税理士試験科目の住民税・事業税の特徴とは?試験内容と勉強方法を解説
2023/11/01
税理士試験における選択科目の1つとして、住民税と事業税があります。これらはセットになっており、どちらか一方しか受けることができません。どちらも学習時間が比較的少なくて済み、かつ多くの方に馴染みのある税法のため、住民税と事業税のどちら科目を選んだら良いか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、住民税・事業税それぞれの科目について紹介します。加えて科目の合格基準や難度、勉強方法も解説しますので、税理士試験の選択科目を選ぶ際の判断材料になります。また、詳細を知ることでより効率的に勉強できます。税理士試験に向けて動き出している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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コンテンツ目次
住民税・事業税の科目とは
選択科目を選ぶためには、それぞれの科目について詳細を知る必要があります。住民税と事業税は、比較的馴染みのある科目ですが、詳しく知らないという方も少なくありません。まずは、住民税と事業税の科目について紹介します。
住民税とは
所得のある個人および法人に対して、課せられる税金を住民税といいます。地方税法によって定められており、道府県民税および市町村民税が該当する科目です。住民税は、昭和56年から税理士試験の科目に取り入れられ始めました。40年を超える歴史があり、その他の科目と比べても、多くの方に馴染みがある税法なので、勉強にも取り組みやすいでしょう。
事業税とは
事業税も住民税と同じく地方税に該当し、法人もしくは個人が行う事業活動に対して課される税金です。事業活動を行ったことのない方にとっては、馴染みが薄いかもしれません。住民税と比べると受験者が少ない傾向にありますが、試験の難易度自体は低いわけではありません。そのため、その他の科目と同様に、しっかりと対策を立てる必要があります。
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住民税・事業税の科目の特徴
税理士試験において、住民税もしくは事業税のどちらかを選ぶためには、科目の特徴を把握しておかなければなりません。どちらも比較的勉強がしやすい科目ですが、より自分に合った科目を選ぶことが大切です。
続いては、住民税と事業税それぞれの特徴について紹介します。
住民税の特徴
住民税はその性質上、所得税と関連の深い税といえます。そのため、所得税法と組み合わせるケースが多い選択科目です。試験内容としては、理論問題と計算問題がバランス良く出題される傾向にあります。選択必修科目である所得税法や法人税法と比較すると、ボリュームは半分以下です。
事業税の特徴
住民税が所得税との関わりが深い一方で、事業税は法人税と関連しています。そのため、法人を相手にした事業をしようと考えている方は、事業税を選ぶケースが多いでしょう。一方で、事業税自体は地方税に分類されるため、地方税に関する内容を学ぶ必要もあります。
住民税における過去の出題例
住民税の試験問題は、理論と計算に分けられます。理論は、個人もしくは法人から2問出題され、計算は総合的な内容です。所得税法も絡めた知識が必要となるでしょう。過去の問題から一例を紹介します。(※1)
〇第1問(50点満点)
問1:個人住民税におけるひとり親および寡婦に対する税制上の優遇措置に関する問題が出題されました。それぞれに対する所得税の取り扱いと相違点を意識しながらまとめる記述問題です。住民税と所得税をどれだけ理解しているか、試される問題といえるでしょう。
問2:個人住民税における長期譲渡所得の課税特例について、3つの例が提示され、それぞれの適用対象や道府県民税および市町村民税の税率などを意識して簡潔にまとめる問題が出題されています。譲渡の内容や当該譲所得の金額によって、特例や税率が異なることを理解しているかどうかがポイントです。
〇第2問(50点満点)
提示された資料をもとに、市民税の額について計算過程を踏まえて、答える問題が出題されています。個人住民税に関する特例や譲渡所得の計算、所得に関する計算など総合的な理解が試される問題です。
事業税における過去の出題例
事業税の試験は、計算よりも理論が重視される傾向にあります。しかし、配点に関しては理論と計算が半々になっているため、バランス良く勉強することが大切です。過去の問題から一例を紹介します。(※2)
〇第1問(50点満点)
問1:二つ以上の都道府県に、事業所を設けている法人の申告納付について、問われる問題が出題されました。資本金1億円を超える法人という設定で、資本金の額による事業税額の算定を理解している必要があります。
問2:とある会社で、税務申告の担当をしていた人が、別の会社に転職し再び税務申告をする場合の留意する点を説明する問題が出されました。事業内容や資本金、売上高などの情報から、所得課税や収入金額課税の課税標準を導く必要があり、これらを正しく理解できているか、どうかが求められています。
〇第2問(50点満点)
問1:本社がある都道府県とは別の地域に、営業所および工場を持っている会社について、提示された資料をもとに、各県に納付すべき事業税額を解答する問題が出されました。資本金が1億円を超える法人の事業税額における算定方法を正しく理解しているかが問われています。
問2:二つの県で、事業所を設けている個人事業主が、全ての事業を廃止した例で、提示された資料をもとにして、各県に納付すべき事業税額を求める問題が出されました。個人が年の途中で事業を廃止したケースで、個人事業税の算定が正しく理解できているかが問われます。どちらの問題も、計算過程を明らかにする必要があるため、丁寧な解答が求められるでしょう。
税理士として働くには実務経験も必須
税理士試験では、11科目ある中で5科目の合格が求められます。事業税だけではなく他の選択必修科目や必修科目もあるため、さらに多くの勉強時間が必要になります。加えて、税理士として働くためには実務経験も必要です。そのため、税理士事務所や会計事務所で働きながら合格に向けて勉強をしている方も少なくありません。
