税理士試験科目の法人税法とは?試験内容と勉強方法を解説
2023/11/01
税理士は、独立開業できる、高年収を狙える、定年がないなどの理由から人気のある職業です。しかし、税理士試験の難易度は国内最高峰であるため、取得に長い年月がかかることも珍しくありません。税理士試験の難易度が高い理由の1つに、「法人税法」の科目があります。法人税法は、企業の税務を担当する税理士にとって避けては通れない科目です。
そこで今回は、税理士試験の法人税法の科目について知りたい方、法人税法の試験に合格したい方に向けて、法人税法とは何か、法人税法の特徴、法人税法の合計の合格基準と難易度、法人税法の勉強方法などについて紹介していきます。この記事を読めば、法人税法の問題の特徴をつかむことができ、法人税法の合格基準と難易度を把握できます。
コンテンツ目次
法人税法とは
法人税法は、端的にいえば「法人の所得にかかる税金について定めた法律」です。法人税を納付するときに守るべきルールが記載されています。法人税を算出するために必要な課税所得の計算方法や税率などが記載されていますが、内容は頻繁に変更されます。法律自体が改正されたり、臨時の措置が加わったりすることも多いので、自社に関連する変更箇所は常に把握しておくことが大切です。
法人税は3種類に分かれる
法人税法では、法人税を「法人所得税」「法人事業税」「法人住民税」の3種類に分けています。この3種類の税は、「法人税等」という勘定項目を使って仕訳をします。
法人所得税は、法人の事業によって得た所得に対して毎年かけられる税金です。一般的な法人税のイメージは、この法人所得税を指すことが多いです。課税所得金額にかけられる税率は法人の種類によって異なります。法人事業税は、都道府県に事務所や事業所を設置している場合にかけられる税金です。特定の業種を除いて所得に課税され、法人税等に含められます。法人住民税は、都道府県や市区町村からかけられる税金で、事務所や事業所を設置している法人が対象です。法人税割と均等割の2種類がありますが、法人税等に含められるのは法人の所得を基に計算する法人税割です。
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法人税法の科目の特徴
法人税法は、税理士試験における選択必須科目の1つです。試験時間は2時間で、税理士試験の試験科目の中では出題範囲が広い特徴があります。税理士試験における法人税法の出題形式は、理論問題と計算問題に分けられており、それぞれ50点満点です。
このうち理論問題は、租税特別措置法の規定の説明を求める問題や事例に適用させる問題などが出題されます。一方の計算問題では法人が実際に納付する法人税額を計算する問題が出ます。出題傾向から見れば、法人税法に関する知識と技術の両方をはかる科目といえるでしょう。
法人税法の過去の問題例(※1)を見ると、理論問題で出される問題は「法人税法上の収益計上時期及び収益の額について」で3問、「法人企業の税務上の処理について」で3問です。先に挙げた「法人税法上の収益計上時期及び収益の額について」は、記載されている資料に基づいて解答します。
計算問題の過去の例を見ると、毎期継続して青色申告を提出しているある法人の「法人税の課税関係」について出題されています。問題の内容は、それぞれの資料を参照しながら「当期における税務上調整すべき金額とその計算過程」や「税務上調整すべき金額を利益積立金額の計算に関する明細書に記載する」などです。
利益積立金額の計算に関する明細書については、税務上調整すべき金額がない場合、その理由と計算過程の記入を求められています。この他、法人税法のより詳しい試験問題については、国税庁のオフィシャルサイトにて確認をしましょう。
※1 令和3年度(第71回)税理士試験試験問題、答案用紙及び正誤表
法人税法の合計の合格基準と難易度とは
法人税法の合格基準は、100点満点中60点以上です。先述の通り、法人税法は税理士試験の中でも出題範囲が広く、合格する難易度が高くなっています。法人税法は、対を成す所得税法よりも受験生が多いので、合格するには他の受験生よりレベルの高い理論答案を作成する必要があります。計算の総合問題では、正確な計算とスピーディな集計で所得金額を算出することが大切です。個別問題については、計算過程も正確に記載し、多くの正解を導き出すことが求められます。
法人税法の勉強方法とは
法人税法の勉強方法は、理論問題と計算問題で効果的な勉強方法は異なります。
理論問題は、参考書やテキストで各論点の概要の全体像をつかむことが重要です。ピンポイントに学習をせず、幅広く理解することを心がける、「条文がある⇒この問題にこの条文を当てはめてみる⇒結論はこうなる」という過程を重視する取り組みが大切です。また、理論問題は多くの条文を暗記する必要があります。暗記をする学習法はさまざまですが、テキストを音読したり、実際に手で書き記したり、インプットとアウトプットを繰り返すことで記憶が定着しやすくなります。
