
会計事務所のテレワークに潜むセキュリティリスク!対策はあるのか?
2023/11/01
これまで、なかなか進まなかった会計事務所や税理士業界のテレワーク導入ですが、新型コロナウィルスの感染拡大によりテレワーク導入が加速し、状況は一変しました。
2022年に入り、コロナウィルスの感染がおさまらない点や働き方の多様化を認める状勢から、今後もいわゆるテレワークでの勤務を継続する企業も多くあるようです。引き続き、勤務形態を出社なのかテレワークなのか、柔軟に対応する必要があるでしょう。
ただ、当初は会計や税務業務を行う業界においては税理士法やセキュリティの観点からテレワークの導入が難しいとされてきました。税理士業界であまり進まなかった要因はいくつかありますが、その一つが税理士法の問題です。そして、もう一つ重要なのが、セキュリティ対策だと言われています。テレワークの導入率の高いIT業界はテレワークの導入時にセキュリティ対策も行い、安全な環境の準備ができたということも導入率が高い要因だと思われます。
では、今の会計業界・税理士業界のテレワークはセキュリティ対策がされていて、安全な環境の構築ができていると言えるのでしょうか。事務所によってはIT活用が進んでいないケースもあり、適切なセキュリティ対策が取られていない可能性が高いと思われます。
特に中小規模の会計事務所、個人事務所ではセキュリティ対策がすすんでいない事務所も一定数あると思います。危険な状態でのテレワークは多くのリスクが潜んでおり、おすすめすることはできません。
今回は、税理士・会計事務所や士業界で生じやすいテレワーク導入への壁やセキュリティ対策の課題の内容について検討します。どのようなセキュリティ対策が必要なのかを解説し、業務に役立てていただければと思います。
コンテンツ目次
そもそもテレワークとは
そもそもテレワークとは、Tele(離れた)とWork(働く)を組み合わせた造語です。「情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を意味します。
また、類似する言葉で「リモートワーク」があります。日本テレワーク協会により、その定義づけは「Remote(遠隔)」とWork(働く)を組み合わせた造語で、オフィスから離れた遠隔地で働く」という勤務形態を指します。つまり会社のオフィスには出社せず、自宅などの離れた場所で仕事をする働き方です。
テレワークとリモートワークは、どちらも「オフィス以外での場所で就業する柔軟な働き方」という点で共通しています。遠隔で働くという意味では大きな違いはないため、メディアなどで取り上げられる際は、ほぼ同じものとして扱われています。
以前より働き方の1つとして、一部の大企業などで導入されていましたが、現在のようにこれまで浸透してはいませんでした。
ここまでテレワークが普及したのは、あきらかに新型コロナウィルスの影響によるものだと思われます。
※参照:テレワーク総合ポータルサイト(厚生労働省) テレワークとは
テレワークの働き方は1つじゃない
日本テレワーク協会によると、テレワークは以下の4つに分類されています。
在宅勤務
自宅を就業場所とする働き方。通勤時間の削減、移動による身体的負担の軽減が図れ、時間の有効活用ができる。
サテライトオフィス勤務
企業のサテライトオフィスや一般的なコワーキングスペースで行うもの。企業が就業場所を規定する場合も、個人で選択する場合も含む。
ワーケーション
リゾートなどバケーションも楽しめる地域でテレワークを行うこと。ビジネスの前後に出張先などで休暇を楽しむブレジャーも含む。
モバイルワーク
電車や新幹線、飛行機の中等で行うもの、移動の合間に喫茶店などで行うものも含み、業務の効率化に繋がる。
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会計事務所でテレワーク導入が進まなかった理由
主に以下の2つのポイントが理由で会計事務所のテレワーク導入が進まなかったとされています。
紙の証票の扱い、持ち出しができない
紙ベースで会計・税務に関する情報(証憑や関連資料)を管理するケースが多く、その持ち出しにリスクがあるとされていた。
税理士法の2箇所目の事務所設置問題
「税理士法 第40条第3項」で2箇所目の事務所の設置が禁止とされているため、事務所以外の自宅で業務を行うことが違法ではという議論があった。
会計事務所のテレワークは必要なのか?
会計事務所でも、新型コロナウィルスの感染状況や働き方の多様化の背景から、テレワークの導入は必須です。通勤による時間や交通費の削減、子育てや介護中の職員の離職率の減少やライフワークバランスの為にも、出来るところから導入を検討しましょう。
どうしても事務所でしか確認できない会計ソフトやメール確認等はありますが、クラウド上で使用可能なツールの活用や業務フローを整理しながら、テレワーク化できる部分がないかを見直ししましょう。
税理士はテレワークの導入ができるのか?