税理士試験における住民税・事業税の合格基準と難度とは
住民税・事業税ともに、必修科目や他の選択必修科目と比べて、勉強時間が少なくて済む科目ですが、合格率が群を抜いて高いわけではありません。住民税に関しては、比較的高い傾向にはありますが、それでも20%前後にとどまっています。効率的に勉強をするには、住民税・事業税それぞれの難易度を知っておくことが大切です。(※3)
住民税の難易度
税理士試験における住民税の合格率は、令和元年度で19.0%、令和2年が18.1%となっています。その他の科目と比較すると高い合格率といえるでしょう。その理由として、計算問題の多さが挙げられます。正確な計算ができれば、合格できる可能性は高くなるでしょう。一方で、ケアレスミスが大きく影響する科目でもあります。また、計算時間が足りなかったというケースもあるため、正確かつスピーディーに解答するスキルも必要です。計算問題や電卓入力が得意な方にはおすすめの科目といえます。
また住民税の試験内容は、所得税法の科目と試験範囲が重なりやすい点も特徴です。どちらも受験することで、効率良く勉強できるでしょう。
事業税の難易度
事業税も住民税と同じく、比較的学習ボリュームが少ない科目です。しかし、住民税と比べて合格率は低い傾向にあります。令和元年の合格率は14.8%、令和2年は13.1%でした。
また、住民税が計算重視であるのに対して、事業税では理論問題が多く出題される傾向にあります。そのため、事業税の内容を正確に把握したうえで、しっかりと文章にまとめられるスキルが必要です。暗記が好きで、かつ表現力や速記能力に長けている方に向いているといえるでしょう。
住民税・事業税の勉強方法とは
税理士試験は、さまざまな科目を勉強する必要があり、各科目でリンクする部分が多いのも特徴です。そのため、選択科目を絞ったうえで、効率的な勉強方法を押さえておく必要があります。続いては、住民税・事業税それぞれの勉強方法について紹介します。
住民税の勉強方法
住民税は、個人・法人ともに関係のある科目ですが、税理士試験では個人住民税の出題が多い傾向にあります。そのため、勉強する際も個人住民税を中心にしておくと良いでしょう。また、個人住民税は所得税とも深く関係しています。所得税と併せて勉強すると、より深く理解することができるのも特徴です。
また、理論問題では規定の趣旨が問われるケースも多く見られます。詳細に分けられている規定をしっかりと理解することで、本試験でも精度の高い解答ができるようになります。過去問題を振り返りながら、出題されやすい論点を見つけ出すことが必要です。
事業税の勉強方法
事業税は、マイナー科目ともいわれ、問題集やテキストが少ないという点がデメリットです。ただ、事業税は地方税に含まれる科目のため、地方税の参考書を活用できます。また、法人税の勉強と併せて事業税についても学びを深めると、効率良く勉強ができるでしょう。
住民税と事業税のどちらを受験するのがおすすめ?
住民税・事業税ともに学習時間が少なく済むため、どちらを選べば良いのか迷う方も少なくありません。
実際、出題範囲はどちらも狭く、また難易度も同等です。それぞれのメリットを押さえておくと、自分に向いている科目が選びやすくなるでしょう。続いては、住民税と事業税について、どちらがおすすめかについて紹介します。
自分のキャリアを考えて選ぶ
住民税・事業税は、両者とも実務で使われることが比較的少ない科目です。そのため、他の科目と比べると実用性を感じにくいという方もいます。一方で、住民税は所得税と大きく関わりがあり、事業税は法人税と関わりがある点が特徴です。そのため、法人・個人どちらに主軸を置いて仕事をするかによって、選択肢が変わってきます。また、税理士事務所や会計事務所で働きながら勉強をしている場合は、仕事内容にリンクする方を選ぶと勉強しやすくなります。
得意分野を考えて選ぶ
住民税の試験内容は、事業税よりも比較的計算問題が多く出題されます。理論的な問題が苦手という方は、住民税を選んでみてください。ただし、正確でスピーディーな計算が求められる点には注意が必要です。ケアレスミスをしてしまうと、計算方法を理解していても合格点に届かない可能性があります。
一方で、事業税は理論問題が重視されています。内容をしっかり把握して表現する力に長けている方は、事業税を選ぶのがおすすめです。
より実務で活かしたい場合はその他の科目がおすすめ
住民税・事業税ともにいわゆるマイナー科目であり、受験者数が少ないのが特徴です。他の科目を受けて合格したのちに、最後の科目として選ぶ方も多いでしょう。税理士試験で受ける科目をより実務で活かせるものにしたいと考える方には、住民税・事業税の科目は向いていません。実務に活かせる科目であれば、相続税法や消費税法がおすすめです。それらを先に受験してから住民税・事業税を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
住民税・事業税ともに、勉強時間が比較的少なくて済む科目ですが、200時間程度の勉強時間は必要になります。また、税理士試験は必修科目が2科目ある他、選択必修科目を含めると、全部で5科目の合格が必要です。ボリュームの多い科目になると、600時間程度の勉強が必要になります。また、税理士になるためには実務経験も欠かせません。そのため、税理士事務所や会計事務所で働きながら試験勉強をこなしている方も多くいます。
働きながら試験勉強をする場合、時期によっては「忙しくて勉強時間を確保できない」というケースも多いでしょう。効率良く勉強を進めるためには、環境を整えることが大切です。
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投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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