計算問題については、参考書・テキストの例題を一度解き、計算の始め方と問題の考え方をつかむことが大事です。計算過程を考えなくても、自然と頭に出てくるくらい基本問題をこなしましょう。過去問・問題集については、問題を一度解いて内容の理解を深め、問題の採点後は解答の解説を熟読して理解する必要があります。本試験レベルの問題に取り組むときは、時間を計測して解き、採点後は問題の内容や問題の解き方を復習しましょう。さらに法人税法は、毎年といっていいほど税制改正や法改正があります。これらの改正は試験問題にも反映されるため、最新情報にも常に気を配ることが重要です。
勉強に適した環境をしっかり整えよう
税理士試験は法人税法だけでなく、さまざまな科目を勉強する必要があるので、試験に合格するレベルになるまで膨大な時間がかかります。学生のように勉強時間を確保しやすい環境であれば別ですが、仕事をしながら税理士試験対策の勉強を続けるのは大変です。
働きながら勉強している方は、「仕事量が多すぎて、勉強時間が取りづらい」といった不満を持つ方も多いでしょう。可能なかぎりの短期間で税理士試験に合格するためには、転職も視野に入れた環境の整備が必要です。
法人税法は簿記論・財務諸表論と関連付けて勉強すべき?
税理士試験のように複数の科目で構成されている試験は、効率良く学習をこなすのに、近い分野に関連付けて取り組むことが重要です。
例えば、法人税法は簿記論・財務諸表論・所得税法・消費税法・事業税との関連性が深いため、これらと関連付けていくことで理解度の向上が見込めます。特に簿記論・財務諸表論はどちらも試験の必須科目のため、法人税法と関連付けて勉強すると効果的です。
法人税法と所得税法どちらを選択すべき?
必須選択科目である以上、税理士を目指すうえで、法人税法と所得税法のいずれかを選ぶことが不可欠です。昨今は、所得税法よりも法人税法を選択する受験者が増えています。この理由は、法人のクライアントが多い税理士の仕事上、法人の税務を早く学びたいという受験生のニーズも影響しているでしょう。
しかし、法人税法は難易度が高く、所得税法よりも合格率が低い傾向にあります。法人税法か所得税法、どちらを選択すべきかについては、合格のしやすさよりも今後のキャリア形成を踏まえて決めることが大切です。
例えば、就職・転職先が求める知識や、自分が進みたい理想のキャリアから逆算して選ぶのも1つの選択肢といえます。一例を挙げると、相続税に強みを持つ事務所に就職・転職する場合、まず相続税法の知識は必須です。この他、資産管理法人の税務申告を行う可能性があるので消費税法の知識も役立つでしょう。さらに、相続税の納付が必要な家庭の確定申告に携わることもあるので所得税法が必要です。
また、税務コンサルティングをメインに扱う事務所の場合、大企業のクライアント相手の仕事であれば法人税法の知識が重宝します。そこに、オーナーの相続対策として相続税法、企業の会計で重要な消費税法などが必要になります。もちろん、税理士として働き始めてからキャリアチェンジもできますが、できればまわり道はしたくないものです。そういった意味でも、「自分の進みたい理想の形はどのようなものか」を考えて選ぶことが大切です。
税理士試験に合格するための近道として、会計事務所や税理士事務所で働きながら勉強する方法があります。この方法の利点は、事務所で実務経験を積みながら勉強ができることです。勉強した内容もより理解しやすくなりますし、試験合格後のイメージもより具体的に描けます。
まとめ
税理士試験は国家試験の中でもトップクラスの難易度です。最高クラスの難易度ゆえに、途中であきらめる方も多いのが現状です。しかし、だからこそ価値があるともいえます。税理士は専門性が高く、税務を扱う仕事の需要もなくなることはありません。企業で働くもよし、独立開業するもよし、フリーランスで働くもよし、とさまざまな道が描けます。
また、税理士試験の受験科目は、合格したこと自体が評価されます。その典型例が簿記論と財務諸表論です。この2つの科目に合格した事実は、会計・財務の専門知識があると認められるため、就職・転職に有利になります。更に、税理士試験の最大の壁といわれる法人税法に合格すれば、より企業から評価されるでしょう。
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投稿者情報
- 税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。
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