テレワークの需要が高まっていくなか、2020年4月に日本税理士会連合会が「税理士の業務とテレワーク」を発表しました。
そこで「臨時的に仕事を自宅に持ち帰り税理士業務を執行したり、自宅への来客に対し一時的に税務相談に応じる等の行為を行ったとしても、自宅が外部に対する表示の有無等の客観的事実により、税理士事務所と判断される状態でなければ2か所事務所の問題は生じない」と明言したのです。
これは税理士でもテレワークができるという業界の共通認識となり、テレワーク導入が拡大する契機になりました。
会計事務所のテレワークで注意すべきこと
他の業界に比べ、会計・税務の業務に関してはセキュリティ対策が重要視され、情報を管理する側としてはその対策がテレワーク導入への鍵となります。セキュリティ体制の不備や不適切なツールを事務所が使用したことによって情報漏洩などが発生すれば、事務所の信頼が失われるでしょう。
また、顧客との関係性の悪化や大きな訴訟問題に発展する可能性があります。会計事務所や税理士業では、テレワーク導入により起こり得るリスクを把握し、適切なツールやルールによりセキュリティ対策を実践することが重要です。
テレワーク導入によるセキュリティリスク
ここで、一般的にテレワーク導入に伴うリスクを確認しましょう。
自宅ネットワーク利用
在宅勤務で自宅のネットワークを介して社内ネットワークにつなぐケースがある。その時、自宅のルーターやパソコンなど周辺機器のセキュリティ対策に不足があると、社内ネットワークにマルウェアが広がったり、それにより重要な情報の改ざんなどが生じる可能性がある。
従業員の私物端末利用
テレワークでは会社貸与の端末ではなく、私物端末が使われることがある。私物端末はセキュリティ対策が十分でないこともあり、マルウェア感染などのリスクが高まる。また、個人のパソコンには業務外のクラウドサービスやフリーソフト等がインストールされていることが多い。誤った使用方法で社内情報をネット上に共有してしまう懸念がある。
公衆無線LAN利用
カフェなどで仕事をする際、無料の公衆Wi-Fiを利用することが多い。ただし、公衆Wi-Fiの中には、通信が暗号化されていないもの、通信傍受を目的として設置されたものが一部あり、通信内容を盗み見されるリスクになる。
PCや記録媒体の紛失
自宅や移動中に業務を行うため、ノートパソコンやスマホ、USBメモリなどの端末機器や記録媒体を持ち出すことが多い。これらは個人管理になるため紛失や盗難のリスクがある。さらに、顧客の個人情報や機密情報などが入った端末類が盗難にあった場合、情報漏洩時の責任が大きく問われる。
内部不正
テレワークの浸透により、上司や同僚の目の届かないところで仕事をすることでセキュリティ意識が低下しやすい。またそのような環境から不正行為がしやすくなり、また、あらゆるところから社内データにアクセスすることができるため、情報漏洩の危険性が高い。
フィッシング、標的型メール
メール等を使ったフィッシング詐欺や標的型メールが増加し、その内容も年々巧妙化している。メール本文内のリンクや添付ファイルを自然な流れで開封させようとし、いったん開封・アクセスするとウィルスをインストールされるというリスクがある。
RDP(リモートデスクトップ)への不正アクセス
RDPは外部の端末から組織内のネットワーク上のサーバーにアクセスすることができるWindows OSに付随するサービスであるが、不正アクセスの経路にもなり得る。
テレワークにおけるセキュリティ対策
先述のリスクに対し、必要とされるセキュリティ対策は以下のようなものとされています。
- テレワークのガイドラインの策定と実践
- 従業員に向け研修受講、セキュリティ意識の向上
- 社内ネットワークへの接続にはVPNを利用
- 利用端末へセキュリティソフトやツールを導入
- OSやソフトの更新を行い最新の状態を保持する
- 端末の紛失、盗難対策を事前に行う
- 自宅のネットワークをセキュアにする
- 外部サービス利用に対する対策を講じる
まとめ
会計事務所では、顧客先への訪問や紙の証憑をなくすことが難しく完全な在宅ワークにシフトすることは困難に思われるでしょう。しかし、事務所外のどこからでも仕事が可能な体制・環境を整えることはどのような状況下でも一定の生産性を保つためには大切です。
テレワーク導入において、セキュリティ対策は欠かせないものですが、できるところから始めると良いでしょう。今後も必須となるデジタル化やDX推進への対応をすることで事務所の付加価値が高まることも期待できます。
また、税理士事務所や税理士法人の場合は税理士における適切な監督下での業務を義務付けられています。セキュリティ対策に加え、業界特有の注意点も踏まえた安全な環境を整備しましょう。
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