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税理士試験、相続税法について

税理士試験科目の相続税法とは?試験内容と勉強方法を解説

2023/11/01

高齢化が進む昨今、税理士の業務でも相続に関する専門知識が必要になるケースが増えてきています。こうした背景から、税理士試験で相続税法を選択するという方もいるでしょう。相続税法とは、相続税と贈与税に関することをまとめた法律のことです。1つの税法の中に2つの税目が定められている点が、他の税法と異なります。これが、1税法2税目と呼ばれる理由です。今回は、相続税法の特徴や試験内容、合格に向けての勉強方法について紹介します。相続税法の難度も把握できる内容なので、税理士試験で相続税法を選択する方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続税法の科目とは

相続税法とは、相続税と贈与税の2税目を定めた法律です。相続により、財産を取得した際に課せられる税を相続税といいます。対して、贈与税は、個人から財産を贈与された際に課せられる税です。生前贈与も贈与税にあたります。相続税法は、所得税、法人税と並ぶ国税三法と呼ばれる法律の1つで、税理士試験に挑むうえでも非常に大切です。

相続税法では、納税義務者を定めるとともに、課税財産の範囲や税額の計算方法、申告・納付・還付に関する手続きなどを規定しています。また、民法の相続規定といった、相続に関連する法律についても学ばなくてはなりません。一方で、税理士試験で出題される問題内容は、相続税法や租税特別措置法が主となります。そのため、学習範囲が特別広い科目というわけではありません。

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相続税法の科目の特徴とは

税理士の仕事において、所得税法や法人税法は欠かせない科目といえます。一方で、相続税法は、絶対に必要な科目とまではいえないでしょう。しかし、高齢化が進む中で、相続や贈与に対する関心が高まっています。そのため、税理士事務所でも、相続に関する相談件数が増加傾向にあるのが特徴です。その影響もあってか、相続税法は税理士試験の選択科目の中でも、受験者数が多い科目となっています。続いては、税理士試験における相続税法の特徴について紹介します。

相続税法は選択科目の1つ

税理士の資格試験では、11科目中5科目に合格する必要があります。必修科目である簿記論と財務評論は必ず合格しなくてはなりません。選択必修科目として所得税法と法人税法がありますが、これらに関してはどちらかの合格が必須とされています。相続税法は、残り7科目の選択科目における1つに該当し、この相続税法を含む選択科目は以下の通りです。

  • 相続税法
  • 消費税法または酒税法(どちらか1科目のみ)
  • 国税徴収法
  • 住民税または事業税(とちらか1科目のみ)
  • 固定資産税法

選択科目では、これらのうち3科目に合格する必要があります。

相続税法の出題形式

相続税法は、理論問題と計算問題に分けられています。理論問題は、相続税法や租税特別措置法といった規定を把握しているかどうかが問われる、総合的な内容になっているのが特徴です。記述式のため、幅広い知識を持っておく必要があります。

一方で、計算問題に関しては、相続事例に基づいて相続税額を計算する問題です。どちらの問題も他の科目と比較すると、分量が多いといわれています。相続税法の試験時間は2時間と定められているため、時間との勝負になるでしょう。(※1)

※1 国税庁「令和3年度試験日程・試験科目について」

過去の出題例について

相続税法で、令和3年度(第71回)税理士試験問題に出題された問題は、以下のような内容でした。(※2)

〇第1問(理論問題:50点満点)
1:一定期間アメリカに住所を有していた人が、日本に住所を移した際の贈与に関する問題。贈与により財産(住宅)を取得した場合の、相続税法における住所の意義について説明することが求められました。

2:自ら理事長を務める法人に対して、事業資金として自ら1億2,000万円の贈与を行った件について、贈与税の課税関係を関連する条文を踏まえて説明する問題が出題されました。

