば、活用事例の1つとしてRPAとOCR技術、AI技術を組み合わせたRPA AI-OCRという技術があります。
OCRとは、Optical Character Reader(またはRecognition)の略で、取得した画像データのテキスト部分を認識して、文字データに変換する技術のことを言います。簡単に言えば、OCRとは、紙の文書をスキャナーで読み込んで、文書に書かれている文字を認識してデジタル化する技術の総称です。
人間であれば、紙に書かれている文字を無意識に理解して、次のワークフローに活かせるように処理しますが、コンピューターは、そもそも文字を自動的に読み取ることができません。そのため、紙に書かれた文字をデジタルデータとして活用するためには、一度、人間が読み取って文字に変換しなければなりませんでした。
つまり、プログラムが処理できるように、わざわざ人間がデータを加工して読み込ませていたわけです。一般に、これがデータ入力と呼ばれるものです。
しかし、人間が文字を入力するという作業は非常に効率が悪く時間がかかります。正確性にも欠けるでしょう。この作業を人間の代わりに行ってくれるのがOCR技術なのです。
AI技術を活用したOCR技術は、OCRにAI技術を加えたものです。AI技術を組み合わせれば、機械学習による文字認識率の向上や、帳票フォーマットの設計をせずに、特定の項目だけを抽出することが可能となります。
たとえば、会計事務所・税理士事務所において帳票をOCRする場合、これまでは、事前に読取位置や項目の詳細定義をする必要がありました。
要するに、特定の帳票フォーマットを使わないとOCRによって読み取ることができなかったわけです。しかし、AI技術を活用すれば、読取位置や項目を自動抽出できることから、紙ベースの資料を単にスキャンするだけで文字を認識してくれるようになります。
たとえば、請求書や納品書、発注書といった帳票が取引先ごとに異なるフォーマットであったとしても、AI OCRでスキャンするだけで必要な項目を抽出できるので、業務効率を大幅に短縮することができるのです。結果として、AI-OCRを活用すれば、たとえば紙の請求書の情報を会計システムなどの業務システムに入力する作業を効率化することができるでしょう。これまでは、会計システムに何らかの入力を行なう場合、請求書に書かれている文字や数字の情報だけでなく、その情報が何を意味するのかが分からないと適切な入力ができませんでした。
結果として、適切な入力作業などを人間が行う必要があったり、決まったフォーマットの帳票にしか対応できなかったりという問題があったのです。加えて、請求書の情報を会計システムに登録するには品名や金額などの請求書に記載されている情報だけでなく、部門や科目などの仕訳を行う必要があり、そこも人間が行う必要がありました。
AI-OCRを活用すれば、読み取った情報が何の項目なのか、業務システム入力に必要な情報は何か、なども抽出、生成することができるので、業務システム入力作業を大幅に効率化させることができます。
さらにはAIが多くの事例を学習することで精度が向上しますので、使えば使うだけ効果が上がるというのもポイントです。
また、RPAの普及により税理士の仕事はなくなるのかについて、更に詳しく知りたい場合は「RPA時代の到来!会計業界のスタッフはどう変わるべきなのか?」の記事をご覧ください。
RPAに限らず会計事務所でIT活用が求められる
重要なのは、RPAに限らず会計事務所が様々な情報技術(IT)について、情報収集し、取り入れて活用していくことです。すでに会計事務所業界でもIT活用を率先している事務所と、IT活用が進んでいない事務所とで二極化しています。将来的に労働人口が減少していくことがはっきりとしているなか、会計事務所が生き残れる1つの方法としてIT活用による業務改善や業務効率化が必須となる時代がすぐそこに来ています。
また、それは顧問先の中小企業でも同様のことが言えるわけです。IT活用することで業務効率化を図り、不足しているリソースを補っていかないと生き残れない時代になってきています。
RPAはAIと並び、税理士や税理士補助の業務を奪うものとして警戒感を持っている事務所も多いと耳にしますが、それほど業務の効率化が図れる可能性があるということです。会計事務所のスタッフは単純作業から解放されることで、残業時間を圧縮することができるようになり、付加価値の高い仕事に集中することができます。
また、事務所の繁忙期は残業が増えてしま鵜ほど多忙だという定説ももはや過去のものとなってきつつあり、繁忙期だあっても働き方を改善し、残業はゼロという事務所も増えています。将来を見据えて、RPAやAI、デジタル化などIT活用を進めてみてはいかがでしょうか。
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投稿者情報
- 現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しているかたわら、会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。
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