税理士試験の合格に必要な勉強時間とは?戦略的な計画の立て方を解説
2023/11/01
税理士は難関国家資格といわれているとおり、合格することは決して簡単ではありません。
試験内容はかなりのボリュームがあり高い競争率となっているため、5科目合格するために数年かけてチャレンジすることが通常パターンとなります。
最短期間で合格するためには試験科目ごとの特性や難易度、必要な勉強時間などをきちんと把握し、自分に適した計画を立ててからスタートすることが重要です。
そこで本記事ではこれから税理士試験にチャレンジを検討している人に向けて、試験の概要や科目ごとの必要な勉強時間や難易度をご紹介し、具体的な試験勉強計画の立て方などについて解説します。
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コンテンツ目次
税理士試験の概要
税理士試験は年に1回、現在は毎年8月に全国各地で行われています。全11科目、それぞれ2時間の試験で60%が合格基準とされています。このうち5科目に合格すれば税理士になるための最難関をクリアしたことになります。
税理士登録するためには、実務試験が必要だったりと5科目合格したからといってすぐ税理士になれるわけではありませんので注意が必要です。
科目合格制度とは?
税理士試験では「科目合格制度」が採用されています。これは一回の受験で5科目すべてに合格する必要はなく、1科目ずつ分けて受験することができる制度です。合格した科目についてはその後一生にわたって有効となります。
どんな試験科目がある?
税理士試験は11科目ありますが、必須or選択といった一定の条件があります。その条件下で好きな科目を選んで受験し、5科目の合格を目指します。
必須科目
必須科目の2科目は必ず受験しなければなりません。いずれも会計の基本的な知識を学ぶ科目のため必須となっています。2科目は計算と理論で学習範囲が重なるところが多く、セットで勉強すると効率的です。
- 簿記論
- 財務諸表論
選択必須科目
選択必須科目は1科目以上は必ず受験しなければなりません。税理士として働くならこの2科目の知識がもっとも使用頻度が高くなるでしょう。いずれも学習ボリュームが多く難度も高いためどちらか一つを選ぶ受験生が大半ですが、将来を見越して両方チャレンジする人もいるようです。
- 法人税法
- 所得税法
選択科目
選択科目からは2つ好きな科目を選ぶことができます。ただし、消費税法と酒税法、住民税と事業税はどちらか1科目しか選択できません。
- 相続税法
- 消費税法
- 酒税法
- 国税徴収法
- 住民税
- 事業税
- 固定資産税
各科目の合格率
ここでは近年の税理士試験の合格率を一覧にしました。ご覧のとおりどの科目でも十数パーセントと低い数値が並んでいて、難関試験であることがわかります。
科目名 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
簿記論 | 22.6% | 16.5% | 23.0% |
財務諸表論 | 19.0% | 23.9% | 14.8% |
法人税法 | 12.0% | 12.6% | 14.1% |
所得税法 | 16.1% | 12.8% | 12.3% |
相続税法 | 10.6% | 12.8% | 14.2% |
消費税法 | 12.5% | 11.9% | 11.4% |
酒税法 | 13.9% | 12.6% | 13.2% |
国税徴収法 | 12.2% | 13.7% | 13.8% |
住民税 | 18.1% | 12.7% | 17.2% |
事業税 | 13.1% | 12.6% | 14.1% |
固定資産税 | 13.5% | 13.8% | 18.4% |
この後にご紹介しますが、各科目に必要な勉強時間はバラバラです。学習ボリュームが少ない科目(例えば国税徴収法や住民税)は試験範囲を網羅できるまでの負担が少ないため簡単と思われがちですが、それは他の受験生も同じ条件です。従って難易度という意味ではどの科目も大差はありません。
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税理士試験に合格するための勉強時間・期間はどのくらいか?
一般的に税理士試験はトータル3000時間ほどの勉強が必要とされています。勉強期間は2〜5年と長丁場になるため、何年後に合格するのか目標を決めたうえで自分が確保できる時間などを考慮して試験勉強のスケジュールを立てる必要があります。
科目ごとの勉強時間
ここでは科目ごとにどのくらいの勉強時間が必要なのかについてまとめました。すでに簿記検定の資格を取得している人や経理の実務経験を積んでいる人であればもっと短く済むでしょう。個人差があるため、こちらはあくまでも目安として捉えてください。
【必須科目】
簿記論:500時間
財務諸表論:500時間
※この2科目は学習範囲が被るためセットで勉強すると効率的です
【選択必須科目】
法人税法:600時間
所得税法:600時間
【選択科目】
相続税法:500時間
消費税法:300時間
酒税法 :200時間
国税徴収法:150時間
住民税 :200時間
事業税 :250時間
固定資産税:250時間
合格までの期間
5科目に合格して初めて税理士試験に合格したことになります。5科目すべて突破するまでの期間については、比較的時間に余裕のある学生や受験勉強に専念できる人であれば2〜3年、仕事と勉強を両立する社会人であれば3〜5年で合格を目指すのが一般的です。
税理士試験合格のための計画の立て方
税理士試験は長時間を勉強に費やすことになります。勉強が思うように進まず5年〜10年とかかってしまう人もいるため、最短で合格できるようスタート前にしっかりと計画を立てることが重要です。ここでは一般的なモデルケースを見ていきます。
税理士試験合格までのモデルスケジュール
税理士試験では仮に勉強に専念できる環境であったとしても1年で5科目合格を目指すのは非現実的です。従って1年に1〜3科目ずつ受験して着実に合格を積み上げていくのがセオリーといえます。ここでは税理士試験に合格するためのモデルスケジュールをご紹介します。