〇第2問(計算問題:50点満点)
・相続税における課税価格の計算

※2 国税庁「令和3年度(第71回)税理士試験問題」

税理士になるためには実務経験も必要

相続税法の学習をはじめるまえに、注意点として税理士になるには実務経験も必要という点を留意しておきましょう。たとえ試験に合格をしても、すぐに税理士として働けるわけではなく、必ず会計事務所や企業の経理部門などで実務経験が必要です。

相続税法における合格基準と難度について

相続税法に限らず、税理士試験の合格基準は、どの科目でも100点満点中60点と定められています。相続税法の合格率の推移は、以下の通りです。

  • 2017年:12.1%
  • 2018年:11.8%
  • 2019年:11.7%
  • 2020年:10.6%

科目の難易度こそ高いものの、近年では他の科目も同じような合格率になっています。相続税法は標準的な水準を維持しているといえるでしょう。裏を返せば、合格率の振れ幅が小さいともいえます。以下の項からは、相続税法の勉強法や効率の良い勉強法について解説をします。

相続税法の勉強法とは

相続税法で求められるのは、専門的な内容を把握することと、素早く正確に計算することです。効率よく学習するためには、基礎固めが大切になります。おすすめの勉強法の1つが、個別の論点ごとに分けて学習し、理解を深めていく方法です。理論・計算問題にかかわらず、相続人の関係や課税・非課税について、また税額計算や納税方法など、総合的に対応できるスキルを身につけていきましょう。

効率の良い勉強法について

論理問題で大切なのは、参考書やテキストを活用して、各論点の概要における全体像を把握することです。全体像の把握は、計算問題を解くうえでも欠かせません。また、相続税法は個々の規定が難しく、段階を踏みレベルを上げていくことが大切です。理論問題がある程度理解できるようになった後に、計算問題に取り組むようにしましょう。

計算問題では、参考書やテキストの例題を一度解いてみて、計算の仕方や問題の考え方をつかむことが大切になります。ここで意識すべき点が、一度解いた問題を放置しないということです。丁寧に復習することで、似たような問題が出た際に対応できるようになります。相続税額を求める問題が出題されることが多いため、財産評価に関する内容は押さえておく必要があるといえるのです。

過去問を解いて内容の理解を深める

税理士試験の特徴として、過去問からの出題が少ないといった点が挙げられます。毎年試験内容が大きく変更されるということです。一方で、相続税法の計算問題は例外だといえます。過去問に類似した問題が多く出題される傾向にあります。そのため、過去問を解いて理解を深めることが大切です。

また、過去問を解いて採点した後に、解説をしっかり読むようにしてください。特に相続税法は規定が難解なのが特徴です。項目ごとの理解ができていないと問題を解く際に苦労する可能性が高くなります。

本試験レベルの問題を解く

理解が深まり、理論・計算問題ともに解けるようになった後は、本試験レベルの問題に挑戦していきましょう。ここで大切なことが、時間を計って解くということです。実際の試験時間は2時間しかありません。そのため、正確さに加えて解くスピードも大切になります。特に計算問題は、確実に点数を取っておきたい部分です。練習問題を解いた後は、採点を行い、内容や解き方を復習するようにしましょう。

選択科目で相続税法は選ぶべきか

相続税法は、他の科目より難解な点が多いため、費やす勉強時間も多くなります。それだけの労力をかけてまで、相続税法を選ぶ必要があるのでしょうか?続いては、税理士試験の選択科目で相続税法を選ぶべきかどうかについて紹介します。

相続税法と他の科目の勉強時間

一般的に、相続税法の合格を目指すためには、500時間を超える勉強時間が必要といわれています。実務経験を積むために働きながら勉強するとなると、確保できる勉強時間は1日3時間程度となるでしょう。この場合、500時間達成するまでに半年ほどかかる計算です。他の科目における目安の勉強時間に関しては、以下の通りです。

  • 簿記論:500時間
  • 財務諸表論:500時間
  • 所得税法:600時間
  • 法人税法:600時間
  • 相続税法:500時間
  • 消費税法:300時間
  • 酒税法:150時間
  • 国税徴収法:200時間