1年目
まずは簿記論・財務諸表論からスタートします。この2科目は学習範囲が重なるところも多いため一緒に勉強すると効率的です。会計の基礎を学ぶ科目のため、ここで知識の土台を作ってから次の税法科目を学ぶとよいでしょう。
この2科目は必須科目でかつボリュームが大きいこともあって合格できずに後に残してしまうと時間・精神的に大きな負担となるため注意が必要です。従ってできれば最初の1年目で2科目セットで合格して一気に済ませてしまうのが理想です。
もし試験勉強に専念できるのであれば、さらにあと1科目チャレンジしてもいいでしょう。
2年目
2年目で選択必須科目(法人税法・所得税法)どちらかの取得を目指します。この2科目はボリュームが大きくどちらかは必ず合格しないといけないため、必須科目と同じように後に残すのは得策ではありません。
もし試験勉強に専念できるのであれば、あと1科目チャレンジしてもいいでしょう。ここまでで、専念できる人であれば最短2年で合格する人もいます。
3年目
3年目は選択科目から1〜2科目の取得を目指します。専念できる人であれば2科目まとめて勉強したいところですが、仕事と両立する人は自分が確保できる勉強時間を見て1科目か2科目とするか決めましょう。ここまで来たら、決して無理をしないで着実に合格を積み重ねることが大切です。
4〜5年目
勉強に専念できる人はできれば4〜5年目までかからないようにしたいところですが、
現実にはそうならないこともあるでしょう。仕事と両立する人はどうしても4〜5年はかかってしまうことを覚悟してください。いずれの人も4〜5年目に残っているのは選択科目のみとなっているのが理想です。
まとめ
モデルスケジュールを下表にまとめました。税理士試験は専念できる人なら2-3年くらい、仕事と両立する人で4-5年くらいで合格できれば順調といえます。
年数 | 勉強に専念できる人 | 仕事と両立する人 |
---|---|---|
1年目 | 簿記論&財務諸表論 +1科目 | 簿記論&財務諸表論 |
2年目 | 法人税or所得税 +1科目 | 法人税or所得税 |
3年目 | 選択科目 | 選択科目 |
4年目 | - | 簿選択科目 |
5年目 | - | 選択科目 |
しかし試験は難関なため理想通りに進まないこともあるでしょう。そのため、うまくいかないケースも見据えて、毎年の結果を踏まえて軌道修正することも必要です。また、なかなか合格できずに試験勉強が長期間にわたって泥沼化する人もいるため、「最終的にいつまで税理士試験にチャレンジするか」といったことも考えておくことが大切です。
税理士試験受けるなら勉強に専念?働きながら勉強?
学生や無職でも問題ない人であれば勉強にかなり専念できるかもしれません。いっぽう社会人としてすでに仕事をしている場合は専念するのが難しいため働きながら勉強となります。社会人で税理士試験を検討している人は、仕事を辞めて退路を断ってチャレンジするか迷ってる人がいるかもしれません。
しかし、実は必ずしも「専念or両立」の二者択一に縛られなくてOKです。下記はあくまでも例となりますが、税理士試験は科目合格制度のメリットがあるので自由にライフプランに合わせたチャレンジができます。ぜひ自身の置かれた状況に応じた計画を立ててみてください。
最初の1-2年は勉強に専念、その後は働きながら目指す
最初の1-2年は専念し、主要科目を取得した後に働きながら残り科目の取得を目指すパターンです。一般企業の経理や税理士事務所では科目合格者を採用しているところもたくさんあります。とくに簿記・財務諸表論・法人税・所得税・消費税法といった実務に直結する科目を取得していると採用チャンスが一気に広がります。受験勉強に専念して主要科目を先に済ませてあとは働きながら目指せば勉強の負担も軽減されますし、収入を得ながら実務経験も積めるメリットがあります。
働きながら勉強、最後の1-2年だけ専念する
諸事情によりすぐに仕事を辞められない人もいると思います。そのような場合は、まずは働きながら数科目の合格を積み重ね、最後の1-2年で受験勉強に専念できるように準備をします。ここでいう準備とは、例えば勉強に専念できるように貯蓄をして備えたり、退職に向けて仕事を調整するなどです。そして退職後の1-2年で一気に残っている科目を済ませるのです。
まとめ
ここまでで、税理士試験に合格するためには膨大な勉強時間と計画が必要になることはご理解いただけたかと思います。やはり効率的に合格を目指すのであれば、まずはいつ合格するのか目標を決め、計画を立てることが重要です。勉強に専念するのか、仕事と両立するのか、選択する科目などによってスケジュールに大きく影響します。とくに仕事と両立する人は、仕事と試験勉強でバランスを保つことが難しいかもしれません。
従って、科目ごとの難易度や必要とする勉強時間を把握することは合格への重要なカギとなると考えていいでしょう。税理士試験は平均でも4、5年程度かかる難関試験ですから、モチベーションを維持することが何よりも大切なことは間違いありません。計画的に勉強を進め、モチベーションを維持しながら合格を目指しましょう。
晴れて税理士になることができれば、仕事の幅も広がるだけではなく、安定した仕事が手に入る可能性も高まります。将来独立開業というキャリアプランを想定しているのであれば大きく年収を上げることも可能な資格ですので、夢は広がります。
また、税理士の年収事情について、更に詳しく知りたい場合は「税理士の年収の現実とは?20代・30代・40代など年齢別や働き方別に解説」の記事をご覧ください。
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投稿者情報
- 現役の税理士として10年以上、会計事務所に勤務しているかたわら、会計・税務・事業承継・転職活動などの記事を得意として執筆活動を5年以上しています。実体験をもとにしたリアルな記事を執筆することで、皆さんに親近感をもって読んでいただけるように心がけています。
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