上記からもわかるように、相続税法は選択科目の中でも長時間の勉強が必要となる科目です。必修科目と変わらない時間数であることからも、難しい科目ということがわかるでしょう。一方、相続税法は他の科目と比較して、試験範囲が特別広いわけではありません。相続税法が難しい理由は、相続税自体の内容が難解であるからです。加えて、贈与税についても学ぶ必要があります。理論問題で苦戦する方も少なくありません。

相続税法を選択したほうが良いケース

国税庁によると、相続件数や相続税の課税価格は増加傾向にあります。(※3)このため、相続税法に長けた税理士は、重宝される存在だといえます。また、税理士とひと括りにしても提供しているサービス内容はさまざまです。所得税や法人税といった事業所向けの申告サポートを行う税理士もいれば、個人に対する税務相談を受け付けている税理士もいます。

※3 平成29年分の相続税の申告状況について|国税庁

相続税の相談は、個人から持ちかけられることが多くなっています。こうした個人向けの業務をメインとして行う税理士を目指している方は、相続税法に合格しておいたほうが有利だといえます。また相続税法に関する仕事の単価が高いうえに、将来性もあるので、税理士として独立を目指している方も、相続税法に合格しておいたほうが良いといえるでしょう。

今後のキャリア形成を基準に決めることが大切

勉強時間の多さや難度を考えると、相続税法以外の選択科目を選んだほうが、「税理士に受かりやすいのでは?」と、考える受験生もいるのではないでしょうか。しかし、合格のしやすさだけで科目を選んでしまうと、将来後悔する可能性があります。今後ますます高齢化が進むと、相続税法を活用するケースが増えていきます。自分のキャリア形成をイメージしたときに、相続税法を使う可能性がある場合には、相続税法を受験しておくことをおすすめします。

FP(ファイナンシャルプランナー)技能士は相続税法の勉強に役立つのか?

最後に、FP技能士と相続税法の関係性について解説しておきましょう。
個人のライフプランに寄り添って、資産管理や運用方法などを提案したりサポートしたりする専門家をFP(ファイナンシャルプランナー)といいます。税理士と同じくお金に関するプロフェッショナルではありますが、税務に関するサポートはできません。

税の相談を受けるためには、税理士の資格が必要です。また、税金の申告作業や税務署へ提出する書類の作成も税理士が行う業務であり、FPは行うことができません。つまり、税務に関する業務は税理士の独占業務ということです。

また、試験内容もFPと税理士では大きく異なります。FP試験は、6つの科目で構成されており、学科試験と実技試験の2回です。科目の中に、相続と事業継承という内容もあります。回答はマークシート方式です。

一方で、相続税法の試験では、記述式が採用されているのが特徴です。そのため、より深い知識が必要となります。また、そもそもFPは個別の具体的な税額計算はできません。資産設計の大まかなイメージを作るのがFPの仕事です。そのため、FP技能士の試験勉強が税理士試験における相続税法に役立つ可能性は低いといえるでしょう。

まとめ

税理士試験に合格するためには、膨大な勉強時間を要します。特に、相続税法は、他の選択科目に比べて難しいため、各項目をしっかりと把握しておくことが大切です。高齢化社会が進む昨今において、相続税法に長けた税理士は欠かせない存在といえます。そのため、なんとか合格を目指したいと考える方もいるはずです。

また、税理士になるためには、実務経験も必要です。そのため、働きながら勉強をしている方も多くいます。こうした受験生の中には、「仕事量が多すぎて、勉強時間が取りづらい」「勉強時間が膨大すぎる」といった悩みを抱えている方もいます。仕事と勉強の両立に関する不満を抱えている方は、会計求人プラスを利用してみてはいかがでしょうか。

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税理士や公認会計士、会計業界に関する記事を専門に扱うライター。会計業界での執筆歴は3年。自身でも業界についての勉強を進めながら執筆しているため、初心者の方が良く疑問に思う点についてもわかりやすくお伝えすることができます。特に業界未経験の方に向けた記事を得意としています。

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